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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
十一章 明かされて行く謎
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魔の島へ

 俺と師匠ライバード、そしてギースは、魔の島に向かう船の上に居た。

 ダナヒの街を出てから二日。時刻的には現在は夜。

 乗っている船はブルーファルコン号と言う、速度を重視した小型船で、直に見えてくると言う魔の島に備えて、俺達は全員で甲板に出ている。


 なぜ、俺達がここに居て、あまつさえ魔の島に上陸しようとしているのか。

 最初から話すと長くなるので、以下に手短に記そうと思う。


 最大にして一番の理由は、俺がPさんに依頼を受けた事。

 そう、アンティミノスのしもべとやらを倒して欲しいと言う例のアレだ。

 しかし、俺には居場所が分からず、デオスに捜索を依頼していたのだが、先の戦い――モルト島沖海戦で、一人の半魔を救った事により、居場所が何となく分かったのである。


 その半魔曰く。なぜ自分がここに居るのかが全く分からない。最後の記憶では山で採った果物を街に売りに言っていたはずだ。

 そこで確か、近くの林に「卵のようなモノ」が落ちていたと言う噂を聞いたが、そこからの記憶がどういう訳か、プッツリと途絶えてしまっている。と。


 卵のようなモノ。つまりそれは、アンティミノスのしもべの第一形態かもしれず、以前のような事にしない為に、俺は調査を願い出た。

 ありがたい事に許可は出たが、ダナヒとカレルは来れないらしい。

 ヨゼル王国の動きが不穏だと言うので、まぁ、仕方が無いとは思う。

 全員で出かけて倒したは良いが、帰ってきたら占領されていた。なんて、なんだかかなり間抜けな図だし、そこには納得をするしかないだろう。

 それに何より、Pさんに頼まれたのは誰でも無いこの俺で、感謝こそすれ恨みはせずに、とりあえず師匠に話して見た訳だ。


「ふむ。まぁ、ワシは構わんよ。

 ギース君とニースちゃんに聞いてみん事には、現段階での承知は出来かねるがね。

 最近はほれ、戦だの後始末だので、あまり勉強をしとらんかったで、しばらくはちゃんと教えてくれと、昨日言われたばかりじゃったんでな」


 師匠はまずはそう言って、俺達と共に島へと飛んだ。そして、迎えたギースとニースに俺が説明をした訳である。


「だったらオレもついて行く! もう手伝える所もねーし、正直クッッソ暇なんだよ!」


 結果としてはギースはそう言い、「それを飲まないなら行かせない」と続けた。

 連れて行かない理由を上げるなら、もしも「当たり」なら危険だと言う事。

 そうでなければ全然良いのだが、それ故に俺は少し迷った。


「おいおい! 何で黙ってんだよ! 最近全然遊んでねーだろ! 連れてけよヒジリ!

 暇なんだよぉおう! 思い出をもっとオレにくれよ!」


 だが、悶絶するような体勢で言うギースの更なる懇願に負け、「危ない事をしないなら」と言う条件で、同行の許可を出したのである。


「良いなぁ……兄さんばっかり……」

「仕方ねーだろ。お前は女なんだし、これは男だけの冒険なんだから」


 そんな事を妹に言い、「女も居ますケド……」とユートに言われる。

 だが、それはギース達には聞こえず、ユートが「きぃぃぃ!」とほぞを噛んだ。


「まぁ、少なからず危険な場所じゃ。何があるかは分からんからの。

 じゃから今回はニースちゃんは、大人しく留守番をしておいておくれ。

 帰ってきたらヒジリ君が、きっと沢山遊んでくれるさ」

「いぃ!?」


 なんでそうなる!? そう思いつつ、勝手に約束した師匠を睨む。

 嫌では無いが、ニースは十才で、そんな子供と遊ぶ術を俺は全く知らないのである。


「本当ですか!? だったら大人しく待ってます! 一緒に水切やりましょうね!」


 そんな事で良いの!? まずはそう思う。しかしそれから安心をして、「あ、ああ、良いよ」と言葉を返した。

 俺はてっきりママゴトだとか、縄跳びだとかを想像していたが、娯楽の無いこの島ではそんな遊びしか出来ないのかもしれない。

 そういう意味ではやはり本屋や、雑貨屋等が必要かもな……

 その時の俺はそんな事を思いながら、嬉しそうにはにかむニースを見ていた。


 そして現在。

 ようやく見えて来た魔の島に向かって、夜の海を船は駆けている。

 ここに来るまで。いや、ここに来ても、この船と比べて前時代的な、所謂ボートのような船がいくつか見えたが、どういう訳か彼らは俺達に攻撃の意思を示さなかった。

 暗闇の為に見えなかったのか。はたまたただの漁船であったのか。

 思う所は様々あったが、それらを搔い潜って更に前進し、俺達はついに魔の島の一部に乗り上げる事に成功する。


 港に直接……なんて事は、馬鹿では無いので当然に避け、人里離れた林の近くの原始的な浜辺に俺達は居た。

 上陸者は俺とユートに師匠、それについて来たギースで四人。

 残りの水夫達は周囲を探索し、船を隠せる場所を見つけるらしい。

 一応、期限は五日と定め、戻らなかった場合には帰るように言ってある。

 だから、何かがあっても無くても、五日以内にはこの場所に、戻って来なければならないと言う事だ。

 最悪は船を発見されて、戻る前に沈められてしまっている事だが、探索に行く前から心配しても仕方が無いと言える事だった。


「さて、これからどうするかじゃが、皆でとりあえず牛乳でも飲もうか?」

「キタァー! 毎日一本!」

「「けんこ…」」

「ちょっ! やめて下さい! 誰も居ないとも限らないでしょ!」


 こんな所でも二人はこれだ。慌てて止めると黙ったが、何だか少し不満気である。

「けんこ、って何だ?」と、ギースが聞くのは、ユートが見えていない為だが、師匠はそれを丁寧に「掛け声的なやつ」である事を説明していた。


「ふーん……なるほどなー……」


 だから何? と、言わんばかりの冷めた顔だ。もっと言えば「それには意味が?」と聞かんばかりの顔とも言える。

 流石に聞くまでには至らなかったが、ギースの年上に対する態度は、見て居てたまに恐ろしい。

 そこでまぁ、合わせてしまうから、俺は余計な苦労をする訳で、そう言う意味ではギースのように、バッサリと切る事も必要なのかもしれない。


「ま、まぁ、兎に角移動をしましょう。ここに居ても何にもなりませんから」


 下手をすれば誰かに見つかって怪しまれるだけの結果に終わる。

 そう思った俺が皆に提案し、それぞれから無言の頷きを貰う。


「じゃあボクは上から探すねー! 何かあったらおしえま~」

「頼む!」


 それからユートが上に飛び、見送った俺達がやがて歩き出す。

 方向はユートが勝手に選んだ、浜辺の右手の方に決定し、頭上を飛ぶユートを追うようにして海岸線をしばらく進んだ。

 そして、歩く事、約二十分。


「前方に灯りが見えますぜ提督!」


 と、野卑た口調でユートが叫ぶ。その後にはすぐに下りて来て、「あっちあっち!」と、方向を指差した。

 何の事は無い進行方向だが、とりあえずの形で「そうか」と返す。


「腕が鳴るぜ」


 その後に、指を「パキポキ」と鳴らすギースに「なんでやる気!?」とすぐに突っ込んだ。


「え? あれ? ブチのめすんだろ? 会った奴を片っ端から」

「どこでそうなった……」


 ギースはちょっとダナヒに近い。人の話を聞かないと言う点で。

 そう思った俺はため息を吐いてから、「それはどうしようも無い時にだけな」と、肩に手を置いて窘めるのである。


「どうやら村と言う程でも無い、集落と呼んだ方が近い場所のようじゃな。

 どんな物が住んでおるか分からん以上、おいそれと近付くのはマズイやもしれん」


 流石は師匠。冷静である。突っ込んでばかりでは疲れてしまうので、その存在には素直に感謝する。


「時間が時間じゃで、牛乳の配達員に扮すれば、怪しまれる事無く近づけるのではないかな?

 何、牛乳自体はここにある。そこは心配には及ばんよ」

「あ、いや……どうですかね……怪しまれるんじゃないですかね……」


 だが、直後にそんな事を言われた俺は、結局の所は疲れてしまい、懐から牛乳を取り出した師匠に曖昧な笑顔を見せるのだった。

 兎にも角にもこれからどうするか。

 少しの間を考えた俺達は、ユートに偵察を頼む事を思い付き、調査が終わって戻って来るまで、身を潜めて待つ事に決まったのである。



そもそも牛乳の心配なんて…

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