第ホニャララ回 ウニャララララを作ろう会議
狂ってません。内容的に、タイトルも曖昧にせざるを得なく…
「さて、それでは今回も唐突に……」
「もう良いよ。メンドクセーよ。これからは要点だけ言う事にしようぜ」
多分、今回で四回目だったか。新しい国を作ろう会議は、ダナヒの横着で未然に防がれ、防がれたデオスが「はぁ」と答えて、俺達に書類を回し始めた。
時刻は昼で、タイミングとしては、今回の場合は昼食直後。
いつもであればダナヒが「イエー……」と、心の篭らない拍手をするのだが、流石に四回目の会議となると、それをするのも面倒らしい。
まさかの本音でデオスを困らせ、俺達にいきなり呆れられる。
「無駄を省くのも国王の務めってな。おっ、収入が増えてんじゃねーか?
何だこりゃ? ポルポンポ?」
無駄と言うなら無駄ではあるが、流れを作ったのも国王本人。
そこには更に呆れた上で、ダナヒが見ている書類を探した。
ダナヒが発した「ポルポンポ」と言う単語に、どこかで聞き覚えがあった気がしたのだ。
渡された書類は全部で三枚で、目的の書類は一番下で見つかる。
それには収入のグラフが一つ。内訳が左下に記されており、収入の全体の六%が「ポルポンポの実の売却により」となっていた。
「(どこかで聞いた気がするんだけどなぁ……)」
しかし、ここでも思い出せず、期待をせずにユートに聞いてみる。
すると、ユートは「ナエミじゃん」と言ってきて、俺を更に混乱させた。
「なんかほら、お酒作ったよね? あの時使ったのがポルポンポの実でしょ。
火薬の代わりになるんだよねー」
「ああー!」
ようやく思い出した。確かにそうだ。だが、だからどうしたと聞かれると、「いや別に……」としか言えない所だ。
「だからどうしたの?」
「いや、別に……」
そして、実際にカレルに聞かれて、俺はそのまま返すのである。
わざわざ「どこかで聞いた気が~」なんて言えば、話がどんどん逸れて行くだけで、デオスも色々とやりにくいだろう。
いつもにこにこ笑っているが、「ええ加減にせえやあ!」とキレないとも限らない。
実際、ダナヒに「メンドクセー」と言われた時、眉毛が少しだけピクリとしていたし。
そんな事を思って適当に流すと、カレルは「フーン……」とまずは一言。
何かと探ってはいるようだったが、その後の追及はして来なかった。
「で、何だこりゃあ? 避妊薬か何かか?」
どうしてそうなる。カレルも思ったのか、半開きの口でダナヒを眺める。
それにはデオスが「いえ」と答えて、説明と、それを育てるに至った事情をついでに話し出した。
「発火剤の代わりに使えると聞き、経費削減に育ててみたのです。
しかし、強い火力を得る為には、エネンソと言う液体が必要になるらしく、コストパフォーマンスが悪いと言う事で、軍事的な流用は諦めました。
ですが、ロウソクに灯を付ける程度なら、水さえあれば出来るようで、交易品として売り出してみた所、それなりの成果が上がったと言う訳です」
それにはダナヒが「へー」と言う。詳しい事は知らなかったので、俺自身も心ではそう言っている。
「エネンソって何?」
「デバット鉱石を溶かした物に、ローグルの不純物を混ぜた物ね。
これを塗る事で燃焼時間が延びて、雨の中でも火が付けられるようになる。
けど、コストがかかりすぎるせいで、実用化は叶わなかったってシロモノよ」
ユートが聞いてカレルが答える。聞いた限りではガソリンのようなものだろうか。
ユートは一応「ほへー」と言ったが、直後には半笑いでこちらに向いて、言葉にはしないが「お手上げですわ」と、言わんばかりの顔で両手を広げた。
そこからの議題は治安の事や、収入の福祉への割り振り等々。
ハッキリ言って俺には分からず、聞きこそしていたが、発言は無し。
三日後の昼頃に新しいメイドが働きに来ると言う事だったが、これもまぁ、大した事では無いので、「へー」と言っただけで話は終わった。
そして、議題は最後の一件。
「さて、それでは次の議題ですが、これがなかなか厄介な問題です。
以前にもお話した「魔の島」関連の事ですが、行動がどうにも活性化して来ました。
前回の会議から今回までに、二十三隻の巡視船が沈められ、乗組員の十八名がその結果として死亡しています。
あちらの目的は分かりませんが、こちらへの進出は現在も拡大中。
人が住む島に辿り着く事は、最早時間の問題と言えるでしょう」
魔の島絡みの話に辿り着く。つまり、ここから南東の、魔物や半魔が住んで居る島の事で、以前の会議で聞いた所では、しばしば見かけるようになった、とか、その程度の話だったと記憶しているが、ついには攻撃……とまでは行かないが、死者を出す所まで進んでいたらしい。
国同士の事なら一触即発。その辺にしとけよ? と、怒り出しても良い頃だ。
国によってはそれこそもう、領土問題とか言って騒ぎ出す場面だろう。
「マジかよ。メンドクセーなぁ……」
ダナヒはと言うと舌打ちをして、面倒と言いつつ真剣に考える。
「あっちは何も言って来てねーんだよな?」
それからデオスに質問をして、「ええ」と言う短い答えを返された。
そうだとするなら挑発にも取れるし、純粋に国民(が、居るのかは知らないが)の暴走とも取れる。
果たしてダナヒが出した結論は。
「しゃーねー。んじゃ戦争だな」
と言う物で、デオスを除く俺達は揃って「ええー!?」と驚くのである。
「何が「ええー!?」だ。向こうはこっちの国民を殺ってんだ。
覚悟の上で仕掛けて来てんだから、答えてやるのが礼儀だろうがよ」
「いや、まぁ、一理ありますけど!」
後者であった時、取り返しがつかない。
あちらが「すみません、ウチの国民がー」と、謝ろうとした時には戦争が始まっていたなんて、どちらにとっても悲劇でしかない。
その時はその時、退けば良い。とか、ダナヒ(このひと)はきっと言うんだろうが、それこそあちらが許さなければ、意味の無い戦いが始まるだけだ。
確かに舐められっぱなしは嫌ではあるが、あちらが一体何をしたいのか。
それをきっちりと調べてからでも、俺個人は遅くは無いと思う。
というか、そこをはっきりしなければ、国民もやはり不安であろうし、いきなり戦争を始めた国王に「トチ狂った!?」と思う者も出てくるかもしれない。
何より俺は、俺一個人が、慣れたとは言え他人の命を奪う戦争と言う物をしたくないのだ。
「ふーん……まぁ、そういう風にもなるか。そういや前もそんな事で誤解されて、クーデターが起きて殺されたんだよな。最後は城ごと海の底だぜ? やるにしてもやりすぎだろうよ?」
どんだけ苦戦したの反乱軍……そうは思うが「はぁ……」と返す。
その頃からダナヒのバケモノさは、あまり変わって居ないようだ。
「では、少し調べて見ましょう。と言っても結果は見えているような物ですが」
「だが、そうなると問題は北になるな。こっちがこっちでドンパチしてる間に、ヨゼル王国が何かして来なけりゃ良いが……」
デオスが言ってダナヒが言った。ヘール諸島の目下の敵は、大陸の支配を目論んでいる(とされている)ヨゼル王国に定められている。
そして実際、今現在も、あちらからの攻撃は続けられており、もしも魔の島がヘール諸島と敵対すると言う事になれば……
最悪はそう、挟み撃ちもあり得る訳で、そうなれば勝率はゼロと言って良い。
デオスとダナヒはそれを懸念して、答えの出るはずが無い疑問を発したのだが――
後日になってこの問題は、意外な形で解消される事になるのだ。
ヘール諸島とヨゼル王国の共同戦線と言う奇妙な形で。




