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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
九章 破滅の王の遠い影
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意外な形で守られたもの

 ライバードは異世界から来たと言った。その点は俺と同じである。

 だが、死んだと言う訳では無いらしく、「次元の渦」とやらに呑まれたらしい。

 元の世界では戦争をしていて、アルサスと言う国王に仕えていたが、とある戦いの最中に、その渦に呑まれて異世界こちらに転移。

 辿り着いた場所が森に囲まれた祭壇の前だったと彼は話した。


 そこでライバードはイサーベールに会い、色々と状況を教えて貰う。

 そして、こちらの世界に住み出したある日に、俺達を助ける指令を受けたのだ。

 つまり、イサーベール曰くの「手の者」は、龍では無くてライバードだったと言う事で、即ちそれはライバードが、水魔法に長けている者だと言う事だった。


「いやいや、水魔法だけと言う訳では無いぞい。

 このライバードは四属光闇よんぞくこうあん、知識全般にも通じておる。

 火、水、土、風、光、闇。風に区分される雷に関しては、並ぶ者無しと自負しておる程よ。

 ……こちらの世界の歴史と地理は、来たばかりなので赤子並じゃがね」


 出会いからの翌日。時刻的には昼前。

 俺の島への上陸の最中、そんな事を言ってライバードは笑った。同行するのはユートのみで、カレルは仕事で来られないと言った。

 それにはギースが悲しむと思ったが、無理は言えないので、三人だけで来ていた。


 ライバードの言葉に愛想笑いを見せて、小舟の上から浜辺に降り立つ。

 それからライバードが降りた事を見て、学校に案内する為に海岸を歩いた。


 四属光闇。ライバードはそう言ったが、マジェスティならば魔法は一つだ。

 最初に選んだ属性だけ――俺の場合は火になるが、現状ではその一属性しかマジェスティならば使え無い筈。

 だが、異世界から時空を飛び越えて来たライバードには、それは適応されないのか。

 いや、そもそも死んでいないのだから、ライバードはマジェスティでは無いのかもしれない。

 となると普通の魔法使い。それも相当の使い手だろう。

 実力を目にした訳では無いから、言う事を信じるのなら、と言う前提になるが。


「ふむ……」


 そんな事を思っていると、ライバードが背後で一言を発した。

 振り向くと、左手の森の方を見ており、訝しげな顔で髭を擦っている。

 そちらの方には学校は無いし、人が入り込む事もまずありえない。

 ある物と言えば丸太の修行場と、そこに住んで居ると考えられる謎の老人が一人居るだけだ。

 不思議に思ってどうしたのかと聞くと、ライバードは「いや」とまずは言った。


「気のせいじゃろう。

 素晴らしい島じゃが、少し変わった存在がるような気がしてな。

 ……最近は牛乳を飲んどらんで、感覚が鈍って来たのやもしれん」

「牛乳! 毎日一本健康飲料!」


 その後の言葉にユートが絡む。それにはライバードは「ほほう!」と喜び、「お前さんはよう分かっておる!」とユートを褒める。

 挙句には二人して拳を突き上げ、「牛乳! 牛乳!」と連呼をし始め、俺の精神力を削り出すのだ。

 ユートだけなら「うるさいよ!」で済むが、ライバードが居るとそうも行かない。

 故に黙って耐えて歩き、建設現場の近くに着いた。


「おおーーー……」


 三人揃ってまずは驚く。驚いた理由は思っていたより、学校が完成に近づいていたから。

 門はすでに完成し、ロータリーもほぼできあがっている。

 そこには「小便禁止!」と言う、謎の立札があるがこれは無視した。

 ロータリーの左手には体育館があり、組み立てた足場で壁を塗っていたが、天井等はまだなのだろう、現在も作業を継続している。

 右側には部室などに使う予定の別館の基礎だけがとりあえず完成。

 そして、ロータリーを越えた正面にある、学校の本館は完成済みなのか、そこで作業をしている者は、門から見る限りは誰も居なかった。

 色の指定はしていなかったが、どうやら茶色に塗られたらしい。材質が木ゆえに仕方が無いのか、しかし、落ち着く良い色に思える。

 予定ではまだまだ先のはずだが、ギースとニースが手伝ったお蔭か。

 ともあれ、予想外の進捗ぶりに、俺とユートは茫然としていた。


「良いー雰囲気の学校じゃあ。これなら勉強も捗ると言う物。

 作業の邪魔にならん程度に、回りの様子を見て来ても良いかな?」

「あぁ……はい。白い髪の子、生徒になる予定の子供達なんですが、ギースとニースと言う子が居るかもしれないんで、もし見つけたら声をかけてやって下さい」


 一応に言うと、「了解した」と言い、ライバードは悠長な動きを見せて、学校の中へと向かって行った。

 直後に作業員の一人に捕まるが、何事かを展開してそこから脱出。

 すぐまた別の作業員に捕まり、苦笑いを見せて何かを言っていた。


「いい加減キレて魔法を使わない? 出来上がった学校吹っ飛ばされちゃうよ?」

「いやいや、一体何者なんすか……」


 思わず敬語でユートに返す。どんだけ短気ならそうなると言うのか。

 もしもそんな性格だったなら、元の世界あちらの人達は一安心しているだろう。

 流石にそれは無いと思って、今の内にギース達の小屋を訪ねる。

 或いは現場に居るのかもしれないが、そちらに居ないと考えて、ライバードを紹介する為に迎えに行ったのだ。

 だが、二人はそこには居らず、奇妙な人形がぶら下がっていただけ。

 若干、ダナヒに似た顔のそれは、まるで殴ったり、蹴られたりしたかのように、ズタボロの状態で吊るされており、思う所は色々あると考え、見なかった事にして現場に戻った。


「あ! 居た! 何やってんだよヒジリー!!」


 戻って来るなりギースに呼ばれる。どうやら現場の方に居たようだ。

 右隣にはニースが立って居て、後ろには笑顔のライバードが居る。

 自己紹介はお互いに終えたのか、遠慮をするような妙な空気は無い。


「人質に取られた!?」

「だから何者だよ……」


 ユートの言葉に一応答え、それから三人の前に立つ。


「学校の先生してくれるんだって! すげえな! いよいよって感じだな!

 あと一か月位か!? それとも半月!?」


 即座にギースが言ってきたので、若干引きつつ「う、うん」と答える。

 引いた理由は彼の髪の毛。興奮した時に逆立つアレだ。

 まさか攻撃はしてこないだろうが、思い出したが故に警戒したのだ。

 その後に少し冷静になり、ふた月位かなと、俺個人は判断。

 それを改めて口にすると、「ふた月かァ……」と、少し凹んだように見えた。

 まだ四か月位は先だと思っていたので、それでも十分早いと思うが、現場で実際に働く二人には、長い思える期間なのだろう。


「勉強自体はどこでも出来る。学ぼうとする心さえあればの。

 ワシ自身も君らに学びたい事がある故、明日からでも始めてみるかね?」


 直後の言葉はライバードのもの。聞いた二人が驚いて振り向く。

 それからニースはギースの顔を見て、無言で何かを伝えたのである。

 兄を立てたのか、内気故の行動か。そこは俺には分からなかったが、ギースはすぐに「お願いします、先生!」と言い、ライバードに「こちらこそじゃ」と返されるのだ。


「え? じゃあ三人で住むの? あの小屋だとちょっと狭くない?」


 ユートの言葉に「うーん……」と言う。ギースとニースには聞こえないので、出来るだけ小さく絞った声だ。

 だが、ライバードには聞こえて居た為に、「いやいや、何を。自宅から通うとも」と言う、奇妙な発言が返されて来た。

 どこにあるのか不明であるが、少なくともダナヒの街よりは遠い筈。

 そうでなければ指示された日から、街に来たまでの日にちが謎になる。


「えっと……結構近いんですか?」


 そう思った俺が一応聞くと、「普通に行けば三日くらいかの」と、当たり前のようにライバードは言うのだ。


「ええと……」


 これはギースで、妹のニースも「ちょっと意味が……」と困惑している。

 それはそうだ。三日かけて来るなら、帰る時にも三日がかかり、一週間に一度も授業が出来れば上々と言う結果に終わる。

 それならもう泊まりなさいよ。ていうか泊まって下さいよ。

 そう言わんばかりの表情が、ギースとニースの二人には伺える。


「ふむ……まぁ丁度良いかな。雇って貰った恩返し。

 理事長には一つ良い物を伝授して差し上げる事にしよう」


 理事長とはつまり俺の事らしい。創設者なのだからそうなのかもしれないが、何だか異様にこそばゆい。


「ちょっと、その呼び方は……他の生徒にバレたくないんで……」


 知られたらどうなる?

 一定の距離を置かれるか? もしくは逆にモテモテだろうか?

 理事長、アーン♡

 なんてたまらない図だが、男子からの友情は壊滅的だろう。

 理事長居るし、スーパーゲロヤバス。

 とか言われて、そそくさと逃げられる図も相当ショックだ。

 ここは隠して置くのが一番。役得は無いが害も無い。

 考えた上でそう言うと、ライバードはまずは「ふむ」と言った。


「ではヒジリ君でええのかな?」

「あ、はい。特別扱いはナシで」


 その上でそう質問して来たので、俺は苦笑して答えたのである。


「うむ。ならば理事長改め、ヒジリ君に良い物を伝授して上げよう。

 これからワシが呟く言葉を、決して間違わずに続けて欲しい。

 その際には自分が行きたい場所を、しっかりとイメージしておくようにな」


 良く分からないが「はい……」と言う。「決して」の部分が何だか怖い。

 それに、行きたい場所と急に言われても、そう簡単には思い浮かばなかった。


「ああ、元の世界は残念ながら駄目じゃ。この世界の事と限定して欲しい」


 言われてみれば確かにそこだ。自分の部屋。そして家。

 行きたいと言うより帰りたいと思う場所である。

 だが、駄目じゃ、と言われては考えるだけ辛いので、直後に浮かんだピシェトの孤児院に行きたい所を固定して見た。


「決まったかな?」

「はい。一応は」


 もしかしたら魔法で連れて行ってくれるのだろうか?

 そう思ったのはこの時の事。フリとしては完璧にそうだが、もし出来るのなら凄まじい人である。


「ヴィヴィアンの寝室にレッツゴー!」

「違うし男だろ……」


 ユートも薄々を察しているのだろうが、イメージした先はまるで違った。

 元の世界よりも、孤児院よりも、真っ先に行きたい所がヴィヴィアンの寝室。

 俺は一体ユート(こいつ)の中で、どういうキャラとして根付いているのか。


「それでは同じ言葉を繰り返すのじゃぞ?

 ウム・ベルク・ラルスラード・ギルス・バーラル・フォーレスカ……」


 そんな中でライバードが呟き出したので、ユートを放置してすかさず真似た。

「決して間違うな」と言う部分が恐ろしく、同じ言葉を慎重に呟く。


「訪れし場所! 記憶を辿り、我を今、その場に導かん!」

「訪れし場所! 記憶を辿り、我を今、その場に導かん!」

 

 そして、全てを言い終えた時、俺の視界は不意に途絶え、一瞬後にはかなり前に見た、見慣れた風景が広がっていたのだ。

 二反の畑。それに荒野。一人の男が畑に見える。

 男は逞しい上半身を露出して、鍬を両手に畑を耕していた。

 忘れるはずが無い。その筋肉を。忘れてはいけない。受けた恩義を。

 その人物は俺の恩師で、命の恩人ピシェトであった。


「ピシェトさんだ!? 相も変わらず逞しいお筋肉!」

「ミスターヒジリ!? それにミス・ユート!?」


 ユートの言葉にピシェトが気付く。直後には何人かの子供が気付き、家の中から飛び出して来る。


「ピ」


 シェトさん! と言おうとした俺だが、直後に異様な脱力感を覚え、「ピ」の口のままで地面に倒れ、意識を失ってしまうのだった。



必ず戻る、と言う約束ですな。


ちなみに詠唱を間違った場合、移動時に体が四散します。

割りに怖い移動魔法…(震)

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