表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
序章 その世界で出来る事
4/108

新しい居場所

前回のスキルツリー(メニュー)の1ページ目と2ページ目です。

3ページ目からは現状では黒歴史ページとなっております。

挿絵(By みてみん)

あと、まとめサイト?で指摘されていた「ヒジリを見つけたお偉いさん」と、「団長がなぜ優しくするのか」の理由の部分を追記しました。

指摘して下さった方に感謝であります。

「おはよーヒジリ! 大丈夫だった?」


 上半身を起こすとユートが飛んで来た。

 シーツの上に「ひょい」と降り、心配そうな顔で俺を見て来る。


「ああ……余裕で合格って言ってた。

 なんか内訳? みたいなものがあるの?」


 聞いた事を伝えると、ユートは「あるよー」と右手に飛んだ。

 着地した場所は机の上で、羽ペンを担いで何かを書き込む。

 それから書き込んだ紙を持って、再び飛んで戻って来た。


「こんな感じらしいです」


 なぜかの敬語で着地して、俺の膝上でそれを広げる。

 顔を突き出して確認すると、九Pの内訳を知る事が出来た。


 言語を知る為の努力 四P

 逆境でも前向きに頑張った事 二P

 騎士になれた事 三P

 きちんと挨拶が出来る事 三P

 洗濯物を干している侍女のパンツを盗み見た事。 マイナス一P

 あまつさえそれを記憶して、一度と無くオカズにしてしまった事 マイナス二P


「いぃ!?」


 直後の反応はそんなものだった。

「細かいし怖い!!」と思ったからだ。

 それに、これを書いた者が、ユートと言うのも問題である。


「まさか見たのか……!?」


 と、焦って聞くも、ユートは「ニヤニヤ」として答えを返さない。


「(うっわ、今度からはもっと気をつけよう……)」


 顔を逸らしてそう思い、どこでするかに思案する。

 いや、するなよ!

 という声が聞こえてきそうだが、青少年には無理な話だ。


「で、オカズにしたってどういう意味? 侍女のパンツを食べたって事?」


 真っ直ぐな瞳でユートが聞いてくる。

 どうやら分かってはいないらしい。

 或いは行為を見られたのかもしれないが、殆ど、唯一の救いである。


「ま、まぁ、そんな所かな……青少年はハングリーだから……」


 震えた声でそう言うと、ユートは「ふーん……」と納得をした。


「じゃあいっぱい取って来て上げるよ!

 お金を置いておけば泥棒にもならないよね!

 シチューに入れてがっつりいこー!」

「やめてくれ!! そんな事したら来月で終わりだろ!?

 てか、その前に人として終わってる!」


 その図を想像し、必死で懇願する。


「やぁ、今日は縞パンかぁー♡ クリームシチューにはやっぱ縞パンだよな!」


 なんて、人として完全に終了である。


「うーん……なんだか良く分かんないなぁ……

 でも、そこまで言うならやらないよ。

 ヒジリが嫌がる事しても仕方ないし」


 必死の説得の甲斐があり、ユートはなんとか納得してくれた。

 そして、「それじゃごはん食べにいこー」と話を変えてくれたのだった。


「ああ……」


 それには一先ず言葉を返し、左肩に乗ったユートに向かう。


「お前、何も知らないのな……」


 何気なく言うと、「お前って言った!」と、ユートは少々不満げだった。

 しかし、これをきっかけにして、俺とユートは「お前」と「ヒジリ」として、行動を共にして行く事になるのである。




 食堂に行って分かった事は、言葉がはっきりと分かるという事だった。

 あの男、(仮にPさん(ポイントをくれるから)としておこう)Pさんの言った事はどうやら本当の事だったらしい。


 聞くだけでは無く、話す方も、言葉としてきちんと伝わっているようで、食堂のおばちゃんは「どうしたの急に~?」と、言葉の上達ぶりに驚いていた。


「あ~あ……これでボクは用無しか……

 もっとヒジリの役に立ちたかったなぁ……」


 そんな事を言ったユートには、「話し相手になってくれてるじゃないか」と言い、手早く食事を終わらせて、仕事の為に王城に行く。

 そこでもやはり皆は驚き、「どうしたんだ?」と殆どが突っ込んできたが、「なんか急に目覚めちゃって」と、誤魔化す事でなんとか切り抜けた。


 そして午後。

 訓練所で、先輩と稽古をしていると団長が現れ、


「言葉が分かるようになったのか?」


 と、俺に質問してきたのである。


「あ、は、はい……ようやくなんとか……」


 稽古を止めて団長に向く。

 聞いた団長は「そうかそうか」と、柵を開いて近寄って来た。


 団長の名前はシャウレル・なんとか。

 失礼な話、覚えて無いが、その頃の俺は言葉が分からず、聞き取る事が出来なかった。

 それに、殆どの人が「団長」と呼んでいるので、その後に聞く機会が無かったのである。


 年齢はおそらく四十前後。身長は百八十㎝位だろうか。

 髪の色は赤色で、鎧の色も殆どが赤。鎧の色は俺達もそうなので、それがこの国のシンボルカラーなのだろう。

 髪型は例えるならライオンのたてがみで、若い頃には「赤獅子」とも呼ばれていたらしいが、俺が知る限りでは逞しい体つきの、気さくな性格の人物だった。 


 試験の時に俺を見かけて拾ってくれた人物でもあり、そこには俺は感謝をしていたし、恩義と言う物も感じている。

 以来、何かと構ってくれる理由は、結婚して居れば俺くらいの子が居てもおかしくないからだろうと思う。

 まぁ、これは推測なので、本当の所は分からないのだが、何かと構ってくれると言うのは、推測では無く本当の事だった。


「じゃあ丁度良い。会議に付き合え。

 言葉が分からないから勘弁してやっていたがな、本当はお前にも出て欲しかったんだ」


 実の所、俺は誰にもマジェスティである事を伝えて居ない。

 なので周りは「そうなんだろうな」と何となく予測をしていたと思う。

 会議に出される理由はそれなのか、はたまた団長の酔狂なのか。

 理由は分からないが団長はそう言って、俺に右手を伸ばして来たのだ。

 それを見たユートが「わっ!」と飛び、団長の右腕が俺の首に回される。


「ぶー」


 危うい所でかわしたユートは、頬を膨らませて団長に抗議。

 しかし、それが伝わらない為に、諦めて俺の頭に乗った。


「(流石に重い……! その位置は重い……!)」


 そうは思うが口には出せない。

「何が?」と聞かれる事が間違い無いからだ。

 いきなりの会議が! と言えなくも無いが、折角の好意を無にしても悪いだろう。


「さぁ来い」


 顔を顰めて耐えていると、団長が俺を引っ張り出した。


「ちょ、ちょっと、今、稽古ちゅ……」

「構わん構わん。こっちの方が重要だ」


 俺の言葉に聞く耳持たず、団長が俺を引っ張って行く。


「すみません!!」


 顔だけを向けて先輩に言うと、「ああ」と言う言葉が返されてきた。


「ほんとすみません!」


 それでひとまず安心した俺は、顔を戻して息を吐く。


「国王陛下と王女もおわす。くれぐれも失礼が無いようにな」


 そんな事を平然と言われて、驚きから「えぇ!?」と言う言葉を発した。


「はっはっはっ」


 団長のリアクションはたったのそれだけ。

 その後は黙って道を進み、草原地帯から王宮に近付く。


 時間にするなら十分程かかったか。

 王宮に辿り着いて中へと入り、二階にある会議室に向かう為に、手近な階段を選んで上がった。


「(長距離走をやる前みたいだ……なんか吐きそう……気持ちわり……)」


 そんな事は口には出来ず、咳込む事でストレスを払拭し、会議室の扉の前に立って、俺はようやく覚悟を決めた。


「ちと遅れたな」

「あ、すみません……」

「いやいや、お前のせいじゃないさ。今朝の長グソが原因だな」


 団長が言って「ははは」と笑う。

 それには愛想笑いを返すが、ユートは「サイテー……」と呆れているようだ。


「では行くぞ」


 続けた言葉に「はい」と言い、団長が会議室の扉を開ける。


「申し訳ない。遅参した。

 シャウレル・グスタフスとカタギリ・ヒジリ、只今到着いたしました」


 団長が言って頭を下げたので、俺も遅れて頭を下げた。


「うわわあ!?」

「(いって!?)」


 その為、ユートは落ちかけたが、俺の髪の毛を掴んで留まり、痛みに耐えた俺の顔が、隠れた角度で若干歪んだ。


「ごめんごめん……悪気はないんだよ」


 ユートがそう言って肩へと戻り、俺が「(分かってるよ……)」と小さく返す。

 顔を上げると団長は、すでに中へと踏み入っており、


「ヒジリ、お前も来い」


 と、言われた為に「はい」と答えて中へと入った。


 会議室の中央にあったものは、時計のような円状のテーブルで、団長の後ろに続く形で、右に沿って少し歩き、その際に何人かと目が合ったので、その度に小さくお辞儀をしておいた。


 皆、口にはしないものの、「誰だね彼は?」と言いたそうな顔である。

 それはそうだ。おエライさんの中に入ったばかりの新人が一人。

 こちらから挨拶をするべきかとも思うが、流石にそんな勇気は出てこない。


「ふぅ……」


 時計で言うなら十五時頃で、団長が立ち止まって腰を下ろす。

 左手で隣を「ぽんぽん」と叩くので、俺はそこへと腰を下ろした。

 団長頼みます! 紹介して下さい!

 そんな気持ちで横を見るが、団長はこちらに気付いていない。 

 集まっている人間を「ぐるり」と見回し、両手を組んで黙ってしまうのだ。


 ハッキリ言ってめっちゃ気まずい。視線がザクザク刺さっている気がする。

 そんな雰囲気で周囲を見回すと、誰も見て居ない事に気付いた。

 どうやら俺の思い込みで、疎外感を感じていただけらしい。

 或いは事前に説明があり、来る事が知らされていたのかもしれない。


 ともあれ、少し落ち着いたので、この場の状態を観察して見る。

 集まっている人数は八人程度で、正面と左が少々空いている。

 国王らしき人物は、十二時辺りに座っており、娘と思われる一人の少女が国王の右に鎮座していた。

 髪は青とありえない色だが、顔の作りはハッキリ言って可愛い。


「(年は俺と同じ位か……? にしても髪の毛が青色って……

 いや、意外にアリだな……)」


 その為、俺は現金にもそう思い、異世界に来た事を改めて実感するのだ。


「さて、全員揃ったようなので、会議を開始致します」


 十九時辺りに座った人物が、そう言いながらに立ち上がる。

 見た目の年齢は五十前後の、いかにも悪そうな政治家顔だ。

 まぁ、良い政治家なんて居ないイメージだから、そこはどうでも良いのであるが、その人が直後に口にした事は、どうでも良いとは言えない事だった。


「さて、では早速ですが、ヨゼル王国の動きについてです。

 先日、ついに国境を突破し、我が国の砦を陥落させました。

 このままで行くとひと月の間には、我が国の首都まで到達するかと思われます。

 徹底抗戦か、それとも降伏か。

 いずれにせよ、ここで判断をしなければ、我が国はユーミルズ王国の二の舞になるかと……」


 直後には俺は「はぁ!!?!」と言い、立ち上がって皆からの視線を受けていた。

 抗戦とか降伏とか意味が分からない。

 まさかこの国は戦争をしているのか。


「こ、抗戦とか降伏ってどういう事ですか……!?

 もしかして戦争してるんですか?!」


 疑問を実際に口にすると先程の男が「そうだが……」と言って来た。


「まぁ落ち着け」

「す、すみませんでした……」


 団長に言われて、とりあえず謝罪する。場の雰囲気を乱していた事にようやく自分で気付けたからだ。

 そして座り、小さく呟く。


「でも、戦争してるって……そんなのちょっと普通じゃないですよ……

 俺が元居た国なんて、もう何十年も戦争はしてません……

 それこそゲームとかアニメだけですよ……」


 それには団長は「そうか」と言って、自分の言葉を更に続けた。


「それはとても羨ましい事だ。俺達の国もそうだった。

 もう何十年も戦争はしていない。

 だが、だからと言って仕掛けられたケンカを、一戦もせずに投げる事は出来ない。

 俺達騎士が精進し、技を磨くのは何の為だ?

 国王や、民や、国の為に、剣となり盾となる為だろう。

 少なくとも、俺はそう考えているし、どのような戦にも出向くつもりだ。

 お前に今日、参加して貰ったのは、我が国の現状を知って貰う為だった。

 ……黙って居た事は許して欲しい」


 腕を組んで目を瞑り、団長は淡々とそれを話した。

 聞いた俺は「いえ……」とは答えたが、その後にどう言って良いかが分からず、俯いて正面の机を眺めた。

 そこからの事は覚えて居ないが、かなりの時間が経った事は分かった。


「それと、もう一つな。ヒジリ」


 団長のその言葉に気付いた時には、殆どの人が退出していた。

 団長と、その後ろに、一人の女の子が立って居ただけだ。


「王女のセフィア様だ。お前と友達になりたいらしい」


 そう言った後に団長が退き、女の子……王女が一歩を踏み出す。


「セフィアです。良かったら友達になって下さい……」


 そして、少々照れながらに言って、俺をドキリとさせたのである。

 近くで見るとやはり可愛い。その上、なんかオーラが出ている。


「よ、喜んで!」


 と言いたかった俺だが、実際には「よ、よぼこんでぇい……っ!」と言い、団長には「なんだそりゃ……」と、呆れられ、王女には「ふふっ」と笑われるのである。


「良かったね? パンツ貰ったら?」


 と言う、ユートの言葉には「(貰えるか!)」と思い、改めて王女の顔を見る。


「明日からよろしくお願いしますね」


 王女が言って、頭を下げて、「にこり」と笑って立ち去って行く。

 俺はその様を「ぼーっ」と眺め、戦争の事を忘れて舞い上がっていた。




 翌日からの日々は忙しなかったが、俺の心は充実していた。

 仕事に稽古、そしてデート……

 とまでは行かないが、セフィアとの些細な交友は、俺の気持ちを弾ませてくれ、その時以外の時間まで、セフィアの事を想うようになるには、大して時間はかからなかった。


「相手は王女様だよー。ホンキになったってどうしようもないよ?

 それともアレなの? リャクダツとかしちゃうの?

 失敗して首を飛ばされちゃうの?」


 それはユートにも伝わったのか、ため息をつく度にそんな事を言ってくる。


「失敗前提かよ……」


 と、一応突っ込むが、そんな事をしようとは考えて無い。

 確かに好きは好きだけど、結婚がどうとかは考えられないし、ため息の理由はそれだけじゃなく、戦争の方にもあったからだ。


「あのさ……俺って普通に死ぬの?

 マジェスティっていう存在は、死なないとかいう特例は無いの?」


 王宮からの帰り道。

 左右に城壁が連なる道で、周りに人が居ない事を見て、肩に居るユートに質問してみた。

 即座に返されたのは「死ぬね」というもの。


「読んだと思うけど普通に死ぬよ。

 刺されても死ぬし、斬られても死ぬ。

 あと、病気や寿命でも死ぬのかな? 

 ヒジリが他人ひとより優れてるのは、身体能力だけだから」

「つまり、他人より走るのが早いし、遠くにも飛べるし、タフだって事だけか?」


 続く質問には「そうだね」と言い、俺を軽く絶望させた。

 もし、死なないという事であれば、俺は多分、戦争に行った。

 それこそ、一方的な虐殺だけど、居場所を守るにはそれしかないからだ。

 でも、普通に死ぬという事が分かった今は、それには正直、二の足だった。


「結構痛かったしな……死ぬのって……」


 呟いて、右手で喉を擦る。

 思い出しただけで「ゾッ」とするし、あんな痛い目にはもう遭いたくない。


 だが、戦争に行かなければ、俺の居場所は無くなるだろう。

 卑怯者と蔑まれるかもしれないし、もしかしたら罰則なんかがあるかもしれない。


 それに、何よりセフィアとは、もうそれまでとなるに違いなかった。


「死ぬのが怖いなら逃げちゃえば? だって、ヒジリには関係ない事じゃん?」

「そうでも無いんだよ。拾われたからね。

 他の国はどうだか知らないけど、俺の国には昔から、一宿一飯の恩義って奴があるのさ……」


 ユートが言って、俺が返す。

 聞いたユートは「イッシュクイッパン?」と、聞き慣れない単語に困惑していた。


「逃げる訳には行かないのなら……やるしかないよな……実際の所……」


 相手が居るとは大事な事で、話し合った結果として決意が出来た。

 その為に「ありがとう」とユートに言ったが、ユートは「何が?」と疑問して、不思議な顔で俺を見ていた。


 そして、それから二十日が経った頃。

 俺達の国は侵攻してくるヨゼル王国への反撃を開始した。



まだ、マジェスティなら何とかなる、と言う甘えのような物を持ってます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ