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とある少年との出会い

 デアジャキアの居所は意外な事に、あっさりと教えて貰う事が出来た。

 場所は酒場で時刻は夕方前。開店の準備をしていた亭主が、「それなら」とあっさりと教えてくれたのだ。

 それは、正確には「デアジャキアの居所を知っている者の居場所」であったが、それが分かれば場所も分かるので、これで解決だと俺は思った。


 酒場の亭主に言われた場所は、村の外れの丘の上で、そこにはおそらく樫だと思われる一本の木が屹立していた。

 その木を前に十分程待つと、一人の男が姿を現した。

 場所は右手の森の中からで、夕日を顔に受けている為に顔つき等は良く分からない。


 しかし、少しして近付いて来た時には、それらを見て取る事が出来た。

 見た目の年齢は十五~六才。髪は白で、瞳は緑色。

 身長は俺より五㎝程低く、肌の色がかなり白かった。

 顔つきとしては少々やんちゃで、宛ら天然パーマのように、髪の毛の端々が反り返っている。

 武器等は持たず、服装も普通で、俺達の近くに立った後に、「……あんたらが?」と、ぶっきらぼうに質問して来た。


「むしろあなたは何なのよ?」


 これはカレルで、予想外の人物が現れた事に困惑しており、直後に「なんだよこのガキ」と言われて、「ガキはそっちでしょ?!」と、軽く噛みつく。


「ま、まぁまぁ、ちょっと落ち着いて……」


 会うなり喧嘩とかライバルですか。

 そんな事を思いつつ、肩を掴んでカレルを宥める。一応それで鎮まってくれたので、改めて少年に顔を向けた。


「俺達は東のヘール諸島から、海王ダナヒの使いで来た者です。

 今後の関係について話し合いたいので、あなた達のリーダーに会わせて貰えませんか?」


 事情を話すと少年は、まずは「ふーん……」と一言言った。


「信じないって訳じゃないんだけど、こっちにも一応順序があってさ。

 悪いんだけど村に戻って広場で待っててくれるかな?」


 続けた言葉に「はぁ……」と言うと、右手を見せて走って行くのだ。

 向かった方角は森の方。順序と言う物に従う為には、向かう必要があったのだろう。


「準備じゃなくて順序って言った?」

「ああ、どういう意味だろうな……?」


 ユートの言葉にそう返し、注文通りに広場に向かった。


「間違えたんでしょ? 頭の悪そうな子だったし」


 ファーストコンタクトで失敗した為か、カレルの少年への見解は辛辣だ。


「まぁ、戻れば分かりますよ……」


 実際の所は不明であったが、苦笑いを作ってカレルを宥めた。

 言われた通りに村へと戻り、広場でしばらく待機する。

 気付けば、住民達が少しずつ現れて俺達を徐々に包囲し始めていた。


「生贄にされる!」

「されないされない……」


 保証は無いが、まずされない。ユートの焦りにはそう返し、住民達の様子を伺う。

 最初はそれこそ五~六人だったが、今は二百人程の大人数で、何かを仕掛けると言う風でも無く、歓談しながら何かを待っていた。


「あー。みんな何か期待してるんじゃないの? ヘールくんの決め技でも見せてあげたら?」

「あんなの見せたらソッコーでフクロだろ……」


 それにはユートは「それもそうですなぁ!」と、どういう訳かおっさん口調。

 分かってるんなら言うなよ、と叱ると「構って欲しかった。後悔している」と犯罪者宛らの言い分を返して来た。


「誰か来たわよ」


 カレルが言うのでそちらを見てみる。


「あ……」


 そこには人々をかき分けて近付いて来ている、先程の少年の姿が見えた。

 両手にはなぜか布が巻かれている。有名な格ゲーのファイター宛らだ。


「さ、じゃあやろうか?」


 と、現れるなりに言って来たので、「は?」と言って、両目を細めた。


「入隊試験。リーダーに会いたいんでしょ? だったらまずはオレに勝つ事さ。そっちの武器は?」

「いや……槍、だけど」


 一応答えると、周囲の人垣から一本の棒が投げ入れられる。

 どうやらそれを使えと言う事らしく、カレルが苦笑してそれを拾った。


「言い間違いじゃ無かったみたいね。あとはよろしく、期待の新人さん」


 そして、それを俺に渡して、ニヤニヤしながら後ろに下がるのだ。


「あとはよろしく、期待のシンジンさん」


 ユートも直後にそれを真似、俺の肩から宙へと飛び立つ。

 とりあえず全く似て居なかったが、突っ込む暇すら与えられなかった。


「行くぞ!!」


 と、少年が直後に飛びかかって来たからである。

 仕方が無しに体を向けて、棒を構えて少年を出迎えた。

 あちらの武器は当然拳で、動きとしてはなかなか早い。

 狙ってくる場所も的確で、その年齢に相応しくない、戦いへの慣れのようなものも確認出来る。

 しばらく攻撃を流した後に、距離を取る為に後方に飛ぶ。

 そこから反撃に転じて見たが、少年は全てを紙一重で避けた。


「(やるな! 手加減をしてるとちょっとマズいか……!)」


 一旦引いて考えを変え、目つきを変えて少年に向かう。あちらも或いは本気になったのか、真剣な顔で「にやり」と笑った。


「おい! ギースが本気になったぞ!!」

「あいつ結構やるって事かー!?」


 少年の髪が若干逆立ち、住民達が騒ぎ出す。

 直後に少年はこちらに飛んできて、猛烈なラッシュを仕掛けて来た。

 それらをかわし、時に流し、反撃を加えて何とか凌ぐ。


「くっ!!」


 顔を狙って来た一撃を避け、その手を掴んで後ろに投げた。

 だが、少年は地面に手を着き、空中で回転して後方に着地。

 そのすぐ後には低い体勢で飛び、右手を引いて襲い掛かって来た。

 腹部から下が狙いであろう。

 迎撃の為に棒を引き、攻撃の範囲内でそれを突き出す。


「何!?」


 すると、少年は空中で棒を掴んで姿勢を変えたのだ。

 そしてそのまま俺を引き、右手の拳を突き出して来る。


「くそっ!!」


 いちかばちかでそれを逆用し、空中の少年に肩からぶつかった。

 空中ではそれをかわせなかったか、少年が地面に「どうっ」と落ちる。

 すかさず棒を喉に突き付ける事で、試験という名の戦いは終わった。


「参った……」


 悔しそうに少年が言う。だが、普通の人間なら相当に強い。

 俺は突き付けていた棒を引いて、少年に向かって右手を伸ばした。




 少年の名前はギースと言った。

 観客の誰かが叫んでいた名だ。

 正しい年齢は十四才で、デアジャキアでの立場は入隊試験官。

 日頃は村の外れに住んで、農作業等をしているらしい。


 家族は一人で、妹らしく、本気になれば自分よりも妹の方が強いとギースは言った。

 その為「それは怒らせたくないな」と言うと、ギースは「ははは」と笑うのである。


「オレはあんたが気に入ったよ。妹もあんたを気に入るんじゃないかな? 

 短い付き合いになると思うけど、良かったらオレ達と仲良くしてくれ」


 その言葉には「勿論」と言い、出された右手に握手で応じる。


「それで、あんたの名前は?」


 とここで聞かれ、「カタギリ・ヒジリ。ヒジリで良いよ」と答えた。


「珍しい名前だな……」

「こっちでは良く言われる」


 それには苦笑いを作って返し、彼の案内で森の中を進む。

 辺りは夜で、普通であれば視界が効かずに苦労をするが、ギースはそれでも速度を落とさず、安全な道を的確に行って居た。


「結構強かったしマジェスティなんじゃない? その辺にアイボー妖精が居ない?」

「いや、多分、普通……じゃないにしても、少なくともマジェスティじゃないんじゃないか? それだったらお前が見えてるはずだろ?」


 その様子を見たユートが言うが、俺の言葉で「うーん……」と沈黙。

 少ししてから「それもそっか」と、何とか納得したようだった。


「デアジャキアの意味って知ってる?」


 これはカレルで、突然の事に、聞いてはいたが「は?」と言う。

 やはりはギースが苦手なのか、一行の最後部からの質問である。


「ある古代語のひとつで「流刑者達の末裔」って意味よ。

 そして、かつてこの一帯は犯罪者達が集まる流刑地だった。

 そこには人間だけじゃなくて、魔物と人間のハーフと言われる半魔も沢山居たらしいわ」

「あ、はぁ……」


 何が言いたいのかは分からない。頭の良い人はこれだから困る。

 しかし、無視をする訳にもいかず、とりあえずの形でそれだけを返した。


「どうしてそんな名前を名乗るのか。個人的には興味があるわね」


 カレルが更に言葉を続けた。俺の疑問に気付いたのかもしれない。

 だが、それでも意味が分からない俺は、もしかしたら割とアホなのだろうか。


「フムフム。流石は人間図書館のカレルさん。

 ちなみにヒジリの体の一部が、朝になるとリューキするんですが、これは一体どういう意味です?」


 これにはカレルは「えっ……」と言い、一方の俺が「いぃ!?」と言う。


「グタイテキにはコカンなんですが」

「オイ!?」


 続くそれには飛び上がる程に驚き、強引に質問を止めようとした。


「そ、そ、そ、そ、それは、所謂、生理現象ね……

 若い男の子には良くある事よ……

 あまり、その、気にはしないであげて……」


 が、眼鏡を押し上げながら、動揺しつつもカレルは返答。

 聞いたユートが「セーリゲンショー……」と繰り返し、「気にしないでください……」と、俺が頼んだ。


「叩いたり蹴ったりしたら大きくなるのも、セーリゲンショーのエイキョーですか?」


 それには流石に「やめろよ!?」と言うと、「ふぁーい……」と言ってユートは黙った。

 そこからは若干気まずく歩き、十分程が経ってギースが止まる。


「大丈夫、オレだ」


 と、一人で言って、その後に「こっちだ」と俺達を呼び寄せた。

 気配探知を意識すると、木の上に二人の気配を察した。

 顔を向けると弓を持っており、見張りがいたのだと今更に気付く。


「敵だったらヤバかったわね……完全に気が抜けていたわ」


 これはカレルで、同じ事を考えていたので、それには「そうですね…」と短く返す。

 そうなった原因はユートにあるが、そこは責めてやらずに置いた。


「(一応警戒はしておくか……)」


 気持ちを改めるとギースは止まり、前方の小さな灯りを指さした。

 距離にするなら三百m程。草木の先には洞窟が見える。

 その手前には小川があるようで、背後はどうやら山のようだった。


「あれがアジトだ。蛇なんかも居るから、そのガキの面倒はちゃんと見てやれよ」


 ギースが言って歩き出し、「誰がガキよ!?」とカレルが怒る。


「ま、まぁまぁ、ギースは何も知らないんですから……」


 ギースがそれに構わず進むので、俺がなんとか宥めて置いた。


「あーもーホント、イライラするわぁ……本当のあたしを見せてやりたい! もう本当のあたしときたら、バインバインのパッツパツなんだから……」


 しかしながら三十五才だ。

 いや、合計で三十五なのだから、バインバインのパッツパツは二十五才の頃と言う事か?

 それなら見たいなと真剣に思ったが、「何よ?」と言われてアハハと笑い、「何よォォォ!?」と憤慨するカレルに対し、「何でも無いです!」と叫ぶ俺だった。




 洞窟の中へと招かれた俺達は、組織のリーダーと対面していた。

 年齢的には三十前後の、人の好さそうな男性であり、会うなりにまずは握手を求め、その後に自己紹介と説明を始めた。


「ピーター・ラッセルと申します。

 元々は私は騎士だったんですが、王子達のやり方には反対的で。

 どちらにもついて行けなかったので、こうした組織を作りました。

 ……と言っても王位が欲しい訳では無く、権力が欲しいと言う訳でもありません。

 ただ、王子達が争っている間にも、問題は色々と発生します。

 このデアジャキアはそういうものを、自分達で解決する為の組織なんです」


 それには「なるほど……」と言葉を返すと、リーダー――

 ピーターは座るように言ってきた。


「じゃあオレはこれで」


 それに従って腰を下ろすと(樽に)、案内をしてくれたギースが立ち去った。


「ああ。ご苦労さん」


 右手を見せてピーターが言い、返事を気にせずこちらに向かう。


「それで、そちらのご用件は?」


 と、両手を組んで聞いて来たので、訪ねて来た理由を俺が話した。


「ふむ……そうですか」


 事情を聞いたピーターが言い、手を口に当てて考え込んだ。


「しかし……先にもお話したように、私達の組織は一時的なものです。

 例えば王子のどちらかが勝利し、新しい国を作ったとすれば、おそらく解散する定めにあるでしょう。

 他人ひとにどう思われているのかは知りませんが、私はこの組織をレジスタンスとはしていません。

 海王陛下はその辺りの事を、どうも誤解されておられるようだ」


 言うなら自警団に近い存在か。ピーター本人が思う所ではレジスタンス等では無いらしい。

 しばらくしてからの言葉がそれなので、「そうなんですか……」と俺が返す。


「つまり同盟は出来ない、と言う事ね?」


 これはカレルで、それにはピーターは「申し訳ありませんが……」と短く答えた。

 聞いたカレルが小さく息を吐き、諦めた表情で俺を見て来る。

 どうしようもないわね。と言わんばかりの顔なので、俺も流石に諦めをつける。


「(仕方が無いか……完全に失敗だな…)」


 思っていると、誰かがやって来て、ピーターの耳元で何かを囁いた。


「リモーネの部隊は?」


 と、小さく聞いて、聞かれた男が「生憎まだ」と答えた。


「そうか……分かった。私が行こう」


 結果としてピーターはそう答え、男が頷いて去って行った。


「申し訳無いのですが急用が入りました。

 三~四日の間ここを空けます。もし、まだお話があるのでしたら、副長のフェイバーに伝えて置いて下さい。

 後日、私が戻った際に、海王陛下宛てで返送しますので」


 ピーターは直後に立ち上がり、若干早口でそれらを伝達。


「ではこれで」


 と、最後に言って、足早にどこかに向かって行った。


「デンデンデンデンデ~ン♪」


 残念そうな音階が出る。ユートの口から発せられたものだ。

 現在の状況にマッチしているが、正直イラッとせざるを得ない。


「ま、そんな感じよね……」

「デスヨネー」


 聞いたカレルが感想を言い、それに同調してユートが笑う。


「ノーテンキで羨ましいよ……」


 きっとダナヒは残念がるだろう。そう思う俺はそれには笑えず、言った後に呆れた顔で、大きな息を吐くのである。


もしかしたらの話ですが、完結後 (か、或いは時間のある時に)に一人称から三人称になるかもしれません。

最近思うのがどうも自分は一人称が苦手かもしれないというもので、現在書いている三人称モノに非常に馴染みを覚えるのですね。

決定した訳ではありませんが、一応、かるーく覚えておいて下さい(汗)

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