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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
三章 ゲンナマを求めて
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魔法の裏技的な活用法

 どれくらいの時間が経ったのだろう。

 アジトの中の崩落は収まり、ようやく辺りは静かになった。

 私は幸いにも生存しており、壁と、岩と、土砂に囲まれた密室のような空間でもたれかかっていた。

 背中の痛みはもう引いている。

 現在であれば普段のように動き回る事が可能であろう。


「(くっ……狭いな……)」


 が、すぐにも気付いたように、そこでは立ち上がる事すら出来ず、僅かの隙間に気付いた後に、思い出したように「おい」と言って見た。


「へーい? 何ですかー?」


 現れたのは相棒妖精。その存在に今だけは感謝する。


「そこの隙間から探って来てくれ。分かると思うがゼーヤの安否だ」


 それから言うと、妖精は「ハイハイ」と言って動き出した。


「こういう時だけ頼りにすんだよなぁ」


 グサリと刺さる。図星だからだ。だが、私は両目を瞑って、それを聞かなかった事にした。

 両目を瞑ってしばらくを待つ。


「よぉいしょっと……」


 五分程が経っただろうか、やる気の無い声で妖精が戻る。


「うぃーす」


 そのすぐ後ろにゼーヤの妖精、バルクが続いていた為に、私は安堵の息を吐くのだ。

 相棒妖精が生きていれば、主人の方は必ず生きている。

 真実のどこかで手にした情報が、こんな所で活かされるとは。

 ちなみに逆ではそうでは無いらしく、妖精が死んでも主人は死なない。

 そう考えると気の毒な連中だが、そこを気にしても仕方が無かった。


「ゼーヤはどうした? 気を失っているのか?」


 一応聞くと、バルクは「ああ」と言い、「もうちょっとで起きるんじゃね?」と言葉を続けた。


「で、何なんだこれ? どういう状況なんだ?」


 それだけ聞けば十分なので、続く質問は完全に無視。

 無視されたバルクは「これだよ!」と言い、私の妖精と愚痴を言い合った。


「この前なんか目の前で屁だぜ? あんな顔でもスゴイのすんだから」

「オィィィ!?」


 流石にそれには一言を言い、妖精を黙らせる私であった。

 ちなみに私はその時寝ており、妖精はなぜか掛布団キルトの上に居た。

 その時にたまたましてしまったらしく、起きると奴が悶絶していたのだ。

 正直、私も人間であるし、そんな状況には「知るか!」と言いたい。

 だが、こいつはそれを根に持ち、こんな所でぶちまけたのである。


「良いじゃん屁なんか。俺なんてアレだぜ? 飛んで来たアレが顔にかかってさー。キッタネーやら臭いやらでさー」

「オイィィィ!!」


 もうやめろ! 話すのをやめろ! そう言う事で奴らを黙らせ、心と耳の安全を確保した。

 何の話か詳細は不明だが、きっとロクな話ではあるまい。


「レナス様! レナス様ー!!」


 そう思っていると、岩の向こうから声が聞こえてきたのである。

 間違い無くゼーヤが発したものだ。

 それには「ここだ!」と言葉を返すと「お怪我はありませんか!!?」とゼーヤが聞いて来た。


「私は大丈夫だ! そっちはどうだ!?」

「大丈夫です! あっ……妖精が居ないんですけど、別にそんなのどうだって良いです!」


 これにはバルクが「ヒデぇ!」と言って、私の妖精が「けけけ」と笑う。


「どの辺りに居ますか? 閉じ込められてんですか?」


 ゼーヤが更に続けて来たので、「ああ」と返すと物音が聞こえた。

 どうやらあちらは動けるようで、こちらの位置を探しているらしい。

 それに気付いた私は岩を、繰り返し剣の柄で「こつこつ」と叩いた。


「ここか? レナス様?」


 ゼーヤの声が近くで聞こえる。岩の向こうに居るようだ。


「ああ」


 叩くのをやめて言葉を送ると、「うらああ!」と言う気合の声が聞こえた。

 おそらく、岩を押しているのか、或いは引いているのであろう。


「ちょっと一言言ってやらにゃ……」


 その時にはゼーヤの妖精は、隙間からあちらに移動を始めた。

 どうだって良いです。と言われた事に文句を言うつもりだと推測される。


「待ってて下さい! すぐ助けますから! 何とかしてここから抜け出して、ヤールさんに伝えれば……」

「いや、それよりそっちはどうなっている?」


 押し引きする事ではこの岩は動かせない。それに下手をすればバランスを崩し、崩落が再び始まるかもしれない。

 そう思った私が岩越しに聞くと、ゼーヤは状況を教えてくれた。


「えーっと……岩とか土砂があって……でも割と隙間はあります。

 結構デカいのも落ちてますけど、殆どは上にも上れる位です。

 出口は……完全に塞がってますね」


 どうやら私の周囲以外は、割と隙間が存在するらしい。

 出口の方は絶望的のようだが、ここを出られれば何とかなるだろう。


「分かった。少し下がって居てくれ。この岩を壊して脱出する」


 それにはゼーヤは「マジッスか!?」と言い、「マジっすかじゃねぇよ!」とバルクが怒った。


「生きてたのかお前?」

「生きてるよ!! 扱いヒデェよ! 俺とお前の仲はそんなモン!?」


 どうやら喧嘩を始めたらしいが、その声が少々遠ざかっていたので、確認の為に「下がったか?」と聞く。


「あ、はい、大丈夫っす!!」


 ゼーヤが返した言葉を聞いて、狭い空間で体を動かした。

 岩を見据えて剣を抜き、二十回ばかりを高速で振る。

 それから切れ目が見えたと同時に、体をぶつけて外に飛び出した。

 入れ替わるようにして土砂が落下し、今まで居た空間がそれに埋もれる。


「ふぅ……」


 その様子を見ながら欠片を払い、私は小さく息を吐いた。


「す、すげぇ……流石はレナス様……俺みたいなザコには真似できねえっす」

「いや、こんな事はいずれ出来るようになる。

 それよりも初陣で敵を追い詰めたお前の方が余程に凄い。

 自信を持て。少し位はな」


 それにはゼーヤは「はい!」と言って、妖精と何かを話し合った。

 私はそれに構わず歩き、周囲の様子を少し探った。


「……運が悪かったな」


 言葉の対象は仮面の男で、腰から下が潰されていた。

 勿論、すでに絶命しており、右手を伸ばしたような形でうつ伏せになって倒れている。


「(悪いが確認はさせて貰う)」


 心の中で呟いて、その場に屈んで仮面を外した。


「……この男は」


 男の正体は第六だったか、第七だかの王位継承者で、それを目にした私は何となく、反乱分子との取引を察した。

 あくまで私の予想であるが、この男は反乱分子と結託し、王、もしくは王位継承者の抹殺を企んだのではないかと思う。

 爆薬はその為の道具であり、どこかにこれを仕掛ける気だった。

 しかし、その前に発見されて、慌てて逃げようとした訳である。


「何者なんですかそいつ? あ、ちょっとレナス様!?」


 ゼーヤを無視して更に調査し、舞い散っていた何枚かの羊皮紙を見つける。


「(やはりか……)」


 おそらくメモとして使っていたのか、それには日時や場所が書かれ、殺害対象の名前も記された計画書と言って良いものだった。

 他にも契約書や領収書等があり、第六か第七の王位継承者の性格の緻密さが伺えたが、流石に名前は記しておらず、証拠になるかは微妙と言えた。


「何なんですかレナス様!?」

「いや、何でも無い。手分けして出口を探すとしよう」


 ゼーヤに向かってそう答え、それらを折って懐にしまう。

 それからは二人で出口を探したが、潰れた坑道以外の場所に、外に通じる道は無かった。


「レナス様に掘って貰えよ! さっきのあれを繰り返して貰うんだよ!

 十回もすりゃ外に出られんだろ!?」

「アホか! 周りが崩れて終わりだろ!」


 相棒妖精の言葉に怒り、ゼーヤが岩の上に飛ぶ。

 どうやら少し疲れたらしく、そこに腰かけて天井を眺めた。

 私もそれに倣って飛んで、ゼーヤの横で上を見上げる。


「やるとしたらあそこだな……」


 と呟くと、「えっ……?」と言ってこちらを見て来た。

 岩が落ち、土砂が落ちたなら、その分天井は薄くなっている。

 或いは地上に繋げる程の薄さになっているかもしれない。


 だが、それを確認するには今は少々時間が早い。

 それ故に私は「座って良いか?」と聞き、頷いた事を見てから座った。


「聞いても良いっすか……?」

「ん?」


 それは私が座った後の、少ししてからゼーヤの言葉だ。

 顔を向けずに私が返すとゼーヤはぽつぽつと話を始めた。


「もし、自分の世界に帰れたら、時間って一体どうなってんすかね?

 こっちで過ごした時間がそのまま、元の世界にも乗せられるんすか?

 例えばこっちで一年過ごしたら、あっちでも一年経った事になってて、もし十年こっちで過ごしたら、あっちも十年経ってるんですかね!?」


 言葉の最後は必死な顔だった。帰れる事を前提としたものだ。

 私自身、帰った事が無いので、それには何も言えないのだが、その事自体を話す事は、ゼーヤの為には必要な事だった。


「すまないが答えを持って居ない。

 全てを知って居ると言う訳では無いのだ。

 その辺りの事は私より、自分の……そう、月に一度の、審判の日に会う相手に聞くと良い」

「そ、そうっすか……すんません……」


 答えを返すと、ゼーヤはそう言い、まずは私に謝罪した。

 悪くは無いのだ。当然の疑問だ。私だって過去に考えた事はある。

 尤も私は誰にも聞かず、自ら答えを見つけたのであるが。


「でもなんか信用出来ないんすよ……

 いや、レナス様じゃなくて俺の担当なんすけど……

 ていうかまず上から目線が最高にムカつくっていうんですかね?」


 そこは実際、上位の存在なので、私には何も言う事は出来ない。

 しかし、若干の微笑みを見せると、ゼーヤは笑って話題を変えた。


「俺……元の世界ではチャレグの選手やってたんすよ。

 チャレグって言うのは浮遊する三角形の乗り物なんすけど、それに乗って森の中とか、谷の間とかでレースをするんです。

 こう見えて結構有名だったんすよ?」

「ほう……」


 興味が無いと言う訳では無く、相槌の意味で一言を言う。

 聞いたゼーヤは「信じて無いっすね?!」と、少々不満げな表情だったが、私が「いや」と一応言うと、気を取り直して続きを話した。


「……で、あるレースで優勝したんですけど、二位の奴が言ってきたんすよ。「負けたのは腕のせいじゃなくて、チャレグの性能の差だ」ってね。

 流石にちょっと頭に来たんで、一対一で勝負をしたんです。

 勿論、チャレグは交換して、俺はそいつのを使いました。

 最後のコースまでは良かったんですけどね……

 そいつのチャレグ、壊れちまって、気付いたら「あんたは死にましたよ」って、ホント、馬鹿みたいな話ですよ……」


 ゼーヤが言って笑うので、私も「そうだな」と返して微笑んだ。

 馬鹿みたいな話。私もそうだ。そんな話の末に今ここに居る。


「ちょっ、酷いっすよレナス様!」

「いや、私も似たようなものだ。馬鹿にした訳じゃない。誤解するな」


 直後にはゼーヤがむくれて見せたので、そう言って誤解を解いておいた。


「はぁ……」


 納得したのかゼーヤは黙り、暫くの間は下を眺める。


「れ、レナス様は何をしてたんですか?」


 黙っているのが苦手なのか、それから私に質問して来た。

 舞台を鑑賞している際にもこいつはきっと黙ってないだろう。

 そう思って少々笑い、「興味があるのか?」と逆に聞いてみた。


「そ、それはもう! あるっす! ありまくるっす!」

「……変わった奴だな」


 それには息を吐き、そう返す。


「私は騎士だ。今も昔も。そういう家柄に生を受けた。

 そして死んで、ここに来た。ただ、それだけの話だな」


 続けて言うと、ゼーヤは「そ、そうですか……」と言い、再び下を見つめたのである。

 そこからもぽつぽつと会話を続け、やがて朝となる時間が訪れる。

 その頃にはゼーヤは眠っていたので、私は立って頭上を見つめた。


「見えた……」


 岩盤の隙間から僅かだが、太陽の光を見る事が出来た。

 高さとしては三十m程。

 マジェスティにやれない高さでは無い。


「起きろ、ゼーヤ。脱出するぞ」


 顔を向けてゼーヤに言って、右手を貸して立ち上がらせる。


「あそこを砕いて脱出する。私が飛んだ直後に続け」


 それから頭上の一点を指し、ゼーヤの横顔に顔を向けた。


「わ、分かりました! 俺はレナス様について行きます!」

「そうか。ならばしっかりとついて来い。私はそうそう振り向かないからな」


 そう言った後に剣を抜き、頭上に向かって魔法を撃った。

 直後に落ちて来る巨大な岩盤。


「てやあああああっ!!!」


 飛び上がる事でそれを斬り、分かれた岩に足を乗せる。

 ゼーヤが別の岩に乗った事を見て、次の目標に魔法を放った。


 バランスの均衡を失った為だろう、アジトの中の再崩落が始まる。


「落ちるなよゼーヤ!!」

「はいぃぃ!!」


 その様子を眼下に見ながら、私とゼーヤは次々に飛んだ。


「これが最後だ!!」


 最後の岩盤に魔法をぶつけ、それがえぐれて接近してくる。


「せやああっ!!」


 気合の声でそれを斬り退け、土砂を払って岩に飛び乗った。

 それから更に跳躍し、穴から飛び出て風を感じる。

 遠くに見える眩しい太陽。眼下には山々が広がっている。

 私はそれらを目に入れながら、髪をなびかせて斜面に着地した。


「うおったった!!」


 少し遅れてゼーヤも着地。

 斜面で危うく転げかけたが、粘った後にそれに耐えきった。

 直後に穴から煙が上がり、空洞が完全に埋まった事を知る。


「そうだ。全く関係ないが、お前に便利な事を教えてやろう」


 それを見てからそう言うと、ゼーヤは「は?」と両目を細めた。


「魔法の裏技的な活用法だ。お前は暖かい湯に浸かるのは好きか?」


 心が少しだけ開いた証。私自身はそう推測する。

 しかしながら脈絡が無い為か。

「はぁ……」と言う、困惑した顔のゼーヤに気付き、私は小さな笑い声を発した。


一般的には湯浴みは手間なので、濡れた布等で拭いて終了です。

つまりゼーヤは教えられても…

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