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ポピュラリティゲーム  ~神々と人~  作者: 薔薇ハウス
三章 ゲンナマを求めて
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財宝の洞窟

旧ユーミルズ南部の地図です。いずれ上げると思いますが、ここの二つ上がヨゼル王国です。

挿絵(By みてみん)

 旧、ユーミルズ王国はヘール諸島の北に位置する山脈に囲まれた山国だった。

 俺が最初にやってきたラーク王国の東に位置し、ヨゼル王国の侵略に真っ先に晒された国でもあるらしい。


 ヨゼル王国の属国として、現在は統治が行き届いており、悲しいかな祖国が亡びたと言うのに、人々達の生活には変わる所が無かった。


「結局は王国の生き残りだけが、祖国の再興を夢見ているという訳か。

 例えば奪還の戦争を起こしたとして、彼らはそれを良しとするかな?

 迷惑だからやめてくれと殆どの者が思う事だろう。

 ……王女を連れて来なくて良かった。本当に私はそう思うよ」


 その様子を見たスラッシュが、そう言って水筒の中身を呷る。

 見るからに寂しそうな背中であったが、俺には何も言えなかった。


 その後に街を出て、郊外に行き、手に入れた食料を適当に口にする。


「あとどれくらいですか?」


 ユートにリンゴ(のようなもの)を渡しながらに聞くと、スラッシュは「もうすぐだよ」と振り向かずに答えた。


 そして再び水筒を一飲み。

 肩に担いだロープがズレて、「おっと」と言ってそれを直す。


「なんかお酒臭くない……?」


 直後にユートがそう言ったので、「まさか……」と思ってスラッシュの背を見た。

 言われてみれば少々酒臭い。だが、ここは言わば敵地だ。元は騎士団長をしていた人が、暢気に酒を飲むとは思えない。


「ほら、あれだ」


 疑っていると、スラッシュが立ち止まり、街道の右手の一部を指差した。

 その為に立ち止まってそちらを見ると、林の合間に滝が見える。

 道の先には橋があり、そこの下には川が流れている。

 どうやらその川の元となるのが、その滝がある滝壺らしかった。


 滝壺までは五百m程。滝の高さは二十m程か。


「目的地は滝壺の上にあるから、実はまだまだつけないんだがね。

 まぁ、とりあえず、あそこにあるという事で、場所だけは覚えておいてくれ」


 その言葉には「はい」と言い、頭を動かしてもう一度見る。

 あれくらいなら飛び上がれないか? と、思った事が原因だったが、俺が行けてもスラッシュが行けないので(多分)口にするのは止しておく。


 時間としては一時間程。

 それから更に街道を行き、遠回りをしてから滝の上に着く。

 ユートがリンゴを芯まで食べ終えて、「マジかよ……」と俺が呆れていた頃だ。


「さて、問題はここからなんだが」

「あ、はい」


 スラッシュの言葉で顔を向ける。

 そこは、川と滝との分かれ目で、目の前にはもう崖があり、眼下には林が広がっていた。

 川は俺達の左手で「ごうごう」と鳴って滝へと代わり、遙か下の滝壺に向けて、凄まじい勢いで降り注いでいる。


「具体的にはあの辺りに、少し凹んだ窪みがあるはずだ。

 その中にあるレバーを下ろすと、滝壺の中の扉が開く。

 若干危険な作業だが、君はどっちを希望する?」


 指さした先は崖の一部で、ここからの距離は二m程。

 生憎、そこは滝の中なので、レバーを下ろす者は容赦無い水流の直撃に晒されるだろう。

 一方のロープを支える者も、責任はかなり大きい所だ。


「ロープを調達した理由はこれですか……」


 苦笑いをしてそう言うと、スラッシュは「まぁね」と答えて笑った。


「で、どっちを希望する?」


 即ちレバーを引く方か、或いはロープを支える方かだ。


「じゃあレバーを引く方で……」


 命を預かるのは怖かったので、俺は責任の小さな方に逃げた。


「じゃあボクは横から応援する方で!」


 選択肢に無いがユートはそう言い、滝から離れた空中に逃げた。

 おそらく水に当たりたくないが故に、離れた位置から伺う気なのだ。

「何て奴だ…」と苦笑いをして、伸ばされたロープの端を持つ。

 それから両足を支えに降りて、目的の窪みを右手でまさぐった。


 頭と肩には激しい水流が。右手の先にはぬるぬるとした感触がある。

 どちらもあまり心地良くは無いので、俺は無言で顔を顰める。


「オトコの仕事ですなぁ。スンバラシ~です!」

「完全に他人事だよ!!」


 ユートの声にはそう返し、思い切って体を滝の中に入れた。


「あった!!」


 その甲斐あって棒のような物を発見。すぐにもそれを下へと動かす。

 ぬめりのせいで滑ってしまったが、二度目の再挑戦で何とか下ろせた。

 手がヌメヌメで気色が悪い。それにこれではロープが持てない。


「下ろしました!! 今から戻ります!!」


 やむを得ずに右手を洗いつつ、頭上に居るだろうスラッシュに告げた。


「あっ! おっ、お疲れさあぁっ!?」


 どういう訳か焦っているようだ。理由を知る為に顔を上げる。

 すると、スラッシュも片手でロープを持ち、右手で水筒を呷っていたのだ。

 そして、言葉の最中に、手を滑らせてロープを離し、結果として俺は空を仰ぎ見て滝壺の下へと落下するのである。


「しまったあああ!!?」

「ヒジリーーーー!?」


 スラッシュとユートの声が聞こえ、それが一気に遠退いて行く。

 が、俺もマジェスティの端くれ。

 空中でなんとか態勢を整え、滝壺の中へと綺麗に飛び込んだ。

 衝撃はそこそこ大きかったが、気を失うと言う程では無い。

 心の中では「十点だな」と、ナルりながらに水面へ向かう。


「ぷはあっ!!」


 顔を出して空を見上げると、落下して来ている丸太が見えた。


「あっ……」


 気付いた時にはもはや手遅れ。

 顔面にそれを受けた後に、俺の意識は途絶えたのである。




「ヒジリー! しっかりしてよヒジリー!!

 丸太を喰らって死んじゃうなんて、そんなマジェスティ聞いた事無いよー! 起きてよ起きてー! 目をさぁまぁしぃてぇぇ!!」


 息ができる。

 そしてうるさい。

 どうやら生きていると分かった時に、感じた事はまずそれだった。


 遮断されていた情報が戻り、滝壺の「ごうごう」という音が聞こえる。

 それに眩しい。

 運が良かったのか、仰向けで気を失ったらしい。


「うっ……」


 太陽の光が両目に入り、眩しさから逃れる為に両目を細める。


「いっ……てぇ!!」


 その際に強烈な痛みを感じ、俺は思わず声を発した。

 痛みの元は主に顔。目を動かすだけで顔中が痛い。

 例えるなら顔面筋肉痛か。こんな感覚は生まれて初だった。


「あぁぁ! 生きてた! 生きてたよ! 良かったヒジリ! 死んだかと思った!」


 ユートの声が頭上から聞こえる。

 というか、頭の裏辺りからだ。

 痛みに耐えて首を動かすと、俺を引っ張っているユートが見えた。

 襟首を掴んで必死に引っ張り、岸に上げようとしてくれている。

 だが、力が及ばずに、俺の首から上だけを水面に上げるのが精一杯のようだった。


「(運が良かったんじゃ無くて、助けてくれたのか……)」

「気付いたなら起きてよ! 腕筋が! 腕筋がとっくにオーバーキル!」


 そう思った直後にユートはそう言い、俺と共に水へと沈む。

 しかし、もはや意識はあるので、ユートを助けて水面に浮かび出た。


「ありがとう……助けてくれたんだな。ユートが居なかったら死んでたよ」

「イヤァ……ボクはヒジリの相棒だからね! なんてことないヨ! 腕痛いけど……」


 お礼を言うと、そう言って、腕を押さえて苦笑いをする。

 俺の方も顔が痛かったが、無理に付き合って苦笑いを見せた。


「ていうか顔、凄い事になってるよ。治癒魔法覚えたんだし使って見れば?」


 言われてみればそうだった。こういう時にこそ使うべきだろう。

 とりあえずは「ああ」と言葉を返し、使いたい、と、心で意識をしてみた。

 直後に痛みが緩くなり、ユートが目前で「うわぁ……」と言い出す。


「ど、どうしたんだ?」


 と聞くと、「蠢いてる……」と言う、謎の答えを俺に返した。

 気になる物の痛みは収まり、気にしないようにして岸へと上がる。

 しばらくするとスラッシュがやって来て、いの一番に「すまなかった!!」と謝罪した。


「いや、生きたんで良いですよもう……でも一つだけ質問良いですか?」


 落ちた事自体は問題は無い。問題があるならその後の丸太だ。

 それを落としたのがスラッシュなら殴るが、まさかそんな事はしないはずだ。

 スラッシュが質問に対して「あ、ああ」と言うので、「もしかして」と前置いて直球をぶつけた。


「水筒の中身ってお酒じゃないですか? なんかちょっと酒臭いって言うか、動きがどうも怪しいって言うか……」

「ああ……まぁ……推測の通りだ。

 ちょっと酒に浸りすぎてな……定期的に飲まないと落ち着かなくて……」


 回答はそれ。アル中である。

 それの進行度は兎も角として、多くの部下が居る立場の者がかかるべき病では無いはずである。

 故に、俺は「やめた方が良いですよ……」と、やんわりと彼を注意するのだ。

 余計な事だと分かって居るが、部下だと尚更に言い辛いだろう。

 レイラの為にもこの人にはしっかりして貰わないと困るのである。


「だ、大丈夫さ!

 そんな、アル中じゃないんだから、生活には何の支障も………

 無い事は無いだろうな……実際、君を落としてしまったし……」


 それで支障が無いと言われたら、俺も流石に憤慨しただろう。

 だが、聞いたスラッシュは自分で気付き、水筒を取り出して困ったような顔で眺めた。


「なんなのアル中って?」

「病気みたいなもんだと思う。良く知らないから予測だけどね」


 その様子を見たユートが聞いて、聞かれた俺が予測で答えた。


「あっ!」


 そんな中でスラッシュは、水筒の中身を「ぐいっ」と呷った。

 駄目だこりゃ……と一瞬思ったが、すぐにもそれを投げ捨てて、「これっきりだ」と呻くように言ったのである。

 決別、と言うのが相応しいだろうか、覚悟を感じる口調であった。

 元は隊長と言う立場の人だ。元来は意識が高い筈である。

 俺は素直にその言葉を信じ、注意して良かったとその後に思う。


「……それでは行こうか。ああそうそう。注意されたからという訳では無いが、私の方からもひとつ良いかな?」


 俺に対しても何かがあるらしい。

 何かと思って「はい……?」と言うと、口に手を当てて少々悩む。


「あー……」


 それからまずは一言を言い、


「何と言うのか、妄想……と言うのかな? 君も時折一人で喋ったり、誰かと話しをしている風な、おかしな動作をする事がある。

 見ていてあまり褒められた物じゃない。

 注意してくれた事には感謝をするつもりで、君にも逆に忠告をしておこう」


 ユートとのやりとりを指しているのだろう、それを妄想と断定した上で、スラッシュはすたすたと歩き出すのである。


「え!? ちょっと! それはスラッシュさんの誤解ですって!」


 言い訳をして追うも、「私もそうだった」と、スラッシュはなぜかの同類視線。


「一時期見えていた事がある。戦いで死んだ部下の顔がね。

 だが、幻覚だと分かって居たから、流石に話はしなかったよ」


 と、自分よりも酷いと間接的に言われた俺の心は複雑だった。

 しかし、証明する手段も無いので、仕方が無しに諦めて、スラッシュの背中を追うのである。


実はヒジリもそこに居ないと言う軽いホラーでこの話は終了(嘘)

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