対決!マジェスティVSキングカーメン!
「くっ!!」
俺達が先程まで立っていた場所は、カーメンのレーザーにより焼き払われた。
俺は右に飛び、それをかわし、カレルは左に飛んだ後に、武器から緑色の弾丸を撃ち出した。
カーメンの腹から顔に向け、それらは「ガンガン」と命中したが、カーメンはそれで一瞬も怯まず、頭部のバルカンを連射し続けた。
「あたしは出来るだけ注意を引くわ! あなたは結合部の魔導石を狙って!!」
左に走ってバルカンを避け、避けながらに撃ちつつカレルが言った。
それには俺は「はい!」と答え、槍を構えて反対に走る。
「くっ! 我ながら最高の出来ね!」
カレルはその間にも撃ちまくっていたが、カーメンの装甲の前では無力。
走りながらに武器を消し、今度はランチャーのようなモノを出した。
「でも! これなら少しくらいはッ!!」
一瞬立ち止まり、担いだ後に、カーメンの顔にそれを撃つ。
「カーメーン……」
不規則な動きで飛んだミサイルは、頭部に当たってカーメンを揺らがせた。
当然ながらバルカンは停止。
その間にもカレルは連射し、カーメンの顔周辺を煙に巻く。
「カレルさん怖っ! 動く武器庫だよ!」
「否定は出来ないな!」
ユートの言葉に苦笑して、カーメンの背後を目指して走る。
背中に飛び乗り、「核」となる魔導石を背後から貫く為であった。
が。
「なっ!?」
背中の六ヶ所の格納庫が開き、そこから六本のミサイルが放たれた。
まさに兵器。移動要塞。
元の世界でも見る事が出来なかった脅威の機動兵器と言える。
しかも追尾する機能があるらしく、不規則に動いて俺を追ってくる。
やむを得ないので更に走り、ミサイルを引き連れて砂漠を駆けた。
「うわうわうわうわ! やばいやばい! ヒイイイ!」
「耳元で喚くな!」
俺を追ったミサイルが地面の上で炸裂して行く。
それに怯んだユートが叫び、その声にやられた俺が叫んだ。
それでもユートの叫びは止まらず、五本目のミサイルが背後で炸裂。
俺達はそれの爆風に飛ばされ、砂漠の地面に顔から転んだ。
「くっ!!」
最後のミサイルが頭上に迫り、それをかわす為に宙に飛ぶ。
ミサイルはそのまま地面に激突し、激しい爆炎を周囲に散らした。
それと入れ替わるように宙に飛んだ俺には、尻尾の上部の対空砲が火を吹いた。
「先に下りろ!!」
ユートに指示して槍を出し、眼前で素早く回転させる。
間断無い金属音が響いた末に、何とか全ての弾を防いだ。
「駄目だ! これじゃ接近すら出来ない! ていうか新品の槍がもう!?!?」
着地した時には槍はボロボロ。気付けば体もかすり傷だらけだ。
槍が折れるのは時間の問題で、おそらく無理をしたせいだろうが、もしも鍛冶屋の腕だとしたら、損害賠償を求めるレベルだ。
「ミサイルきたああああ!!! 上! うえぇ!!」
「喚くなって!!」
更なる六本のミサイルが見えた。一体何本積んでいるのか。
ユートに言って走り出し、ミサイルの追尾を巧みにかわす。
「(凄いな、全然戦えるじゃないか……!)」
その際に視界に入ったカレル――
魔導砲二丁で奮闘していたのだが、それを見た俺が密かに思う。
経験が無いと言っていたが、なかなかどうして侮れない動きだ。
距離を取って戦えると言う事が、運動機能の上乗せと上手い具合に連動しているのだろう。
「そうか……これなら行けるかもしれない……!」
そして、それをヒントにして、一つの事を思いつく。
接近戦が出来ないのなら、遠距離で戦うしか術は無い。槍しか持たない俺には当然、槍で遠距離から戦うしか無かった。
「魔法力が持たないわ! そろそろお願い!!!」
言ってきたカレルに「はい!!」と言い、尻尾の更に後方に向かう。
その時にはレーザーが放たれたが、カレルはなんとかそれを回避。
砂漠の上を転がりながらに撃ち、立ち上がった後に走り出した。
「どうするのヒジリ?! まさか逃げるの!?」
ユートの言葉に「まさか!」と答え、ミサイルを引き摺ってそのまま走る。
「直接攻撃が出来ないのならッ!!!」
やがて、カーメンの真後ろに到着し、その声と共に宙に飛んだ。
ミサイルが眼下の砂漠で破裂し、当然のように砲火が向けられる。
その中で俺は槍を持ち変え、右手を引いて振りかぶった。
「この位置からでも! 貫くしかないッ!!」
そして、銃弾が飛び交う中で気合の声でそれを投げた。
目的の場所は結合部分。即ち「核」となる魔導石がある場所だ。
投げられた槍が直線に飛び、結合部分を「ガン!」と貫く。
ミサイルの発射口が開いたままになり、砲火が止まったのは直後の事だった。
「やったか!?」
危険なフラグであるが、着地と同時に俺はそう言った。
カレルを襲っていた攻撃も止まり、辺りに奇妙な静寂が訪れる。
「カー……メー……」
カーメンの言葉が途中で止まり、結合部分が破裂する。
直後にそれは体中に伝播し、操縦室から領主が飛び出した。
領主はそのまま砂漠に落下し、俺達と共に爆発を見守り、カーメンはついには腰から折れて、前のめりに倒れて大爆発を起こしたのだ。
「やれたんだな……」
「っぽいね! ナイッシュー!」
汗を拭って俺が言い、親指を立ててユートが言った。
危険なフラグにならなくて良かった……
そう思って俺は息を吐いた。
遠くではカレルも武器を消し、大きな大きなため息をついていた。
カーメンの暴走は領主のせいとなり、彼の私兵は散って行った。
その事により領主は撤退し、ゴルズリア領主との戦争は避けられた。
カレルの評価もなんとか回復し、俺達はタレンの街へと戻る。
そして、そこで俺はカレルから、自分の住んでいる街に来ないかと言う、誘いの提案を受けたのだった。
「か、勘違いはしないでよ! 一緒に住もうって話じゃないから!
……ただ、あたしが住んでいる街は、大陸のほぼ中央にあるお蔭で、色々な所の情報が集まるの。
恋人のナエミさん、その子の情報も、入手できる可能性は高いと思うわ。
だからその、帰るついでに? そこまで案内してあげようってだけよ……」
食事を終えたカレルが言って、不機嫌な顔でコーヒーを飲む。
聞かされた俺は「なるほど……」と言い、「どう思う?」と、右肩のユートに聞いてみた。
ユートは丁度、バナナ(のようなもの)を食べており、無理矢理に口を大きくしていた。
その為「ひーふぉふぉふぉふよ」と、理解不能な言葉を放ち、どう言ったのかは分からなかったが、俺は「そうか……」と言葉を返すのだ。
「それに、仕事もなんだってあるわよ。いつまでも女に奢らせるのは、ヒモみたいであなたも嫌でしょ?」
「そ、それは確かに……」
これは正直かなり堪えた。
評価が下がるんじゃないかとすら思う。
だが、ここでの食事代も、悲しいかなカレルのおごりであり、そこに焦りを覚えた俺は、そういう意味でも誘いを受けて、行った方が良いと考えを決めたのだ。
「じゃあ、すみませんけどお願いします。着くまでに色々教えて下さい」
「え、ええ……良いわよ。常識の範囲内でね……」
素直に言うと、どういう訳か、カレルは怯んで眼鏡を押し上げた。
或いは動揺したのかもしれないが、気にせずそれは流す事にした。
それから俺達は食事を終えて、準備を整えて目的地に向かう。
その途中で俺はカレルと話し、様々な事を教えて貰った。
「あたしが考えるにマジェスティって言うのは、大陸に十人と居ないと思うの。
でも、五人は居ると思う。
有名なのが鮮烈の青と呼ばれる、ヨゼル王国のレーヌ・レナス。
それに、あたしとあなたで三人。南東のヘール諸島を統治する、自称海王もそうだと言われてる。
それ以外に、四人程会った事があるけど、これは全員が死んじゃったみたいね」
それが一日目の野宿の時の事。
「面白いのが成長ツリーって、マジェスティ全員が共通みたいなの。
言語に魔法、特能に真実、それに略してモトセカね。
発展先も殆ど一緒。
ただ、最初に選んだ魔法によっては、多少の変化が見られるみたい。
魔法一で風魔法を選んだ場合は、特能のどこかが「風魔法耐性」に変わる。
あたしとあなた、それに昨日の、四人の話を総合した結果よ。
あ、ちなみにあたしは風魔法。あなたは何? えっ、火?」
これが二日目の野宿の時だ。
「良い? 駄目男でも腰抜けでもね、女は自分だけを好きでいてくれる男には、よっぽどじゃなけりゃ愛着を持つの。
だから自分に引け目を感じずに、出来る事を一生懸命やって欲しいのよ。
あたしが元居た世界にもね、ダメダメで腰抜けな助手が居たわ……
でも、最後にあたしを庇って、笑顔のままで死んでいった。
結局、あたしも死んじゃったけど、あいつの気持ちは絶対に忘れない。
もし、あの時に戻れるのなら、二人でなんとかして逃げ延びたいと思うわ……」
三日目のそれはこの世界とは、全く関係が無い事だったが、人生の先輩からの忠告として、俺は真摯に受け止めて置いた。
そして、四日目の夕方頃に、俺達はようやく目的地に着く。
街の名前はエイラスと言う、この大陸のほぼ中央に位置する、歴史を感じる古都であった。
この世界に居る期間は一番長いのですが、月に二~三Pしかとってないので、カレルはマジェスティ最弱です。
言語は現時点で極めているので、知識自体はあるのですがね…
まぁ、マイペースなお方ですよ。