Scene 8 〜グラの森〜
グラの森はオーク種やコボルト種、グレイウルフ等が徘徊するダンジョンだ。オーク種は力強く鈍重、コボルト種やグレイウルフは素早く鋭い攻撃をしてくる。幸いなのはここのモンスター達は種を超えて群れを作らないことだろうか。
「よし、そしたらどんどん狩っていきますか」
「実際狩るのは俺だけどな」
「違いない。でもPTだから同じようなもんさ」
比較的ハイオークが出現しやすい位置で俺たちは狩りを開始する。
ここは森のダンジョンボスの近く、オーク達の集落だ。
基本的にダンジョンボスがこちらに出向いてくることはないので、
集落で思う存分オーク種を狩ることができる。
アカネにBuffを掛けてもらい集落を探索していると、
向こうにハイオークが二匹いるのを発見した。
「右手にハイオークが二匹居るな。ロス、いけるか?」
「お前が早く倒して、アカネが回復してくれるなら何匹でもいけるさ」
「よし、そしたらタゲ取ってくれ、アカネも準備いいな?」
「いつでもいいよ!Buffもバッチリだしね。」
「よし!いくぞ!」
掛け声と共に俺たちはハイオークの元へ向かう。
「かかってこいよ!この豚共!〈挑発〉」
ロスの挑発スキルにハイオーク達が反応した。
挑発スキルは半径数メートルの円状のモンスターのタゲをとるスキルだ。
「ソラ!頼むぞ!即効でケリをつけてくれ!〈剛体〉」
ロスは防御力を上げるスキルを発動させ、ハイオークと正対する。
俺はすかさずハイオークの目に入らないように後方に移動した。
「任せとけ!〈チャージ〉」
俺は袈裟斬りのモーションを固定し、力を貯めるスキルを発動する。
1・・・2・・・3・・・今だ!!
「喰らぇええ!〈袈裟斬り〉もう一発!〈回転斬り〉」
力を十二分に溜めた袈裟斬りを向かって右側のハイオークの背中に放ち、続けざまに回転斬りをお見舞いする。大きく仰け反った右側のハイオークは堪らずこちらを向こうとし、しかしロスに阻まれる。
「おっと、行かせるかよ、
どこ見てんだ豚さんよ!〈挑発〉〈シールドバッシュ〉」
挑発と同時にシールドバッシュを放ち、こちらを向こうとしたハイオークは後頭部に重い一撃を喰らう。
ハイオークは憤怒の形相でロスの方に再び振り向いた。左のハイオークも右側のハイオークの状態を見て興奮し、ロスに攻撃を続ける。
「さすがだな!まず一匹貰った!〈八艘飛び〉〈横一閃〉」
ダメージを受け、さらに鈍重になったハイオークに向かいジャンプし、ハイオークの背中を蹴りながら八艘飛びを発動。八艘飛びは通常のジャンプに加え、何らかのオブジェクトを土台に更にジャンプを行なう事で発動するスキルだ。通常のジャンプよりも大きく高度や飛距離を稼ぐことができる。
そして、離れゆくハイオークの首元をめがけ、横一文字に剣を振る。
ハイオークの首元に入った斬撃は、クリティカルダメージとなり、ハイオークはポリゴン片となった。
残ったハイオークはロスに攻撃を加えており、時折アカネがロスを回復している。
「残り一匹になったし、さっさと終わらせるか。〈シールドスタン〉」
シールドバッシュの場合、相手の攻撃に合わせて虚を突くように当てれば相手はスタンする。
それに比べシールドスタンは確実にスタンを発生させる事ができる。
ちなみにモーションは単純なシールドによる突撃ではなく、持ち上げたシールドを振りおろし、シールドの下部を使って地面とシールドで敵をサンドイッチする。そのモーション上当てるのが非常に難しく、小型の敵等には特に当てづらい。今回のハイオークの場合、足をサンドイッチされた形になる。その痛さは想像に難くない。スタンも無理は無いな。
「それ痛そうだよな・・・まぁ容赦はしないけど!〈八艘飛び〉〈横一閃〉
よっと!〈斬岩剣〉」
先程と同様に八艘飛びから首元を狙い、着地と同時に斬岩剣を放つ。
残ったハイオークは為す術もなくポリゴン片となる。
「終わったな。この調子だと大分安定して狩りできそうだな」
ロスの終了の言葉と共に、俺達は体を休めた。
「そだねー。やっぱり構成が安定すると楽かも。
攻撃できないのがちょっとさびしいけど」
「ハイオークだと万が一アカネが攻撃食らうと危ないしな。
そこは勘弁してくれよ」
「うん。我慢するよ。心配してくれてありがとうソラ!」
「俺も心配だよ、アカネが元気なのは分かるけど、
もうすこしお淑やかに・・・」
「ロスはまたそんなコト言って!回復してあげないよ?」
「ハハハ、そりゃ困るな」
よし、この調子だと、ロスの言うとおり、安定して狩りが出来そうだ。
依頼分のオークの証も早めに集まるだろう。次の獲物はどこかなっと・・・
「助けてくれぇえええええええええええ!!!!!」
突如、叫び声が森の中に響いた。