めたもる
「あ、そういえば。めぐは、わたしの本当の姿を
見てないんだわ。」と、気付く。
「そうだね、でも、別にいいんじゃない?」と
ルーフィは、魔法使いにしてはアバウトだ。
お話で読んだ魔法使いって、なんとなく
しきたりに厳しかったりするんだけど。
「それは、お話の世界。現実とは違うのさ。」って
ルーフィは、楽しそう。
まあ、もとに戻してもいいけど、って
ハミングしながら、すう、と指を上下に振ると
わたしは、ハイスクールの制服姿から
普段のわたしに戻った。
カウンターの向こうにいためぐ、は
たまたま、お客さんがいなかったので
わたしのメタモルフォーゼ(2w)を見て
「かぁーっこいい!どうやったの?」と。
「うん、これはね、変身の術なの。」って、ちょっと
ユーモラスにそう言うと、めぐは
「あたしもなりたいなー、そんなふうに。メタモルフォーゼしたーい。」って(3w)。
かわいいっぽいけど、ほんとにハイスクールの子かなぁ(4w)
なんて、思ったけど。
わたしも、ひょっとするとこんなだったかもしれないって
思い返した。
毎日、学校へ行って、家に戻って。
時々バイトして。
本ばっかり読んでて、未来を夢見てたっけ。
女子校だったから、ロマンスもなくって。
....あ。....。だからかなぁ、わたしと出逢っためぐが
愛おしい、なんて思ったの。
恋したい、って気持ちを持ってる
めぐ、が
可愛らしいと思ったのって
自分に似てるから、なんだわ....。
「あ、でも。」わたしはふと思った。
今のメタモルフォーゼ(w)で、もとの姿に戻ったのに
めぐは、なんにも気づいていないみたい。
カウンターに行って、聞いてみた。
「あ、ほとんどいっしょですよぉー。」と、めぐは
かわいらしく笑顔で。
そっか。
ハイスクールの頃と、今のわたしって
そんなに変わらないんだ....。
「うん、だって、2年くらいだと
そんなにかわらないよね。」と、ルーフィはにこにこ。
わたし自身が思っているほど、老化(4w)は
周りのひとには分からないらしい。
「でも、めぐはあんなに元気で。あれって、ハイスクールの頃のわたし、でしょ?ねぇ、ルーフィ。」
「うん、それはホラ、ここは次元がずれているから。
彼女はそのまま、君の過去の姿じゃないもの。」と、ルーフィ。
そういえば、なんとなく性格も違うような...(2w)。
カウンターで、図書の貸し出しをしているめぐ、を
遠くから見ていると
それが、わたし....なのかな、と
そう思えば、そう見えるかもしれない。
少し、感じは違うけど。
めぐは、一生懸命だ。
重い本、事典のようなそんな返却本を
カートに乗せて。
分別して、もとの本棚に返す。
学校の図書室だったら、借りた人が返しておくのに。
わたしは、そんな風にちょっと思った。
公共の図書館でも、図書カードを返却したら
本は、借りた人が元に戻す、そういう図書館の方が多い。
この町の図書館は、サービスがいい、のかな....。
そんな風にも思ったり。
でも、そんな事を思いもしないで、ハイスクールの頃は
本に触れている仕事、それを楽しみに
アルバイトに通っていたっけ。
それが慣れ、なのかなー。
「うん。あたりまえ、って幸せだよね。もっと楽ならいいのに、とか
あたりまえを不しあわせ、って思う心に、悪魔が憑くんじゃない?」と
ルーフィは、あたまの上で手のひらを、ひらひら(笑)。
思わず、天を仰いだけど。
悪魔くんはいなかった(w)。
「ま、そんなものかもしれないけど。ふつう、誰だって不平って感じるもの。
そのくらいじゃあ悪魔くんは来ない、かな?」って
ルーフィは、にっこり、Wink。
そうしてる間にも、重たい本をぎっしり詰めたカートを押して
めぐ、は
図書返却の仕事に回った。
あっちこっちの書架を回ってるので、時間が掛かる。
そう、思い出した。
最初に、書架の順番に整理しておけば、早く終わるんだった。
図書館の本って、番号順になっているから。