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魔法使いルーフィと時間旅行記者  作者: 深町珠
めぐ:3年前の異世界のわたし
50/1813

墜落

エレベータを5階で降りて、めぐは

営業を終えて、灯りが消えている喫茶室、

いつか、子供が落ちそうになって

トラブルになった、あのテラスの入り口を見た。

鍵はしっかり掛かっている。



もしかして、と思って来たけれど。



死、をイメージする本を読んでいたりして

気になって。



ここにいない、ってことは....屋上?!



屋上は、ふつう

昇れないように、ドアに鍵が掛かっている。




でも、もしかしたら。


エレベータ・ホールの隣の階段に戻って

屋上への階段にある、柵を見ると

動かされて、隙間が空いていた。



時々、図書館の職員さんが

屋上点検や、煙草を吸ったりするときに

あけたりするから....。



と、めぐは思って、不吉な予想を打ち消そうとした。




階段を駆け上り、屋上への鉄の扉を開いた。

無骨なオリーブの塗装だけの扉、ステンレスの鍵は

捻れば開く。



-開いてる。-



なんとなく、怖い。



扉を開いて、屋上、まわりにあるフェンスを見回した。



遠くのお山は、すこし日暮れに近づいて

あかね色に染まり始めている。




その、山を見上げている後ろ姿を見つけ.....めぐは


「あの!」と声を上げると


さっきの人、リクルート・スーツのひとは

びっくりして振り向いて。



「カード、お忘れ物です」と、めぐは


それでもこわばった声で、言った。



ちょっと、怖かったのだ。






「いいんです、それ、もういらない」と、

リクルート・スーツの人は振り返って、山に向かって

屋上を駆けだした。


柵を乗り越えて、飛び降りるつもり?




「だめ!」と、めぐは

たちすくむ。



不思議だけど、そんな時

動けないこと、ってある。




「そんなことしちゃ、いけない!}と、めぐは叫ぶ。








リクルート・スーツは、柵に駆けより

乗り越えようとした、その時。




何者かが押さえたかのように

右足が止まり。


つまづいたみたいになって、柵にぶつかって倒れた(^.^;)




呆然。



なにがおきたかわからないけど


めぐは、なんとなく笑ってしまった。


「ごめんなさい」と、いいながらも


その動きがコミカルで。




リクルートスーツの人も、おでこを

ステンレスのフェンスにぶつけて、痛かったのと


ドジな動きで、照れ笑い。










「ありがとう、わたし、ほんとうに。」

飛び降りるところだった、と

リクルート・スーツの女の子は言った。



めぐは、いいえ、と、かぶりを振りながら


でもまだ、少しくすくす笑っていた。




「就職が、うまくいかなくって.....。」と、リクルートスーツ姿の理由も彼女は告げた。


このところの不況で、学校は卒業しても

就職ができなかった、と。



「大変なんですね...わたしも、いずれは」と、めぐは

ハイスクールに行きながら、図書館でバイトしてるのは

司書になりたいから、だと


そんな風に告げた。




「いいわね、あなたは...もう、進路が見つかって。」と

その人は俯いて、コンクリートの屋上を見つめながら。



「いいえ、図書館のアルバイトもいつまで続くか...

それに、学生でなくなったらアルバイトだけ、と言うのも...。」と、めぐは、そう言った。




「そっか....。」と、リクルート・スーツの襟を

気にしながら、その人は視線を上げた。




「あなたも頑張ってるのね。わたし、少し驕ってたの。

たぶん。でも、それじゃだめだって、今思った。

なんでもして、生きていこう。よし。」と


きっぱりとした口調で、その人は空を見上げた。



めぐ、も

にっこり。


背中の天使さんも、にこにこ。




でも、不思議なのは


彼女の足を引き留めたのは、誰.....?





あの時、子供が5階のテラスから落ちそうになった時と

同じ...。










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