正直な気持
「ルーフィのご主人様って、そんなにすごい人なの?」
と、わたしは驚きを隠せなかった。
そういえば、絶海の古城に一人で篭っていて
長く、眠りについたまま。
そんな魔法を自ら掛けられる人、は
かなりの魔力を持っているのだろう。
「ご主人様は、来てくれるかしら。」と
わたしはちょっと心配した。
「そっか....。じゃ、とりあえず
魔王に手紙でも書いてみるか。」と
ルーフィは軽く言ったので、
わたしは、サンダルのまま転びそうになった(w)。
でも、めぐの時とちがって
ルーフィはわたしの肩を支えたので
ボインタッチ事故(2w)は、なかった。
「なーによぉ、ルーフィ、やっぱ、めぐのバスと、
わざとさわったんでしょう!」と、わたし。
「違うちがう、キミの方が背が高いし。
僕のそばにいたから」と、ルーフィは自己弁護する(w)
そのくらい、真面目に戦ってよ、ヒーロー(笑)。
めぐの学校が終わるくらいの時間になったので
わたしたちは、図書館に行った。
何もかわっていないような、第一図書室のカウンターで
めぐは、にこやかに貸し出し係をしていた。
わたしたちの姿を見つけて、にっこりと目礼。
言葉を交わさないのは、静かにしなくてはいけない
図書館だから。
それもあるけど、「ルーフィが好き」なんて
わたしに言っちゃって。
それで、ルーフィも一緒だもん。
ちょっと、ぎこちないよね、それは。
さらりの前髪に隠れた瞳は、ちょっと熱っぽく潤んでるみたい。
ほっぺも赤くて、かわいらしい。
うーん、強敵め(5w)。
吹き抜けのホールから、斜めのお日さまが射しこんで
ステンドグラスがきれい。
図書館っていいな、なんとなく好き。
インクの匂いとか、おちついた雰囲気とか。
カウンターに並んでいるひとに、見覚えのある後姿を見かけた。
あの、イライラおじさんだった。
よーく、集中してみると
頭の上に、悪魔くんの駆け出しくん(w)が
憑こうかなー、なんて、ゆらゆらしてるのが見えた。
ルーフィは、いつかの茶色の小瓶を出して
ひょい、とコルク栓を開けて
幽霊みたいな悪魔くんを、吸い込んだ。
そのまま、3階のシアターへ。
吹き抜けにある階段で昇って
開いていた小ホールに入った。
入り口のドアを閉じ、空中に魔方陣を書いて
その真ん中に、サンスクリット文字のような
メッセージらしきものを書いた。
それから、茶色の小瓶の栓を抜き
「こいつを、魔王に届けてくれ」と、ひとこと。
幽霊みたいな悪魔くんは、おばあちゃんの言葉の後だと
不気味ではあるけれど、怖い、とは感じなかった。
「お手紙?」と、わたしが尋ねると
ルーフィは「うん」と言って....。
「なーんとなく、予感だけど。
めぐちゃんに天使さんが宿ったのって、偶然なのかなぁ....。」
と、ちょっと気になる事を、彼は述べて
コルク栓を閉じた。
そのあとは、何も起こらずに
めぐのアルバイトは、順調に進んだ。
わたしたちが3階に来たので、めぐ、も
3階の音楽ルームに来て、CDやDVDを整理した。
手際よく分類ができるのは、図書と違って
コード番号が無くて、アーチスト名の順番で
並べられてるから。
誰にでも分かるアルファベットだから、簡単に
並べ替えが出来るの。
本だって、そんなに厳密じゃなくって
だいたい、分類で書架が決まるけど
その後は、著者名・本の題名で並べる。
分類コードを暗記しちゃえばいいのだけど
それは、なかなか難しい。
書架と、分類コードが一致してればね...。と
わたしは、前からそう思っていたけど
なかなか、蔵書の数と書架の分類が合わないし
良く、貸し出される本は、低書架と言って
入り口に近いところに置かれるのが普通。
「本も、見出しを書架に貼っておけばいいのにね。
イライラおじさんもひと目で分かるように」と、わたしが言うと
「あ、そうですね!こんど、作ってみますー。」と、めぐ。
そんな時は元気なんだけど、ちょっと表情は沈みがち....。
わたしは、ちょっと気になった。
ルーフィを好き、って思う気持ちは、たぶん、めぐ本人の気持ちだと
思うけど....。
宿ってる天使さんは、どう感じてるのだろう。
魔法使い、って
魔界に近いひと、に恋する、のを....。
恋って理屈じゃない。
だから、心配してもしょうがないけど、さ....。
どんかん魔法使いさんが、気を使って
あげるといいんだけどなー。
でも、わたしが居るとそうもできないか、と思って
わたしは、ちょっと、CDを聞きたい、とか言って
アーマッド・ジャマールの「Wish Upon a star」とかを
見かけたので、それを持って
ひとり用カプセルで、音楽を聴くふりをして
席を外した。
めぐが、壁一面に並んでいるCDラックに
カートから、CDを並べていく。
ばらばらになっていたCDを、最初にアルファベット順にして。
そうすると楽だ、と
覚えたみたい。
ひと気の少ないウィークディの図書館、視聴覚ルームは
格別、静かだ。
ひとの流れが途切れた。
ルーフィは、ミニシアターで上映されている
アニメ映画(笑)をひとりで見てくるって
とっとこ、ミニシアターへ。
10人くらいしか入れない、小部屋が
このフロアにいくつもあり、そのひとつへ。
CDの整理をしていた、めぐは
手を止めて、その、ルーフィのいる
部屋、へ....。
わたしは、ちょっと気になったけど。
でも、ふたりっきりで話す機会を作ったんだから、と
見守る事にした。
少しして、めぐが部屋から出てきた。
遠くて、表情はわからないけど
特に、変わった様子もない。
わたしは、やっぱり気になって(笑)
カプセルから出た。
アーマッド・ジャマールが「Dejavu」を
弾いていた。
ミニ・シアターの防音ドアを開けると
大きな音で、「トムとジェリー」の吹き替え盤を
ルーフィはひとりで見て、笑っていた。
?(2w)
わたしに気づいて、ルーフィは「あ、ああ、これおもしろいね。」
「さっき、めぐちゃん来たでしょ。何話したの?」と、わたし。
ルーフィは、画面を見たまま「うん、好きだって言われた。」
ちょっと、想像してたけど「それで?」と、わたしは
ちょっとイライラした(笑)
悪魔くんが憑いたのかしら。こんな時の女って悪魔にもなるかも(笑)。
「それでって?」と、ルーフィは
わたしの方を見た。
ちょっと、シーリアスな顔だったので、そのことに
わたしは安堵した。
真面目に考えてあげてたのね。
「めぐへの答え。」って、焦燥感に駆られて、わたし。
少し声が大きかったけど、トムとジェリーが大きな音だったから
良かった。
外に聞こえなくて。
「そんな事、決められないもの....。めぐちゃんは、かわいいけど。
キミの3年前、だし。こんなヘンテコな恋って、方程式なんて無いよ。
だから....。」
「だから?」
「めぐちゃんを大切に、思ってるよ、でも、もうひとりのね、Megも
大切さ。だって、同じ人なんだもん。」って、そう言ったとルーフィ。
「.....。」わたしも、返す言葉が見つからなかった。
こういうお話、聞いたことないもの(笑)。
「それに、いつか、僕らは帰らなくちゃいけない、って
お屋根で話してたのを、めぐちゃんは知ってたみたいで。
それでも、好きって気持ちはどうしようもなかったんだろうな。」
って、ルーフィは少し、複雑な気持を告げた。




