善悪・基準
おばあちゃんは、かわらない、おだやかな語り口で
「ヨーグルトもね、クワスもね。
細菌が、牛乳やお砂糖を食べて
酸や、炭酸を作るのね。
それが、人間が食べて平気だから
重宝されているのね。
ヨーグルトを作る時に、入れ物を殺菌、するのね。
腐ってしまうから。
それで、ヨーグルトの菌を入れる。
おもしろいわね、どちらも細菌なのに...。」と
おばあちゃんは、意外に客観的で
ルーフィみたいな、科学者っぽい事を言った。
「はい、生物ですね、どちらも。」と、ルーフィは言った。
おばあちゃんは、頷いて
「そう。ひとに悪魔くんが憑く、と言うのと
天使さんが宿る、と言うのと
似てるわね....。それが、ひとにとって
良いか、そうでないか。
それだけ。
天使さんも、悪魔くんも
生きるために、そうしているのね。」と、
おばあちゃんは、ふんわりと、そんなことを言った。
「悪魔くんは、ひとのエネルギーを食べている、って...。」
わたしは、事実を反芻した。
している事が、人間にとって良くないと言うだけで
魔界では、それが普通なこと、なんでしょうね...。
「そう、ひとの良くないエネルギーを食べてくれるだけなら
いいのね。
そのために、ひとを争わせるのは、良くない事だけど。」と
おばあちゃんは、そう言って
「でも、それを止めさせるのは、難しいの。
人間も、争うのがもともと好きな人もいるのね。
そういう人に憑いて、エネルギーを食べるだけにして、と
願っているんだけど....。」と、おばあちゃんは言う。
不思議に達観した言葉。
魔界と天界に通じているような経験から来ていて。
おばあちゃん、は....。お使い様なのかしら。
神様の。
「お隣町に住む、気術使いの方もね、
東洋からいらして、この世界を守ろうと
なさっているの。」と、おばあちゃんは
わたしとルーフィが、昨日会ってきた
あの人の事、を言った。
「....それで、めぐちゃんにも天使さんが....。」と、ルーフィがつぶやく。
おばあちゃんは、黙っていたけれど....。そうなんだろう。
たぶん、わたしが
過去に呼ばれたような気がして、いつものカフェテラスから
飛ばされてきてしまったのも、偶然じゃなかった、のね...。
「ルーフィさん」と、おばあちゃんは彼の名を呼び
「はい」と、彼は答える。
「あなたは、魔法使いだから、魔界の人にも通用する
魔力を持っているわ。
魔界を司る者に、いまの、わたしたちの意思を
伝えてほしいの。
わたしたちは、魔界の人と直接会う事ができないから...。」
「...それで、彼らはわかってくれるでしょうか?」と、ルーフィは
真面目な表情で。
おばあちゃんは、すこし考えて「わたしにも、それは分からないわ。
でも、魔界を司る人は、天界を司る者と
同じくらい、魔界を大切に思ってるはず。
これまで長い間、3つの世界が蟠りなかったのは
彼らのおかげ、だもの。
今、どうしてこの世界が乱れてるのか....。それだけでも、分かれば。」
と、重い命題をルーフィに伝えた。
おばあちゃんの小屋から戻る、畑の中でルーフィは
「どーしよっかなー。」なんて
いつもの、軽い感じに戻って(笑)。
わたしは、ちょっとずっこけて(2w)
「なーによ、ヒーローみたいでかっこいいかと思えばぁ」と
ルーフィに向き直って。
見上げたルーフィの顔は、ちょっと緊張っぽい。
「ルーフィ?」疑問をわたしは感じる。
「...うん...。魔界を司る、って。魔王じゃない。
東洋で言えば閻魔大王だよね。
そんな人のところなんて、行きたくないよ。
帰ってこれないかもしれないし。」と、
ルーフィにしては、弱気な言葉が聞こえた。
「僕のご主人様なら、別だけど......。」




