夢・現実
「でも」ルーフィは言葉を断ち、ふたたび語った。
「薬で治らないような、苦しみもあるさ。そういうのは
魔法でもどうしようもないから、悪魔くんに憑かれると....。
最後は、魔界に落ちるしかない。」と、厳しい現実を語った。
「どうしようもないの...?。」
「そうだね...。その人が生まれる前に遡って、苦しみの原因を
断ち切れれば別だけど.....。あ、そうか!僕らはタイム・トラベラーだから。
原因を調べれば、運命は変えられるかもしれない。」と、ルーフィは
名案に、心を躍らせた。
「何か、理由があるんだ。それを直せば。」と、追記するように
言葉をつないだ。
「過去を変えてはいけないってのは、もちろん
タイム・トラベルの原則だけど、それは、同じ時間軸に
存在している場合。
僕らは別の時間軸から来ているから、大丈夫さ。」
「悪魔くんたちは、魔界の仲間が増えるのを
喜んでるのかしら。」と、わたしは、なんとなく。
「そうでもないと思うよ、人間界に出てくるってのは
魔界が狭くて、住み難いからだと思うし。」と、ルーフィは
近年魔界住宅事情(2w)について語った。
魔界のエンゲル係数も、高いのね。
人間界とあんまり変わらないわ.....。
そろそろ、お昼も過ぎたので
何か、ステキなレストランで...と、思って
町をお散歩。
何か、「デートみたいね。」と、なんとなくつぶやくと
ルーフィは、ちょっとテレて
「そういえば、ふつうにデート、ってしたことなかったね。」
それはそうよ。だって、わたしたちの世界では
ルーフィは、姿を見られちゃいけないんだもの。
ここは異世界だから、それがかえって
わたしにとっては嬉しい。
もとの世界に戻ったら、また、ルーフィは
ぬいぐるみの姿でないと、外には出られない。
それに、めぐもかわいいしー。
こっちの世界で生きていくのも、いいかも。
そんなことを思ってると、ほんとに戻れなくなりそうなので(2w)
考えないようにした。
また、ケーブルカーに乗って坂を下る。でも
こんどは、無賃乗車(w)の、ルールが分かったから
走り出したケーブルカーの、デッキに飛び乗った。
「それっ!」 「きゃ!」
「スリルあって楽しい。サンフランシスコに行ったら
また、同じことしてみたいわ」なーんて、わたしは
のんきな事を言った。
戻れるかどうかも、わからないのに....。
駅の少し前、かわいいカフェがあったので
ちょっと、飛び降りてみた。
停留所でもないのに、自由に乗り降りできるって
けっこう便利ね。
カフェは、明るい色使いの内装で
昼下がりのお店は、空いていた。
「かるーく、いきましょか」と、わたし。
「いっつも軽いじゃん」と、ルーフィもアメリカン・ボーイみたいに
軽快。
ケーブルカーから飛び降りるくらいで、かるーくなれるのも
不思議。
ちょっと暑いくらいだったから、インディア・アイス・ティーを頼んだりして。
それで、フランスパンのホット・ドッグ。
パリに行くと、いつも頂くけど
ここにもあったので、頼んでみる。
ふつうのバゲットに切れ目を入れて、オーブンで焼いて。
大きなフランクフルト・ソーセージを鉄板で焼いて。
挟んで食べるだけ、のお料理だけど
お肉の美味しさを楽しむ、シンプルだから
それがいちばん。
冬向きのメニュゥだけど、夏でもなかなか....。
ルーフィは、魔法使いなのに
熱々のホット・ドッグを喜んでいて
おいしそうに食べている姿を見るだけでも、なんか、しあわせ。
ほんとは、毎日、まいにち、まーいにち。
美味しいものを作って、あげたいんだけどなー。
そんな事を空想していると、ちょっと気になった。
ここは、フランスでもないのに。
なんで、サンジェルマンのホット・ドックがあるのだろう?
それも、フランスパンで作るのって、わたしの空想を
形にしたみたい.....。
そういえば。
めぐ、は、お姉さんが欲しかった、って言ってて
わたしに出会ったり。
コスメを作ってる魔法使いの話を空想してたら
隣町に(気術使いさんだけど)そんな人がいたり....。
「偶然にしては、不思議ね。」と、わたしは思った。
ルーフィは、ちょっと考えて「異世界、だから、ここは。
思ったイメージって、別次元だね、僕らにとっては。
形を変えて、歪んだ時空が時折現れるのかもしれない。」
サンフランシスコのケーブルカーみたいなのが、走っていたり。
...もし、そうだとしたら。
この町の空間そのものが、わたしの空想とつながっているのかもしれない.....。
ちょっと、推理としては大胆。
だけど、それなら....。
帰ることも、できるかもしれない。
でも、今は。
めぐ、と
この世界を、なんとかしてあげなくっちゃ。
もし、わたしたちが。
みんなで、悪魔くんが来ない世界、をイメージできれば。
ひょっとすると、この世界にそれが実現できるかもしれない....。
そんなことを思った。
どうやってイメージを共有するのかはわからないけど。
「そのお話は、案外当たってるかもしれないね。イメージの中と
現実が同じじゃない、って事に怒るひと、ってのは
イメージの中にいるって自分が思い込んでいる。
ほら、図書館で本が見つからないって、怒ってた人とか。
本がスムーズに見つかって、帰るってもうイメージの中に生きてしまって
現実が見えてないんだもの。
僕らは、ここに居るけれど、願ったイメージが
なぜか、時々出てきてしまっている...。反対だね。彼と。」
「どうして、反対になってしまうのかしら....。」と、素朴に疑問(2w)
「たぶん、あの、図書館で本を探してた人で言えばさ...。
見つかる、ってイメージを願ってなくて、ただ、セカセカしてたから
じゃないかなぁ。なので、この世界でもイメージになってないものは
実現しない。」と、ルーフィはおもしろい想像をした。
なるほど....。心に、浮かんでいれば。
それが現れるかもしれない世界。
もし、そうだとすると、わたしは
めぐ、の願いでこの世界に呼ばれたのかしら....。
「そうかもしれないね。でも、元の世界から『過去に戻ってみたい』って
なんとなく思ったのは君だから。たまたま、ここに来たから
歪んだ時空同士がつながった、んじゃないかな」と、ルーフィは
のんびりとした偶然、だと考えた。
それも、帰るための手がかりになりそうね....。
わたしは、ホットドッグを食べ終わると
インディア・アイス・ティーを楽しんで。
そろそろ、めぐが
学校から帰って来て。
また、図書館に行く頃かしら.....。




