東洋気術
丘へ登る途中で、大抵人が降りるから
重さが足りなくなって、登れないって事には
ならないらしい。
そういう、のどかな乗り物だから
ゆっくり、ゆっくりと
レールを踏みしめるように登っていく。
ルーフィが気にしていたケーブルは
レールの間にあるので、自動車が踏んでも
ケーブルには触れない、そういう仕組みになっているらしい。
男の子って、そういうところを気にするのね。
面白いな、って。
わたしは思う。
魔法を作り出したり、科学的に解析したり。
そういうのも、男の子の気持ちが
そうさせるのかしら.....。
頂上で、ケーブルカーはゆっくりと止まった。
ブレーキは、運転手さんがレールにブレーキの
鉄片を、ネジ式のハンドルを回して押して、停めていた。
どのみち、頂上まで行けば人が降りるので止まるんだけど。
そんな感じなので、飛び乗って、飛び降りて。
そういう人は、料金はいらないらしい。
「のんびりできたねー。」と、ルーフィ。
「わたしたちの町にも、ケーブルカー、ってあったかなぁ?」と
わたしは、重要なことに気づいた。
長く住んでいるけれど、ケーブルカーに乗った事って無かった。
もっとも、隣町に行く事ってあんまりなくって。
遠くに取材にいっちゃうし(笑)。
「まあ、ここは君の過去に似てて、非なる空間なんだね、たぶん」と、ルーフィ。
わたしたちの探す、魔法使いさんの居るお店が
ありそうな、そういう雰囲気の場所はなかった。
なーんとなく、イメージだと
昼間でも暗いような、林の中で。
ふるーい小屋か何かで、黒猫が住んでて...。みたいな。
「それは、マンガっぽいけど。でも、なんとなく....。」ルーフィにも、気配が
感じられない、って。
魔法使い同士、気配で分かるらしい。
交番があったので、おまわりさんに聞いてみると
次の角の、スーパーマーケットの入っているビルの2階で
ドラッグストアと、コスメとか、カラコンとかを売ってるらしい(3w)
「へぇ。それはまた、お仕事熱心な...。」と、ルーフィ。
坂を少し下ったところにある、そのスーパーマーケットは
明るくて、賑やかで。
魔法、なんていう
ちょっとダークなイメージには程遠い。
「こんなところに居るのかなぁ」と、わたしは思いながら
100円ショップの中にあるエスカレータを登り、ルーフィと一緒に
その、ドラッグストアに入った。
そこも賑やかで、スーパーと同じ音楽が掛かっている。
ちょっと、2階にしては暗い感じもしたけれど。
若い女の子向きなコスメや、カラコンとか、小物。
お菓子や薬。
そんなものがいっぱい、ジャングルみたいに並んでいるので
暗く感じたみたいだけど、窓が小さいわけでもなかった。
ただ、それら全てが
手作りで作られているようで、これはかなり
大変な仕事、って思えた。
「全部、手作りなら.......。」と、わたしがつぶやくと、
「たぶん、魔法.....かな。」と、ルーフィもつぶやいた。
どんな人が作ってるのかしら?と、わたしたちは
それに興味を持って、薬品の硝子ケースがある
ドラッグストアーに居る、店員さんらしい、若い女性に
尋ねてみた。
すると......。
その若い女性は、東洋人っぽい顔立ちだけども
すらりと背が高く、さっぱりとした表情のひと。
白衣を羽織っていて。ニットのざっくりとしたサマーセーターに
短めのスカート。
ローヒール。
活動的な人だな、と思った。
「ぜんぶ、私が作っています。店員はいません。」と。
その人はそう言った。
愛想を使うような人ではないけれど、素朴な温かみが感じられる
表情だった。
「そうですか...。ありがとう。」と、ルーフィは礼を述べて
それだけでエスカレータを降りた。
「どうしたの...ルーフィ?」と、呆気なく
帰路に付こうとするルーフィが気がかりで。
「うん、あの人は...魔法使いじゃないみたいだね。気配が感じられない。
東洋の人みたいだから、アジアに古くから伝わる...気術のひとかもしれない。」
と、ルーフィは言い「でも、魔界の人とも関わりは無さそうだ、悪魔くんの気配が
しなかった。」とも。
ルーフィの話では、西洋の天界には神様が居て、魔界があって。
東洋には、それとは違う世界があって。
仏様が天界に居て、魔界には閻魔様が居て。
気術の人は、天界に近い存在であるらしい、との事。
「へーぇ」わたしは(1へぇw)
「でもそれは、東洋からの見方、西洋の見方、って言う違いだけで
同じ世界を見ている、って言われてたりもするんだけど。
言葉の違いだけで、世界感は同じだし。でも、本物を見たのは
僕もはじめてさ」と、ルーフィ。
じゃあ、あのひとは.....。
「ひょっとすると、君の想像みたいに。
女の子を可愛く彩ったり、病気の人を薬で癒したり。
そんなことで、悪魔くんが憑かないようにしてるの、かもね。」
と、ルーフィは、にっこりとして。
こっちの町で、いい人に会えてよかったわ...。そんな風に、わたしは思った。




