魔物の畏怖
映画作家くんの心が変わったのは、神様が
魔物の居た時代まで時間を逆転させ、無き物としたから、
つまり、人々の過大な欲と悪意を無くしたから、であろう。
それまでのめぐ、は
臆病なところがある、おとなしい少女であり
活発で生き生きとした彼女を愛せない、それは彼の嗜好である。
めぐを従順な子、だと思って恋したのかもしれないが
本質は何も変わっていない、見た目と行動が変わっただけ、だ。
また、映画作家くんも
従順な子を好む、即ち異性親が抑圧的であったので
恋人はそうでない人が良い(笑)と思っていたのかもしれない。
ふつう、母親が子に対して抑圧的に接するのは
多くの場合が過剰な心配、つまり
それまでの母親の人生に不安が多かった経験から、である。
限りなく広い自然空間で、伸び伸びと育てば
そんなに社会に不安を抱く事は少なく、そうでないと
不安は多くなる。
つまり、母親の環境に他人の欲が入り込んでいたので
母親の心を不幸にしていた、それが
映画作家くんの人生を左右していたのである。
それを、神が粛清した。
母親が健康的で優しければ、映画作家くんも
殊更従順な女の子に強く惹かれる理由もなくなる。
その変化が、めぐ、への求めが無くなった理由、かもしれない。
何れにせよ、ふたりにとって良い事だろう。
誤解を招いていたのは、めぐの心にあった
魔物への無意識の畏怖、だったのだから。




