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はじまり
「ねぇ、佳宵。あなたが生まれた日も今日みたいにお月様が綺麗な夜だった」
数えで四つの幼子を抱き上げた女性の腕は白く細かった。
腕の中の幼子はふくふくとした円い頬を赤く染め、母と共に月を見上げている。
「佳宵もあのお月様よりずっと美人になる。今だってこんなに可愛いもの」
幸せを集めたような甘い匂いの幼子に母親は頬擦りをした。きゃらきゃらと高い声が、凍てつく冬の夜空に響く。二人の息は白く染まり、互いの頬を温めた。
「お母さんの方が可愛いよ」
「ありがとう!世界で一番綺麗な私の娘だもの。可愛いくてどんなものより綺麗だし、私よりずっとずっと優しいもの。この世で一番幸せになる!」
高らかに宣言をしたかと思うと、赤く染まった幼子の白い頬に吸い付いた。
「お母さん、くすぐったい!」
「佳宵も母さんにやっていいよ〜」
一組の親子の睦まじいじゃれ合いは夜の静寂に木霊する。
この冬の日からおよそ一年、母親は幼子を遺して世を去った。




