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佳宵記  作者: 翔琉
序章
1/1

はじまり


「ねぇ、佳宵(かよ)。あなたが生まれた日も今日みたいにお月様が綺麗な夜だった」

 数えで四つの幼子を抱き上げた女性(にょしょう)の腕は白く細かった。

 腕の中の幼子はふくふくとした(まろ)い頬を赤く染め、母と共に月を見上げている。


佳宵(かよ)もあのお月様よりずっと美人になる。今だってこんなに可愛いもの」

 幸せを集めたような甘い匂いの幼子に母親は頬擦りをした。きゃらきゃらと高い声が、凍てつく冬の夜空に響く。二人の息は白く染まり、互いの頬を温めた。

「お母さんの方が可愛いよ」

「ありがとう!世界で一番綺麗な私の娘だもの。可愛いくてどんなものより綺麗だし、私よりずっとずっと優しいもの。この世で一番幸せになる!」

 高らかに宣言をしたかと思うと、赤く染まった幼子の白い頬に吸い付いた。

「お母さん、くすぐったい!」

佳宵(かよ)も母さんにやっていいよ〜」

 一組の親子の睦まじいじゃれ合いは夜の静寂(しじま)に木霊する。






この冬の日からおよそ一年(ひととせ)、母親は幼子を遺して世を去った。







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