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世界で一番かわいいと思っていた俺(女装趣味)が、35になって――現実が 見えてきた

掲載日:2026/05/13

 

「……おい待て。誰だこの『ヒゲの濃いおじさん』は」


 深夜二時。

 最新の4K解像度を誇るスマホの画面を見て、俺――佐藤恵(さとう めぐみ)(35歳・独身・中堅商社勤務)は戦慄した。

 画面に映っているのは、フリフリのゴスロリ衣装に身を包んだ、どう見ても『無理をしている不審者』だ。


 おかしい。

 二十代の頃の俺は、街を歩けば「お姉さん、今からお茶しない?」とナンパな男に声をかけられる程の、自他共に認める『世界で一番かわいい存在』だったはずだ。

 キラキラとした輝きを纏い、その笑顔一つで道行く人の視線を独り占めしていた。

 あの頃の俺は、重力をも味方につけていた。


 だが、三十五歳。

 現実は非情だった。


「なんだこの肩幅……! ガンダムか? 俺はいつからモビルスーツになったんだ!?」


 二十代の時には華奢なラインに見えた骨格が、今は歴戦の戦士の如き威圧感を放っている。

 さらに、昨日食べたラーメンの塩分が、如実に目の下のたるみとして現れていた。

 それをコンシーラーで隠そうとすればするほど、そこだけが塗り壁のように不自然に浮き上がる。


 いや、服やメイクが浮いているんじゃない。

 浮いているのは、俺の存在そのものだ。

 俺という個体が、この装いに相応しい世界線から脱落してしまったのだ。


「もう……無理なんだな。俺の賞味期限は、とっくに切れてたんだ」


 自嘲気味に呟き、ウィッグを外す。

 中から現れたのは、仕事のストレスで少し後退した生え際。


 さっきまで必死にお姫様を演じようとしていた努力が、一瞬で滑稽な()()()()()()()()()()に成り下がった。


「明日も仕事だってのに。俺は、こんな時間まで何を……」


 ・ ・ ・


 翌日。

 俺は『佐藤課長代理』として、グレーのスーツに身を包んで出社した。

 満員電車に揺られ、理不尽な上司の小言に頭を下げ、部下のミスをカバーする。


 鏡を見なくてもわかる。

 今の俺は、どこからどう見ても、ただのくたびれたおっさんだ。


 昨日、あんなに惨めな思いをした。

 現実に気づいてしまった。

 もう女装なんて、あんな痛々しい遊びはやめようと思った。


 ……そう、思っていたのに。


 仕事帰り、俺の足は無意識にドラッグストアへ向かっていた。

 目的は、SNSでバズっていた最新のアイシャドウ。

 テスターを手に取ろうとして、ふと指が止まる。

 横には、部活帰りの女子高生のグループ。彼女たちの肌は、蛍光灯の下で発光するかのように瑞々しい。


 彼女たちにとって、アイシャドウは未来を彩る光だ。

 だが、今の俺にとっては、過去にしがみつくための泥に過ぎない。


 店員がこちらを見る。その引きつった笑顔が「おじさん、何してるんですか?」と問いかけてくる気がした。


 俺は結局、何も買わずに店を出た……。



 ――なんて、そんな殊勝なタマかよ!!


「そこの店員! ……いや、店員さん! これの、一番ビビットなピンクを一つ! あと、この『最強の青髭隠し』と、この『重力に抗うリフトアップテープ』も! いますぐ会計お願いします!」


 俺は勢いのままに、給料日直後のクレジットカードを叩きつけた。


 三十五歳。

 現実が見えてきたからこそ、やるべきことが明確になったんだ。


 『かわいい』は天賦の才能じゃない。

 これからは高度な情報戦と資本主義の暴力だ!


 帰宅後、俺は再び戦闘服(ゴスロリ)を纏う。

 補正下着を締め上げ、内臓を押しつぶし、物理限界を超えたクビレを作る。

 肩幅を包み隠すように漆黒のケープを羽織り、なだらかな曲線へ偽装していく。

 仕上げに医療用グレードのコンシーラーで、パテで凹凸を埋めるかの如く、三十五年間の人生を塗りつぶす。


「……はは、見ろよ。まだいける。まだ死んでねぇ」


 鏡の中にいるのは、確かに加工なしでは厳しいおじさんかもしれない。

 けれど、その瞳に宿っているのは、不当な値下げ要求を跳ね除けてきた時と同じ、不屈のビジネスマンの如き()()()()()()()()()輝きだ。


 俺はスマホを掲げ、ライティングを限界まで炊き、叫んだ。


「俺はまだ終わってねぇ!! 誰がなんと言おうと、『世界で一番かわいいおじさん』になってやるんだからよ!!」


 自撮りの連射シャッター音が、六畳一間の戦場(へや)に爆速で響く。


 まだまだ三十五歳。

 俺の『かわいい』は、ここからが本番だ。


 明日も、スーツの下にピンクの靴下を隠して、最強の笑顔で出社してやる。


この作品を見てくださった方へ。

おじさんを☆でデコレートして、世界で一番かわいくしてやってください!


※この作品はAIちゃんとの共同執筆となります。

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