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神の解剖  作者: はさら
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始まりのための終わり

朝五時。けたたましい目覚ましの音が部屋に響く。


……今日で何連勤目だ?


ぼんやりした頭で数える。

医者になって三年目の波咲海。今日でちょうど三十連勤目だった。


三年目とはいえ、まだまだ新米医師。

海の体には、限界に近い疲労が溜まっていた。


家では、寝る以外のことをほとんどしない。

以前はゲームをしたり、テレビを見たりしていた。だが今は違う。


明日のための勉強。

患者の資料の確認。

治療の予習。


そんなことをしているうちに、娯楽に使う時間は完全に消えていた。


「……行くしかないか」


小さく呟き、海は重い体を起こす。

肉体的にも、精神的にも限界に近い。


「今日はこれでいいか」


冷蔵庫から取り出したゼリー飲料を流し込み、そのまま自転車にまたがった。


海が働いている病院は、家から約五キロ。

本来ならバスに乗った方が楽だ。


だが、それは許されない。


「お前なんかがバスに乗るなんてけしからん!自転車で行けるだろ!」


上司の言葉だ。

しかもその上司は、毎朝同じバスに乗っている。


そのため海は、バスに乗ることすら許されなかった。


「毎朝これかよぉ……」


ぼやきながら自転車をこぐ。


病院までの道は、長い坂道になっている。

朝から全力で登るには、あまりにもきつい。


やっとの思いで病院に着いた瞬間――


「おい!おせぇぞ!」


背中をバンッと叩かれる。


振り返らなくても分かる。

声の主は、海の直属の上司だった。


この男は、今の時代では考えられない昭和的な働き方を押し付ける人間だ。


「風邪?そんなの言い訳だ!」

「根性が足りねぇんだよ!」


そんな言葉を平然と吐く。


実際、海はインフルエンザのときでさえ出勤させられたことがあった。


そして今日も――


朝七時から、夜九時までの勤務。


どう考えても労働時間は法定を超えている。

だが誰も何も言えない。


その上司は、この病院の院長の息子だったからだ。

労働環境を報告しても、すべて揉み消される。


「クソ……今日も十四時間労働かよ」


海が仕事を終える頃には、時計はすでに九時を回っていた。


「……疲れたな」


重い体を引きずりながら帰路につく。


(また明日も仕事か……)


そう考えながら信号を渡ろうとした、その瞬間。


キィィィッ!!!


鋭いブレーキ音が夜の道路に響く。


トラックだった。


海は疲労のせいで、信号が青だと勘違いしていたのだ。


(あ……死んだ)


その瞬間、海は確信した。


次の瞬間、体に衝撃が走る。


トラックにはね飛ばされた海の体は宙を舞い、

頭がアスファルトへと叩きつけられる。


視界が揺れる。


遠くで誰かの声がした。


「おい!大丈夫か!!」


トラックの運転手だろう。

だが、その声も次第に遠ざかっていく。


意識が、ゆっくりと闇に沈んでいく。


(……次は、ましな人生を過ごしたいな)


そう思ったときだった。


――「……けて」


どこからか、声が聞こえた。


誰の声だ?


考えようとする。

だが次の瞬間、意識は完全に途絶えた。

こうして――

波咲海の人生は、幕を閉じた。


こんにちは!

今日から不定期ですが自分のペースで書いていこうと思うのでよろしくお願いします!

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