第九章 紅蓮の姫・雪フィア?!
シュッ!
シュエフェイアの耳がピクリと動き、鋭い爪が稲妻のごとく閃いた。その瞳は氷のように冷たく、見る者すら凍らせるかのようだった。
「失せろ――!!」
ルビーのような赤い瞳には、嫌悪の感情がこれでもかと浮かんでいた。
星は乾いた笑いを浮かべたまま固まり、耳の先から首筋まで、気まずさがじわじわと熱く染み渡る。
(やれやれ……この軽蔑の目、師匠にも負けてないぞ……)
心の中でぼやきながらも、顔は相変わらずヘラヘラと、まるで子供を騙す悪党のような笑みを浮かべていた。
「ほらほら~、怖がらないで?食べたりしないってば~」
そう言って取り出したのは、一本のニンジンだった。
――パシンッ。
シュエフェイアはそれを一撃で叩き落とし、軽蔑に満ちた眼差しを向けてきた。まるで、雑草でも見るかのように。
(……この私を野ウサギとでも思っているのか!?)
星は頭をかきながら、困り顔。
薬草?鼻で笑われた。
仙果?見向きもされなかった。
打つ手なし。彼は深いため息をついたあと、意を決して、気力を削って小さな紅い蓮の花を練り出した。
差し出しながら、心の中でなおも悪態をつく。
(どうせ修行もしてないウサギだし、興味もないだろ……)
――が、次の瞬間。
シュッ!!
白い影が飛びかかる。まるで小さな雷光のように兎の身体が動き、紅蓮の花にしがみついてムシャムシャと食べ始めた。
赤い瞳に、初めて驚きと歓喜の色が溢れる。
柔らかな道運が体内に流れ込み、長らく砕けていた火蓮の台座が小さく震えた。それはまるで、再び燃え上がろうとする希望の火種。
シュエフェイアは、兎のまま固まった。
(こ、これは……希望……だと!?)
ピンと立った耳が、うっすらと桃色に染まる。
だが彼女はそっぽを向き、プイッと傲然とした仕草で小さな前足を振り上げた。
(こんなもんじゃ足りない。本座が許してやるかどうかは、もっと差し出してからだな!)
星は苦笑いを浮かべた。
「いやいや、ケチってるわけじゃないんだけどさ……もう霊力、スッカラカンなんだよね」
そう言って、片目をつぶりながら、急に艶っぽい声で続けた。
「でもさ~、頭を撫でさせてくれたら……もしかしたら、元気出るかも?大丈夫、他のとこは触らないって!」
その声は軽やかで、どこか企んでいるようでもあり、本気と冗談の間を泳ぐような甘さがあった。
シュエフェイアの耳がビクンと跳ね、兎の体がガチガチに固まった。
(撫でる……だと!?死にたいのか!!絶対にダメ!!!)
だが――
彼女はふと、躊躇した。
紅蓮の気が、ただ道傷を癒すだけではなく、もしかすると――さらなる進化すらも……?
高慢な誇りと、生き延びたい本能が胸中でせめぎ合う。
彼女はギリギリと兎の牙を噛み締め、耳先をピクピク震わせながら、顔を真っ赤に染めていた。
星を睨みつけるその目には、密かな計算が宿る。
(でも……逃せば、二度と回復できないかも……)
頭を撫でられるだけなら……
……もしかして、許してもいい?
どうせ、あっちだってもう撫でてきたし。
(本座が損得に目がくらんだわけじゃない。これは、傷を治すため……やむを得ない選択だ!)
自分にそう言い聞かせ、ようやく高慢なプライドをなだめた。
そして――
羞恥と葛藤の入り混じる中、最終的に、小さな白兎はピクピク震えながら、ちょこんと頭を差し出した。
顔はそっぽを向いたまま、「さっさと撫でてとっとと消えろ!」という態度。
星はニヤリと笑った。
まるで獲物を手にした小狐のように、そっと、そのふわふわの毛を撫でた。
指先は一瞬だけ触れ、すぐに離れた。
まるで本当に、ただ頭を撫でただけ。
シュエフェイアは耳をピクッと跳ねさせ、内心でそっと安堵の息を吐いた。
(ふん、銀髪の変態め……少しは分かってきたじゃない――)
次の瞬間。
バサッ!!
何が起きたのか分からぬうちに、彼女はまるごと抱き上げられ、そのままベッドの上へと放り出された!
星は悪魔のような笑みを浮かべ、両手を広げ――そのまま跳びかかる。
「うさうさ~!だっこして処理~~~♪」
「なっ!?きゃあああああああああああああ!!!」
シュエフェイアは顔面蒼白、拳を振り回し、足をバタつかせて大暴れ!毛が逆立ち、もう発火寸前!
「頭だけって言ったじゃない!!大嘘つき!!この変態銀髪野郎!!!」
星の顔は邪悪な満足でいっぱいで、兎の顔にすり寄りながらニヤニヤしていた。
「へへ、ほんっとバカなウサギちゃんだな~。俺だからいいけど、他の奴だったら、もうウサギ鍋になってるぞ~?」
シュエフェイアの怒りはもはや臨界点!小さな拳からは音が鳴るほどの震え!
(こ、こいつだけは……許せん!!!)
彼女は懐から、真紅の鳳凰の精血を取り出し、きつく目を閉じて一気に飲み干した!
――ドンッ!!!
白兎の姿が紅の霧に包まれ、爆炎の中から少女の姿が現れた。
滝のように流れる紅い髪、仮面の下に隠れた顔立ち。
十五歳ほどの少女の姿。
ぴんと立ったピンクの兎耳、タイトな衣装に包まれたしなやかな肢体。
紅紫の瞳には冷たい刃のような鋭さがあり、まるで忍者のように、その身には燃えるような神秘の気配が渦巻いていた。
星はまだ顔をすり寄せていた体勢のまま、固まった。
頭皮が引き裂けそうなほどの衝撃。
(な、なんだこれ!?人間に……なった!?)
(ていうか……この気迫……!!師匠にも引けを取らないんじゃ……!?)
――完全に、規格外だ!!!!!!
シェフィアはゆっくりと振り返り、その瞳はまるで死神の凝視のように冷たく、声は氷の刃が耳元をかすめるように低く鋭かった。
「いつまで……抱きしめているつもりかしら――!?」
ドン――!!!
星はまだ息を整えている最中で、全身が冷や汗で濡れていた。目を上げた瞬間、視界が揺らぎ――
次の瞬間、胸に激痛が走った!
彼の体はまるでボロ布のように吹き飛ばされ、壁に激しく叩きつけられ、壁面が微かに震えた。
「ぐっ……!」
星はうめき声を上げながら床に倒れ、痛みで視界が暗くなった。
彼は苦労して体を起こし、震える手で口元の血を拭い、顔を上げた。
その驚愕の表情は一瞬で凍りついた。
――彼女だ!
夢の中で、彼と魂を交わし、血まみれで戦ったあの少女。
鮮やかな赤髪、冷たい紅い瞳、見知らぬようでいてどこか懐かしい。
星の瞳孔は収縮し、体が無意識に震え、声は信じられない思いで震えていた。
「君は……!あの……夢に現れて、僕と……融合した……」
言葉は途切れ途切れで、喉から絞り出すようだった。
彼はその突然の衝撃からまだ立ち直れず、ただ目の前の少女を呆然と見つめ、胸が激しく上下し、まるで世界が崩れたかのようだった。
彼がまだ我に返る前に、シェフィアは彼の襟をつかみ、足元に風を巻き起こし、破れた穴から彼を引きずって飛び出した。
――
「ドン――!!!」
扉が音を立てて真っ二つに割れ、瓊華仙が剣を手にして突入し、鋭い目で部屋全体を見渡した。
残留する気配を感じ取り、彼女は眉をひそめた――気配は微弱で、隠密と暗殺に長けており、実力は私と同等。
心に不安が湧き上がり、彼女は身を翻し、瞬時に外へと追いかけた。
その頃、百花河のほとりでは、湖面が微かに波打っていた。
水中には二つの影が潜んでいた。
シェフィアは刀を星の喉元に突きつけ、もう一方の手で彼をしっかりと押さえつけ、冷酷無情だった。
このような曖昧で危険な姿勢にも関わらず、シェフィアは全く気にせず、空を横切る剣の光をじっと見つめていた。
――さすがは瓊華仙、気配を隠してもここまで追ってくるとは。
シェフィアは心の中で感心しつつも、手の力を緩めることはなかった。
しばらくして、周囲に異変がないことを確認すると、二人は水中から飛び出し、星はボロ布のように地面に投げ出され、みじめな姿だった。
「ううっ、痛い……」
星がまだうめき声を上げ終わらないうちに、刀の刃が再び喉元に迫り、冷気が肌を刺した。
「銀の盗人、さっきはずいぶんと楽しそうに揉んでたわね?」
シェフィアはからかうように笑ったが、その目は人を殺すほどの鋭さだった。
「ま、待って待って……うさぎのお姉さん、僕たちの間に何か誤解があるんじゃないかな?」
星は全身を震わせ、必死に手を振って哀れみを乞うた。
「誤解?」
「ふっ」
シェフィアは冷笑し、刀の刃をさらに喉元に近づけた。
「本座は一言だけ言うわ、紅蓮の花を渡しなさい。それから私と一緒に来るのよ。」
彼女の口調には一切の妥協の余地がなかった。
星は慌てて説明した。
「うさぎのお姉さん、僕は怪我をしていて、本当に紅蓮の花を凝結できないんだ!それに、君も僕の師匠の性格を知ってるだろう?もし君が僕を傷つけたら、君も無事では済まないよ……」
彼は話しながら、慎重に刀の柄に手を伸ばし、体をできるだけ低くして、哀れみを乞うスキルを全開にした。
「だから、僕たち、座ってゆっくり話し合わない?」
シェフィアはしばらく考え、彼の言うことにも一理あると感じた。
「じゃあ、私と一緒に来なさい。傷が治ったら花を渡しなさい。」
星は生き延びたい一心で、慌てて首を横に振った。
みんなが応援してくれるなら、それだけで嬉しいよ。
日本語から翻訳するのは初めてなので、誤訳があったらご容赦ください。本文は下記URLにあります。
p-https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24666038