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第七章 神魂融合(しんこんゆうごう)?!

師姐ししぇっ!!師姐っ!!どこにいるの!!」


その声は、沈んだ闇を切り裂く雷鳴のようだった。


水靈兒すい・れいじは驚いて目を見開いた。そこには、見慣れた影が——


シンっ!!」


彼はふらつきながらも邪気と砕けた氷の間を駆け抜け、まるで一筋の執念の光のように、消えかけた彼女の世界へ飛び込んできた。


「バカッ!なんで来たのよ!!早く逃げて!!!」


彼女はかすれた声で叫び、恐怖と懇願が滲み出ていた。


星は彼女の前に飛び込むと、すでにボロボロのその身体を抱きしめ、叫ぶように言った。


「イヤだ!!師姐を置いてなんか行かない!!」


その瞬間、水靈兒の心の中で固く築かれていた決意と覚悟が、音を立てて崩れ去った。


彼女は涙を堪えきれず、星の肩に噛みつき、震えが止まらなかった。


「この……バカ……っ、ひっく、どうして……戻ってきたのよ……!!」


星は痛みに息を呑みつつも、彼女のぐちゃぐちゃになった頭を優しく撫でながら、三月の春風のように穏やかに言った。


「だって……こんなに綺麗な師姐を置いてったら、罪悪感で死んじゃうよ。」


彼女はさらに強く噛みついたが、顔は真っ赤に染まり、耳まで熱を持っていた。


やがて、水靈兒は怯えた子猫のように彼の胸元に身を寄せた。


「……死にたくない……ほんとうに、死にたくないの……」


その声は震え、嗚咽混じりだった。目には、絶望と葛藤が渦巻いていた。


「怖いの……化け物になっちゃいそうで……でも、もう……戻れないの……」


彼女の腕には邪気が広がり、血の裂け目が走っていた。まるで割れた陶器のように。


星は静かに言った。


「……俺が、助ける方法がある。」


水靈兒はびくりと顔を上げ、目に希望の光を宿した。


「ほんとうに!?どんな方法!?」


星は歯を食いしばり、小さく声を漏らす。


「これは師尊しそんが最後に託してくれた秘術……“神魂秘術しんこんひじゅつ”……」


「神魂秘術……?」


星の顔が一気に赤くなり、口ごもる。


「それは……その……」


「……神魂融合しんこんゆうごう……だ。」


水靈兒は硬直した。まるで雷に打たれたように。


もちろん、彼女は知っていた。それが何を意味するのか——


それは魂の次元における“深い結びつき”。どんな肉体の交わりよりも親密で、


そして——


「……恥ずかしすぎるってばぁっっ!!」


「わ、わたし……怖い……」


彼女は小さく呟き、微かに震えていた。


だが、その目の奥には、ほんのかすかに——


……期待……?


星はそっと手を伸ばし、彼女の冷たい手を握った。


その瞬間、ぬくもりを帯びた魂の気配が指先から心へと染み込み、彼女の砕けた意志を包み込んでいった。


「信じて。」


星は囁くように言った。


「絶対に……生きて、ここから出よう。」


水靈兒は唇を噛み、目を閉じて小さく頷いた。


【彼なら……信じても、いいかもしれない——】


星は身を屈め、彼女の唇に口づけた。


それは情熱ではなく、


無言の“託し”。


その瞬間、水靈兒は彼の鼓動を聞いたような気がした——安定した、そして揺るがぬ音。


自分の不安定な魂を包み込んでくれるような、その鼓動。


ぬくもりを帯びた霊気が唇から全身を流れ、痺れるような感覚に身体が震えた。


視界がぼんやりと霞みはじめる。


意識はふわふわと浮かび、温かな魂の光の海に包まれていく。


彼が胸に当てた大きな手にも、気づかないほどに。


この感覚は……なんて……


…………


!?!?!?!?!?


ち、ちがっ……!何を考えてるのよ私!!


どうしてこんなこと——ちがう!


治療!!そう、これはただの治療だから!!!


絶対に他意はないんだからーーーっっ!!!


心の中で叫ぶも、身体は正直に反応し、彼を求めてしまう。


ふたりの手のひらから放たれた光が、ふたりを包み込む。


魂が溶け合い、まるで細流のように絡み合っていく。


水靈兒の心の奥底に、緑の小さな木が静かに根を張り、邪気を防ぐ堅牢な壁を築いていった。


彼女の呼吸は、やがて落ち着きを取り戻した。


「これで……終わったの……?」


小さく息を漏らし、頬を紅潮させながら、彼女は朦朧とした目で呟いた。


なんだか、まだ——


……物足りない?


一方で星は、水靈兒の体内に存在する“水の蓮台れんだい”の力を借り、青い蓮を具現化させ、心を鎮め、邪気の侵食を防いでいた。


水靈兒はゆっくりと目を開けた。そこには、淡く光る星の姿が映っていたが——


次の瞬間、彼女の瞳には戸惑いの色が広がる。


胸元の蓮台が震え、体内にあった“七品水蓮”が、星の気配に導かれるように激しく揺れ動いたのだ。


——轟ッ!!!


丹田から突如として溢れ出す、奔流のごとき“道運”の力。


万里の河が逆流するように、全身へと突き抜けていく。


水の蓮台の中心、花弁の奥から光があふれ——まるで水面を割る魚、あるいは脱皮する龍のように、


星の“道運”による感応のもと、八品へと——昇華した!


これは、彼女自身の力では到底届かない領域——


そう、これは「星」だった——!


かつて修行ができなかったはずの、けれど「道」に最も近しい少年。


その神魂は、残り火の中に灯った一筋の星光。


水靈兒を媒介として、天地に満ちる“水の道運”を今、体感していた。


「す……すごい……星、あなたって……ほんとうにすごい……!」


水靈兒は呟き、目を潤ませた。


修為しゅういが……八品に上がった……!水の道の感覚も、ずっと……明確に……!」


「だったら、これは——」


その言葉を最後まで言わずとも、彼女は理解していた。


この神魂融合は、星を救っただけではなく、


彼女にとっても、新たな扉を開いたのだ。


水靈兒は、孤高なる狼の戦士を見つめる。


その瞳は霜の刃のように鋭く、それでいてどこか哀悼の色を宿していた。


銀藍の短衣が風になびき、彼女は剣を抜き、天を指す!


水の道運により、蓮がさらに輝きを増し、水流が彼女のもとへと集中する。


「死者に弔いを。英霊に鎮魂を。」


「彼らは守るために戦った。苦しみに囚われるべきではない。」


「——この一撃は、殺すためではない。安らぎのための一閃。」


「水の剣舞・第八式——《水龍・蒼月鎮魂歌そうげつちんこんか》ッ!!!!!!」


叫びが氷原を貫いた!


剣光がうねり、蒼き水龍となって咆哮する!


狼の戦士は天に向かって吼え、血気が天を裂き、刀を振りかざして突進する。


風の中の怒れる狼と化し——


人と獣、奥義をぶつけ合う!


剣の光と刀の影が交差し、氷霧が吹き荒れ、雪原が震えた!!


水靈兒の動きは燕のようにしなやかに舞い、剣の勢いは川の奔流のごとく止まらない。


互いの気迫がぶつかり合い、拮抗する。


——亡き者のために——蒼月よ——!


——闇を斬れっっっ!!!!!!!


!!!!!!!!!!!!!!!


怒りの咆哮が響き渡り、氷藍の巨龍が天へと舞い上がる。


鋭い爪が血の刀を引き裂き、


そのまま狼の戦士と背後の氷壁ごと、


滔々たる水刃に巻き込んだ——


―――ドオォォォォン!!!!!


氷窟は一閃の剣で貫かれ、天を覆う雲霧すら散り去った!


煙塵が落ち着いた頃には、


狼の戦士の姿は……すでに果てなき雪原に消えていた。


……………


「この剣が、あなたを彼岸へ導く……安らかに眠って」


............


.........


...英雄よ。


水霊児は剣を携え、佇む。


息は乱れ、肩は小刻みに震えていたが——


長き孤独を耐え続けたその魂に、


ようやく安寧をもたらすことができた。


ふたりの神魂は、ゆっくりと分離し——


「どさっ」と音を立てて、水霊児はその場に崩れ落ちた。


神魂が抜けた彼女の目に映るのは、崩壊した氷窟の先に広がる夜空。


黒き瘴気は消え、月光が彼女の少し青白い顔にそっと降り注ぐ。


「ははははっ……星!見た?勝ったのよ!!」


「すごいよ、さすがは師姉だね!」


星はまだ恐怖の余韻を残しつつも、その一撃に心を奪われた。


(やっぱり……師父の弟子って、化け物ぞろいだ)


「まだ『師姉』って呼ぶの?」


彼女は唇を尖らせ、不満そうに言った。


「じゃあ……霊児?」


「うん、それでいいの」


彼女は春の水面のように柔らかく微笑みながら、そっと彼の胸に身を寄せた。


「星……もう疲れたの……ちょっとだけ、こうしていてもいい?」


「うん」


彼は優しく彼女を抱きしめた。


水霊児は目を閉じ、小さく囁いた。


「ふふ……誰かに抱かれるって……意外と、気持ちいいんだね……」


彼の胸に身を預けたまま、


雪解けの蓮のように、静かに夢の中へ沈んでいく。


夜風が優しく吹き抜け、


凍てついた世界の中で、ふたつの心がそっと交差した。


——だが、その一方で。


―――――――――――――――――


氷窟の外、ひとつの気配が微かに動く。


影に潜み、誰かがその様子を窺っていた。


月光さえ届かぬその闇の中——


顔は隠れているが、そこには確かに見て取れた。


小柄な身体、ツインテールの赤髪、桃紅の瞳……


そして、ぴこぴこと動く……ふわふわの、うさ耳?


腰には鋭く光る刀を携え、


その身は瞬く間に別の場所へと移動した。


彼女は伝音符を取り出し、


神妙な面持ちで一礼する。


「陛下——!」


伝音符の向こう側からは、天命の如き威厳を放つ女声が返ってきた。


「雪閣主、何の用か?」


その少女こそが、紅の浄土《無限花閣》の一角を担う閣主——


【——紅蓮の姫君ユキフィア——】


そして、彼女が「陛下」と呼ぶそのお方は——


紅の浄土を統べる、


世界の絶頂に最も若くして登り詰めた存在。


——【鳳姚女帝】。


鳳の羽を纏う金の衣、


流火の如き瞳と、星のような冷光を宿す眼差し。


その一挙手一投足が、天地をも畏れさせる。


【夢蝶・十大美人録】において、三傑の一人と称される存在——


「陛下、道韻の花を宿す仙薬を発見いたしました。


姫君の御傷を癒せる可能性がございます」


ユキフィアは、先ほど目にした光景を余すことなく報告した。


その言葉を聞いた女帝の目が、僅かに輝きを放つ。


凪の如き顔に、ほんのわずかに笑みが浮かんだ。


「道韻の花を宿し、邪気の侵蝕すら防ぐ仙薬……ほう。


それを持つ者とは、いったい何者だ。面白い」


しばしの沈黙ののち、女帝は命じた。


「雪閣主、その者の監視を続けよ。


機があれば、連れて来い。朕が直々に会ってみたい」


その一言に、ユキフィアは呆然とした。


「えっ……あの銀髪のやつを、陛下が直々に……!?」


思わず難しい顔になる。


女帝は眉をひそめ、冷静ながらも逆らいがたい口調で言った。


「何か問題でも?」


ユキフィアは歯噛みし、心の中であの“銀賊”を八百回くらい罵倒した。


(ちょっと寝てただけで……


なにあの変態!?私を“ペット”とか言って飼おうとして!?)


(しかも、あんなことや……こんなことまで……)


ふざけんな。


私は、無限花閣の堂々たる閣主。


夢蝶美人録にも名を連ねた、あの私が——!


……今は、こんな情けない姿。


もし体に内傷さえなければ、


修為を封じられてさえいなければ、こんな屈辱……!


——今さら、またあいつのそばに?


…………………………


…………また、あいつに好き放題されるってことじゃない!


絶っっ対に、嫌っっっ!!!!


女帝はそんな彼女の心を見透かしたかのように、さらりと言った。


「“狐供奉”を同行させよう。


彼女は“瓊華仙”の弟子でもある。


今回の件は、瓊華仙にも彼女から説明させる。


任務さえ果たせば——朕は、鳳凰の精血を二滴、お前に授けよう」


その言葉に、ユキフィアは目を見開く。


(鳳凰の精血……!それさえあれば、この内傷が——!)


だが、それを手にするには……


(……また、あいつに、会わなきゃいけないのか)


あぁ……


女帝の声が一変し、鋭い気配が伝音符越しに放たれた。


「肝に銘じよ。お前たち二人、


必ずや、彼を無事に朕のもとへ連れてくること——


……一切の失敗は、許されぬ」


通信は、そこで断たれた。


静まり返った夜の雪原に、


うなだれて座り込む小さな背中が一つ。


うさ耳まで、ぐったりと垂れて——


「もうダメだ……」と、魂が抜けたような哀愁を漂わせていた。

みんなが応援してくれるなら、それだけで嬉しいよ。

日本語から翻訳するのは初めてなので、誤訳があったらご容赦ください。本文は下記URLにあります。

p-https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24666038

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