第六章 師姉を救う?!
場面転換、氷窟内——
黒い気が立ち込め、氷晶は漆黒に染まり、耳元には無数の哀しみの声と不気味な泣き声が響く。血のように赤い脈が地面を這い、微かに光を放っていた。
星と水霊児は手を取り合い、光のオーラで身を守りながら、黒い気の侵食を防いでいた。
「師姐、あの水晶を見ないで!」
星は低い声で警告する。
「心の魔に引き込まれてしまう!」
水霊児はすぐに視線を逸らし、驚きと疑念の表情を浮かべる。
「ここ……どうしてこんな姿に?」
二人はさらに奥へと進み、巨大な氷の滝がある氷窟にたどり着いた。
水たまりの奥深くから、黒い気が湧き上がっている。
星は上方の氷層を見上げ、心に閃きが走る。
「師姐、あの氷層を爆破して、水たまりを封じることはできる?」
「距離が遠いけど……試してみるわ!」
水霊児は頷き、水爆弾を凝縮し、全力で上空へと投げ放つ。
「ドォン——!」
氷層が崩れ落ち、氷雪の流星のように黒い水たまりを完全に覆い隠した。
水霊児は疑問を抱きながら尋ねる。
「これで……大丈夫?」
「いや……そんなに簡単じゃないかも。」
星が言い終わるや否や、背後の氷層が突然爆発し、鋭い氷晶が剣のように突き刺さってきた。
「危ない——!!!」
星は水霊児を庇い、彼女を抱きしめながら、砕けた氷の衝撃を受け止めた。
「ぐっ……」
彼は呻き声を上げ、鮮血が飛び散る。
「星!」
水霊児は驚き、彼の背中に刺さった氷晶に手を伸ばす。
「触らないで!!」
星は彼女を制止する。
「邪気に侵される!」
彼は自ら歯を食いしばり、尖った氷を引き抜き、痛みに耐えながら意識を保っていた。
その時——
——氷霧の中から、鉄の鎖の擦れる音と共に、高大な影がゆっくりと現れた……
黒い霧が渦巻き、赤い瞳が光り、筋肉質の腕には断ち切られた鎖が巻きつき、破れた鎧を纏い、狼の耳と牙を持つ、凶悪な姿。
右手には錆びた戦斧を握り、胸の深紅の脈が微かに光を放っている。
その圧倒的な威圧感に、二人は身動きが取れなくなった。
一目で分かる、この存在は——
——!!!強い!!!——
狼戦士の出現により、周囲の黒い霧はさらに濃くなり、二人を包み込もうとしていた。
星は水霊児を連れて逃げようとした。
——その瞬間、星は強大な力で後方に引き戻され、洞窟の入口へと投げ飛ばされた!!
宙に浮かぶ星は、水霊児の方を見つめ、時間が止まったかのように感じた——
彼女は星の目を見つめ、一瞬の躊躇の後、平静を取り戻した。
静かな微笑みだけが浮かんでいた。
——それは「すでに決意した」笑み。
まるで結末を知っていながら、そこに立ち続けるかのように。
星の瞳孔は震え、心は鋭い刃で切り裂かれたようだった!
「だめだ……やめてくれ……そんな笑顔を……」fx361.com
黒い霧が彼女を飲み込むその瞬間、
彼は、ほとんど忘れかけていた記憶を思い出した。
..............................
——病院の廊下の灯りがちらつく。
——自分は隅に座り、膝を抱えて、何も言えなかった。
——病床の上、呼吸器の音が次第に小さくなる。
次々と見覚えのある背中が病室に運ばれ、白い布で覆われていく。
彼の世界は、心臓の鼓動さえ聞こえないほど静かだった。
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涙はなかった。
悲しみもなかった。
...............
ただ……完全な空白と後悔だけが残った。
...................
彼は努力しなかったわけではない、ただ遅すぎただけ。
手を差し伸べた時、すべての人はすでに去っていた。
彼は自分が一度死んだと思っていた、
だからこそ、この世界に来て、彼女に出会った。
しかし今——
また、目の前で誰かが消えていくのを見届けるのか?
..................
「いやだああああああ——!!!」
「ドン!!!」
星は氷晶を掴み、その鋭利な結晶に掌を引き裂かれながらも、墜落を必死に堪えていた。
血が氷の上に弾けるように咲き、彼は荒く息を吐きながら、もはや迷いのない目で叫んだ。
「師姐──!!師姐──!!」
折れた背骨に鞭打ち、ふらつきながら黒い霧の中へと踏み込む。
その姿はまるで風を裂いて現れた亡霊のようだった。
──だが、その意志は千年氷よりもなお硬く、揺るがない。
【あの、生きていることが死ぬよりも辛かった日々には……もう戻らない。】
【絶対に、後悔なんか残さない──!!】
【彼女を……救い出すんだ──!】
【強くならなきゃ──!!】
【運命を……この手で覆すんだ──!!】
全身を血に染め、黒い気に満ちた悪念が次々と意識を侵していく。今にも意識が途切れそうだったが、不屈の瞳だけが、彼の半ば壊れた身体を深淵の奥へと導いた。
──その頃、遠くでは、刃の閃きが滝のように降り注いでいた。
水靈兒はまるで氷を突き破った光のように、重厚な氷層の中を縦横無尽に舞っていた。
剣と戦斧が激しくぶつかり合い、刃の衝突音はまるで驟雨が雪を打つような轟音となる。氷片が飛び散り、烈風が唸り、剣気と殺意が空に交差しては引き裂いてゆく。
銀藍の短衣はすでに破れ、護符の紋は微かに残光を放つのみ。
悪念に蝕まれた意識、身体中の無数の傷口から流れ出た血が氷雪を染めていた。
それでも彼女は舌を噛み、かすかな意識を必死に繋ぎ止めていた。
──倒れちゃ、駄目……絶対に、ここで倒れるわけにはいかない……!
──みんなで守った、この平和を、守り抜くために──!!
──力のすべてを振り絞って……奴を倒す!!!!
瞳孔が揺れ、やがてそれは鋭い焦点へと収束する。
その双眸はもはや水靈兒のものではなかった。
──幾千年、血と炎の中で倒れては立ち上がってきた、古の戦魂の目だ。
燃え尽きかけた火花のような瞳に、残るのは不屈と殺意のみ。
肉を切らせて骨を断つ覚悟で、獣の斧と真っ向からぶつかり合う。
すでに四百合以上の激闘。
肉眼では残像しか捉えられず、剣と斧はまるで閃電の嵐のように交錯する。
「水の剣舞──第一式!」
水靈兒が吼えるように叫び、雪を踏みしめて跳躍する。
「──玲雪の華!!」
その剣気は瞬時に晴雪を裂き、いくつもの水刃が渦を巻いて舞い、白き閃光が炸裂する──まるで空に咲く雪華の如く、上空から一斉に斬り下ろされた!
ガアァァァ──ッ!!
狼の戦士が咆哮し、双斧を斜めに振り上げて迎撃する!
「ガキィィィ──ン!!」
耳をつんざくような激しい衝突音が響き渡る。
水靈兒はその一撃を強引に受け止め、体をひねって刃を敵の首筋に叩き込もうとする!
あと少し──あと一寸で首を落とせる!
だが、その刹那。
狼戦士の鉄の腕が一閃、雷に打たれたかのように、水靈兒の体が吹き飛んだ!
「ドガァァァンッ!!」
彼女の身体は氷壁に叩きつけられ、洞窟全体が激しく揺れた──!
口から大量の血が噴き出し、顎を伝って雪の上に落ち、まるで紅梅のように花を咲かせる。
「……ゲホ……ッ、ケホッ……」
砕けた氷の中に崩れ落ち、視界が滲む。
──もしあれが龍鱗の胸当てでなければ……とっくに身体は真っ二つだった。
「……もう……ここまで……か……」
まつ毛に霜が張り、指一本動かすこともできず、ただ、最後の一撃を静かに待つだけだった。
……
……
──しかし、予想した激痛は、ついに訪れなかった。
「カァン……!」
鐘の音のような鋭い響きが、彼女の浮かびかけた魂を現世へと引き戻した。
驚いて目を見開くと、そこには──
本来なら彼女を貫くはずだった刃が、彼女の目の前、氷の上に深々と突き刺さっていた。
狼戦士は致命の一撃を放たず、ただ静かに立ち尽くしている。
その背中は、あまりにも寂しく、あまりにも孤独だった。
水靈兒は凍りついたように動けず、その姿に目を奪われる。
──その時。
彼女の脳裏に、彼女のものではない記憶が、津波のように流れ込んできた──
―――――
砕けた金の戦甲は、血と霜で汚れ、
氷原に跪いた影は、長い雪の痕を残していた。
六枚の翼は折れ、羽光は墨のように黒ずんでも、
最後の意識をもって見上げるは、かつて夢のように優しかった浄土。
そして──血まみれになりながらも共に戦った「友」の姿。
彼女は剣の光が自らを氷河の底に葬るのを、ただ静かに待っていた。
―――――
水靈兒は血に濡れ、今にも倒れそうな身体で、風に舞う最後の雪のように立ち続けていた。
唇には血が滲み、ガラスのような瞳は色を失いながらも、必死に指を持ち上げる。
「……コンッ……」
指先で弾いた瞬間──轟音と共に天井が崩れ、
蜘蛛の巣のような亀裂が走り、雪が滝のように降り注ぐ。
その雪の帳の中、彼女は静かに、あの孤影を見つめる。
そこには、哀しみと──「共鳴」があった。
彼女はぽつりと呟いた。それは、自分に語りかけるようでもあり、目の前の英霊に捧げる鎮魂のようでもあった。
「──昔、こんな伝説を聞いたことがあるの。」
「千年前、とある無名の剣士が、愛する人の故郷を守るため、ただ一人で腐土に赴き、魔と共に散った、と。」
「やがて彼の魂は、雪原の孤狼と一つになり、無名の守護者となった。」
「人の形を失っても──剣の心だけは、決して失われなかった。」
彼女は、寂しげに微笑む。その微笑には、諦めと共に、どこか誇りすら感じられた。
「やっぱりね……剣士という生き物は、その想いが魂にまで刻まれている。消えることなんて、ないんだ。」
彼女はそっと膝を雪に折り、自分の胸に手を当てた。
そこにある「命の花」は、まだ微かに脈打っている。
──その瞬間、彼女の運命と、無名の剣士のそれが重なった。
「千年も経てば……あなたの大切な人も、もういないのかもしれない。」
「あなたが刃を私に渡したのは……きっと、安らぎを求めているから。」
彼女の目に、解放されるような光が浮かんだ。
「なら……ここを、あなたと私の共に眠る場所にしましょう。」
「あなたは“彼女”のために。私は……」
……。
彼女の声は詰まり、最後の言葉を言い切ることはできなかった。
その代わり、微笑んだ──それは、自嘲のようでもあり、悟ったようでもあった。
「本当はね……まだ、師弟で一緒に世界を旅したかった。」
「師匠と一緒に、お祭りを見に行く約束も……」
「それに……私の爆弾、まだ完成してないのに……」
「まだ……やり残したこと……いっぱいあるのに……」
呟きは途切れ、呼吸も弱まり、まるで雪のように音もなく消えてゆく。
「ほんとに……悔しいなぁ……」
…………
……
…
彼女はそっと目を閉じ、落ちてくる石と雪を静かに受け入れた。
──その時だった。
みんなが応援してくれるなら、それだけで嬉しいよ。
日本語から翻訳するのは初めてなので、誤訳があったらご容赦ください。本文は下記URLにあります。
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