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第29章 激戦?!

【実況席】


カロの表情が凍りつく。モニターに視線を走らせ、眉をひそめた。


「え……何これ?彼の姿が……消えた?」


ガタッと立ち上がった彼女のヘッドホンがずれ落ちる。声には焦りと不安がにじんでいた。


「まさか──何かあったんじゃ……?」


「だいじょ~ぶだって~」


ミエルは両手をぶらぶら揺らしながら、ガムのようにとろける笑顔を浮かべる。声も甘くて気だるげ。


「アイツね、たぶんまた何かヤバいことやってるだけ~。もしかしたら、私たちにサプライズをくれるかもよ~?」


【神座エリア】


リインはこめかみを軽く揉みながら、水路の影に潜む不審な気配を見つめ、口元に微笑を浮かべる。


(今年も……穏やかじゃ済まなそうね)


──カメラ、場面転換──


【競技場内部・河川交差点】


「──見つけた!」


ショウフウが前方を指差す。その影はぬるりとしたウナギのように水面を滑り逃げていた。


「Yo~綺麗なお姉さん、また会ったね~!」


浪Cロウシーは手を振りながら、笑顔を弾けさせつつ爆走している。その笑い声は、まるで波飛沫のようにキラキラしていた。


狐仙雅こせんがの目が冷たく細まる。指先が静かに刀の柄に触れた。


(この虫……ずっと斬りたかった)


「ちょ、ちょっと落ち着いてって!お姉さん、どうせなら──ロマンチックなサプラーイズを──」


その言葉が終わる前に、浪Cが腕を振り抜いた!


──ドォンッ!!


水面が爆ぜ、巨大なサメが波を切って出現。衝撃波が怒涛のように押し寄せる!


狐仙雅はその波濤の前に静かに立ち、雪中の孤鶴のように微動だにしなかった。


「くだらない……」


つま先で水を蹴り、刀を抜く速さは雷光のごとし。


「氷の剣舞・弐式──《氷息断流》!」


──水が止まる。


霜が湧き上がり、波の壁が瞬時に凍りつく。そして──粉々に砕けた!


霧を裂き、彼女は白鶴のごとく舞い上がる。


「待っ──!」


ショウフウが叫ぶが、足元が崩れ落ちる!


二人とイルカの騎獣がそのまま滝壺の深淵へと落ちていく!


「たっ、滝ぃ!?」


「風を起こして!」


狐仙雅が指示を飛ばすと、ショウフウがすぐに風を操る。


彼女は両手を広げ、水脈を凍結──氷雪のスライダーが形成され、二人は滑り降りていく!


【滝の底】


水霧が立ち込め、滝の轟音が響く。四方には銀瀑が垂れ、夢のような光景が広がっていた。


「ここは……?」


「……気をつけて」


「シュッ!」


刃の閃きと共に霧が割れ、幻の虎がその姿を現す。


その瞬間──


「デンデンデンッ!第二ステージ──『幻獣の森』、スタートだよ!」


カロ・アイヴィの熱い実況が空中から響く。


「選手のみなさ~ん、霧の中にはたくさんの幻獣がいるから、迷子には気をつけてね~!あと、出口探すのも忘れずに~!」


上空カメラには、躊躇う者、果敢に飛び込む者たちの姿が映る。


霧の中では──幻獣たちが既に姿を潜め、陰から狙っていた。


「キャプテン……?」


「問題ない」


狐仙雅は白い吐息をひとつ。


双氷狐が霧を突き破って出現。銀の光をまとい、空中を旋回する。


「──退け」


その一言と共に──


──ドォン!


滝が凍り、万丈の氷壁と化した!


幻獣たちは霧の中で凍りつき、砕け、白雪となって舞い散る。


まるで天地が、この氷雪の聖女に道を譲ったかのような静寂だった。


ショウフウは息を呑む。


(……また差が開いた……)


「行くわよ」


彼女の雪衣が舞い、背中は剣のように孤高で冷ややか。


イルカが長く鳴き、駆け出す。迫る獣たちは次々に氷像となった!


【霧の森・反対側】


浪Cは黄金の棺の上でぐったり寝転がりながら酒を飲んでいた。横には巨大なサメ。どう見ても緊張感ゼロの参加者だ。


「ふー……この試合、ちょろすぎない?」


だが──突然、目が輝いた。


遠くから、一頭の輝く幻獣が歩み寄ってくる。


姿は軽やかで、仙気が漂う。毛並みは雲のようにきらめき、鹿角は七色の光を放つ。まるで夢から現れたかのような存在だった。


「うおお~!このファンタジー感!一生に一度でも出会えたら超ラッキーでしょ!」


勢いよく立ち上がると、サメに乗ってジャンプ!


「おいで、おチビちゃん~♡俺の乗り物になってみない~?」


仙鹿は怯えて逃げ出そうとするが、木にぶつかりそうになる。


「はっはっは!逃げろ逃げろ~!でも俺のスピードに勝てるかな~?」


バシッ!


サメの牙が鹿の幻影を捕らえ、七彩の光が大きく震える!


「やったー!」と笑いかけたその瞬間──


背後から、ひんやりとした気配が忍び寄った。


「ん?」


振り返ると、浪Cの笑顔が一瞬静かになる。


「やっと追いついたか。……ま、ちょうどいい、遊んでやるよ」


氷霧が渦を巻き、白い影が水面を渡って現れる。


狐仙雅が現身。金の紋が浮かぶ氷の瞳で、真っ直ぐに浪Cを睨み据えた。


その視線が、鹿に向けられたとき──瞳がかすかに揺れた。


「……七彩琉璃鹿」


「それって?」ショウフウが低く問う。


「祥瑞の獣。幸運と平和をもたらす神獣……ここは緑の浄土に近い。たぶん、迷い込んだのね」


彼女は浪Cを見据え、氷のような声で言い放つ。


「放しなさい」


「はぁ?祥瑞?ってことは、なおさら乗ってみたいじゃん?」


──ドガァン!!!


即座に彼女が動いた!


白き影が雷のごとく走り、氷刃が浪Cの喉元を襲う!


金の拳が迎え撃つ!


サメはその衝撃で霧散した!


「ひゅ~!やっと本気が来たか~」


浪Cは口元を拭いながら、金の鎧をまとい刀光に対抗!


「でもその程度の斬撃じゃ──かゆくもないぜ?」


狐仙雅の眼差しはさらに冷え込み、空気さえ凍らせるほどの声が漏れる。


「……姉上が私の身体に禁制をかけていなければ──さっきの一閃で、お前はもう氷の屑だったわ」


「ひゅ~言うねぇ。だったら、俺が思いっきり楽しめるようにしてよねぇ~♡」


二人の交錯はまさに電光石火だった。


拳影と刃光が交差し、轟音が連続して響く。


森が揺れ、氷面がひび割れ、殺気が雪のように空気を圧し潰す。


「蕭楓、鹿を守れ!」


「了解!」


彼は一瞬で飛び出した!


「逃がすかよ!」


金の棺が震え、金影が破棺して咆哮を上げる!


「黄金の虎──だと!?」


──ギィンッ!!


虎の爪が荒れ狂い、蕭楓の体が氷面に叩きつけられる!


「ハハハ! オレが手ずから鍛え上げた黄金戦獣、どうだ、最高だろ?」


浪Cは高らかに笑い、拳風は雷のごとく唸る!


蕭楓は血を吐きながらも、その眼差しにはなお鋭く冷たい決意が宿っていた。


「風の剣舞・第五式──《烈風狂奏》!!」


怒声と共に、蕭楓の剣が暴風を伴って振り下ろされる。空気が海のように爆ぜ、剣風が乱れ舞い、剣光が空を貫いて黄金の虎に直撃した!


ドォンッ!!!


金属と剣の衝突音が耳を裂く。巨大な獣は吹き飛ばされ、森の奥へと叩き込まれる!


蕭楓は一瞬の迷いもなく、体を旋回させてさらに一閃——


ドガァンッ!!!


氷面が炸裂し、黄金の虎は粉々に砕け散る。四肢が千切れ、金光が飛び散るさまは、まるで崩れ落ちる彫像のようだった。


「……はぁ。」


荒い息を吐きながら、蕭楓は剣先をわずかに下げる。


だが──


砕けた破片が、まるで金色の液体のように蠕動し始め──彼の足元で、音もなく集まっていく。


「なっ──!?」


瞳孔が収縮する。金の破片が、自らの意志で再構成を始めていた。


そのとき──


遠くから、くすりと笑う声が響いた。


「俺と戦ってる最中に、よそ見とはね?」


その言葉が終わるより早く、拳風がすでに迫っていた。


「っ!?」


バンッ!!


拳影が雷鳴のように走り、狐仙雅の肩を横から襲う。氷晶が弾け、袖が砕けて雪のように舞い散った──


だが彼女は、眉一つ動かさなかった。


ただ、面倒そうに少しだけ首を傾けた。それはまるで、鬱陶しい虫をよけるような仕草。


視線はずっと、氷層の奥に浮かぶ小さな裂け目に注がれていた。


「……もう、限界ね。」


声音は冷たく、体温さえ感じられない。まるで湖面に雪が落ちるような、静けさと共に、胸の奥に寒気が差し込んでくる。


「氷封──解除。」


その言葉と同時に、湖面が低く鳴動し始めた。深淵から万頭の鯨が鳴いているかのような、低く、重く、響き渡る音。


体内の封印が一つ砕け、彼女の足元から冷気が放出される。瞬く間に、世界が氷で覆われた。


湖は透明な鏡と化し、天と地がその表に映り込む。その中央に立つ彼女ただ一人、白衣をなびかせ、氷と雪の女神の如く現れた。


浪Cの口元が歪む。何か軽口でも叩こうかと思ったその時──


彼は、彼女の目を見た。


そこには怒りも、興奮も、感情さえなかった。


ただ「滅することが当然」であるという、冷徹な確信だけがあった。


「こいつ……」


浪Cの笑みが、一瞬だけ止まる。


蕭楓は呼吸すら忘れ、思わず彼女に見惚れていた。


手にした剣の柄を、握ることすら忘れるほどに。


「速やかに終わらせる。」


彼女が囁き、指先をそっと弾いた。


空中で、霜の結晶が小さく咲く。


ゴォォォォォォン————!!!


その次の瞬間、氷の棘が嵐のように四方から浪Cを貫いた!


「ぐああああああああ!!」


彼の身体は吹き飛ばされ、古木を三本貫通し、雪原に叩きつけられる。流れた血が、赤い軌跡を描いた。


「ゲホッ……まだ、終わってねえぞッ!!」


浪Cは雪の中でうずくまりながら、荒い息を吐き、吠えるように叫んだ——

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