★第9話:スピードスター(B)★
光暦3050年。
ある人々は空中都市を作り空に移住し、
ある人々は地下都市を作り地下に移住した。
空中都市、エターク。
地下都市、ニューグラ。
そして地上に残った人々は……
ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。
違い、衝撃、遅延。
浅兼は家を見回してしまう。
捜査のためなのだがさすがレーサーの家。
趣味の品だろうか、高そうな家具、大画面の映像装置。
何より大量のミニカーがガラス棚に飾られている。
これだけあると盗まれても分からないのでは。
捜索しなが浅兼は思わず聞いてしまう。
「あのー、稲尾さんですよね?スピードレーサーの。」
「おー、そうだよ。知ってくれてるなんて気分いい~」
「いつもレースを見てます!
あ、すいません、こんな時に不謹慎でー」
「おー、おー、絶好調。嬉しい、嬉しい。
君みたいな美人に見てもらってるなんて最高、最高。」
一通りの検証は終わる。
帰り際に稲尾から名刺を渡される。
「今日は有難う!お礼じゃないけど名刺、
受け取ってくれるー?」
「え、いいんですか!有難う御座います!」
「おー、もしスピードが必要なときは連絡してよ~。
っていうか、警察さんならガンガン飛ばすんでしょ?」
「いえいえ、稲尾さんのスピードには及びませんよ。」
「そりゃそうだよね、警官が暴走しちゃ本末転倒、転倒。」
稲尾の口調に気おされながらも心は踊っている。
「お会いできて嬉しかったです。犯人頑張って捕まえます!」
「宜しく頼むよー!」
いつも見ていたレースの選手に会えたのはラッキー☆だった。
イメージ通りというか、テンション高すぎな感じ。
そう思いながら、こっちまで思わず帰りの道でスピードを
あげそうになったが、
車体についているスピードメモリーに記録されるから我慢した。
ダメダメ、スピード違反の警察官なんて。
でも、何だろう、気分は高鳴る。
やばい、テンション上がってるなあ。
きっと、もう少し若くて警察じゃなかったら、
この高鳴りのまま、さぁーっと飛ばしちゃってるかも。
メーターを見ると、ジャスト70km。
No problem, under the law.
その時、背後から雑音が近づく。
ヴィーーーーン、ヴィヴィヴィ、ヴィーーーーン
ウョォーン
横を過ぎて行く車体が前方のフロントガラスの先で
小さくなりつつある。
はい!アウトー!素早く本部へ通信開始。
「本部、こちら農立羽通り(のうりっぱどおり)を
走行中。越速の車体を発見。追跡する。」
「本部了解。全くどこのどいつだ。
今どき速度越えなんてやる奴は。気を付けて行けよ。」
「有難うー。すぐ捕まえるわ。」
絶対顔、ニヤついている。さぁ、アクセル開放!
(スピード+テンション)x2、上がりまくり。
トゥビーコンティニュー……