★第8話:スピードスター(A)★
光暦3050年。
ある人々は空中都市を作り空に移住し、
ある人々は地下都市を作り地下に移住した。
空中都市、エターク。
地下都市、ニューグラ。
そして地上に残った人々は……
ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。
心拍、分裂、遅延。
警察建屋に一本の連絡が入る。浅兼は通信を受理する。
「はい、はーい。」
「こちら本部。強盗事件発生。対応お願いします。」
「え、強盗?今時、まだやってる奴いるんですか。」
浅兼のため口に本部の担当者もため口に変更。
「まあ、そう言うな。懲りない連中はいつでもいるんだよ。」
「頭悪いですね。どこですか?」
「今確認中だが、データが来たから転送する。」
「はい、あ、あー、今カメラの過去映像見てます。
あー、帽子の男が映ってます。」
浅兼は素早くシステムにデータを注入する。
「わかりました。顔認証で今検索中です。
出ました出ました。まだ近くにいますね。
急行します!」
地下都市での犯罪はすぐにバレる。
なのにたまにやらかす奴がまだいる。
余程お金に困っているか、
逃げるスリルを味わいたいのか。
ただ一定数、こういった行為を
やめられない人間がいる事は事実らしい。
または犯人としてはバレても捕まらなければ儲けもの。
しかしそうするには地下都市から
出ていく覚悟は必要かもしれない。
事件現場についた浅兼は車両の無線で本部へ連絡。
「はい、こちら幽玄戸列戸
通り3の9の9、現場検証中。」
「こちら本部、了解。別班が犯人を追跡中。」
「了解。検証終わり次第、報告します。」
今回の強盗事件、対象の建物がかなり大きい。
どうもお金持ちの家らしい。
いくらカメラがあってもお金持ちは狙われる。
ピンポーン。被害者宅のドアが開く。
赤い上着に白い半パンツ。普段着にしては派手な服装。
それとは対照的に落ち着いた瞳。
主人らしき男性はにっこりとドアを開いていく。
あ、と気づく。
そこはレーサーのスピードスター稲尾成士
の自宅だった。
「おー、早い!早いの大好き!
宜しく、俺は稲尾。中に入って。」
「この度は大変でしたね。」
「おー、ほんと、まさかって感じ。
ほんと苦笑い。知らない奴が家に入るなんて気分悪すぎ。」
「いまだにこんなことがあることに呆れます。」
「おー、ほんと、ほんと。」
浅兼はちょっと軽いノリの
スピードスターに拍子抜けしながら
豪邸の中を進んでいった。
トゥビーコンティニュー……