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第26話 エキセントリックサーキット(周回遅れ)

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住した。

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

そして地上に残る人々は空を見上げる。

勝利の余波は時間的な遅れを伴って、異なる各所に、差をもって、届けられる。

違い、分裂、遅延。

地下都市の信号機などあらゆる設備が正常に稼働し始めた。

独占されていたメディアも元に戻り、発信されるメッセージは市民への平常への移行を知らせるものだった。

弥生の同期、頼木(らいき、あれ?俺のことみんな覚えてる?※参照例:第16話)は都市の治安に奔走していたが、弥生がいないことに途中で気づき、板金屋にたどり着いた。


頼木は人気のない板金屋を覗いた。

「誰かいませんか?」

板金先輩は地下の避難場所から出てきた。

「もう大丈夫かや~?」

「大丈夫ですよ。もう空中都市は落下しませんし、地下都市も正常に機能しています。」

「そっかぁ~。そうならよかったぐ~。しっかし、地上の方でどっかん、どっかん、うるさかったやな~。たまに振動も来るし、生きた心地せんかったなやぁ~。」

「それはそうと、若い女性警官が来ませんでしたか?いつもこちらの納品を受け取っていたんですが。」

「納品はわしはしとらんから分からんだが、一人きたらぁ~。」

「どこに行きましたか?」

「あの時はわしも襲われたり、なんか大変だったげ〜、どこに行ったとか分からんげよ~。」

「そうですか。」

「ただ警官の前に来た強盗男に警察車体とそれに乗っとったうちのメンバーも一緒に多分、地上か空中にもっていかれたがや~。」

頼木はおそらく弥生はそれを追っていったな、と直感した。

「分かりました。ご協力ありがとうございます。とにかく今は正常に戻りましたから。」

板金屋を出た頼木は地上の方を見つめた。弥生がどこに行ったのか分からないが、不思議と違和感はなかった。


その後、各所で落ち着きを取り戻していることを確認しながら警察建屋に戻ってきた。

「知合さん、空中都市の落下、止まりましたね。」

「おー、お疲れさーん。やっと止まったじゃない。一時はどうなるかと思ったよ、電話が鳴りすぎて。」

「お疲れ様でした!」

頼木はいやいや、知合さん、あなたはずっとここにいたじゃない、と思いながら無理に笑顔で謝意を述べた。



いつもの高度に戻った都市を見ながらふとヤマバは空中都市に戻ってから起動していなかった[肩越しにAI]を何気なくONにした。

「はい。ご無沙汰マソワー。」

「今の声、何?」

弥生が隣で変な顔をする。

ヤマバはAIのモードを変えていなかったことを思い出して焦った。

「ヤマバの山場は微妙だったマソワー。」

くだらないAIの発言に、うるさいわ、と思わず再び機能をOFFにしてやろうかと思ったが不便になるので

とにかくさっさとモードだけ変更した。

「あー、これ、空中都市で使ってるAI。変なモードにしてたからちゃんと戻しといた。うん。」



サエカリが制御室の四人を連れて研究室に戻ってきた。

パウネラが笑顔で迎える。

「今回は本当にありがとうございました。無事に空中都市を元に戻すことが出来ました。本当にありがとう。とりあえず、ゆっくりして下さい。」

「姉さん、とりあえず元に戻ったけど課題はこれからね。」

「先輩、制御室以外にこんな立派な建物があったんすね。」

「お前は休みの日も家に篭りすぎ。」

弥生はヤマバの腕を掴みながら「初めて地下都市から離れたんですが、皆さん会えて、本当に来て良かったです。」

アヤリは「私も今回はどうなるかと……ほんとに皆さんのおかげです。有難う御座います。」

それぞれが今回の活動での苦悩、行動の実績、思い出の場面の映像、様々な事を頭に描きながら思い想いに語り始めていた。

「私もあの時はほんとに、無理だと思って…… 「そうそう、そしたらさぁ……上から突然現れてきて、それがまたこ…… 「いや、そ……

「おー、おー。」

「もう今回ばかりは…… 「いやいや、あの時はまだ何とかしてさら……

「いやー、悪いだけどー」

「本当に、皆んな本当にありがと…… 「疲れたっすよ。こんなの初めてっ……

「ねえ!ねえ!ねえ!」

シーン。

稲尾はいつもの言葉で誰も反応しないので思わず普段と違う言い方をしてみた。作戦は成功した。

が成功しすぎて気まずい。それは結果と求める対価の差が大きいから。

「シャワー行ってきていい?いい?」



特に合図もなく、弥生はアヤリと一緒に探偵衣音吏のストリートガーディアンを起動する。

例の探偵のゲームだ。

「今日は、大変だ!空中都市が落下してくるという噂が!」

弥生とアヤリは顔を見合わせた。早速時事ネタを盛り込んできた。

「さあ、一緒にいって状況を確認しにいこう!今日も大事件が僕らを待っている!」

「もういいよね?」「そうですね。」

弥生とアヤリは苦笑いしながらアプリを閉じた。


ふいにアケタチが「あ、先輩、じぃさん、ほったらかしっすね?」

ヤマバは「あ、ほんとだ。」

その時、ミチカゲが制御室の映像を送ってきた。

アヤリが映像を見ていった。「制御室でヘッドセットして横になってる人がいますね。」



電子回路と競技のオートレースのコース

電子回路上に流れる電気信号と仮想車体

電子世界でレースを行うサーキット

エキセントリックサーキット

トゥビーコンティニュー?

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