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第25話:エキセントリックサーキット(ファーストラップ)

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住した。

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

そして地上に残る人々は空を見上げる。

さあ、レースの始まりだー

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、遅延。

稲尾と弥生は車体に乗っているがデータが流れ込むと徐々に車体から見える景色が現実の施設内部から全体的がほぼ黒に近いダークブルーの背景になり、車体が進むべき道路は白い蛍光のラインが道の左右に光っている。今のところ先の方まで直線が続いている。

稲尾は

「おー、来た来たー。どこに行けばいい?」

それにアヤリが車体スピーカーから答える。

「基本的には蛍光のラインに沿って進んでください。その先にミチカゲに到達するポイントがあります。今、そこにハッカーの攻撃が集中しています。」

バックミラーに別の車体が映り込んでくる。

「おー、お出ましになったようだな、だな。」

弥生は車内で後ろを振り返り、ホルスターの銃を抜く。

「おそらく、敵、よね?」

アヤリからまた通信が入る。

「気を付けて下さい。ハッカーも車体でこの空間に入り込んでいます。あと道はまっすぐとは限りまー」

車体の上から立方体のブロックが落下してきた。稲尾が急ハンドルでよける。

「お、おー、何か振ってきたぞ、ぞ。」

「ーせん。またハッカーが今みたいに仮想空間の物体で攻撃してきます。注意して下さい。」

「なんだよ、それ、滅茶苦茶じゃない、じゃないかー、寒気がしてきたぜ。滅茶苦茶、、、楽しいじゃないか!仮想空間のレース!!!」

稲尾はアクセルを踏む。稲尾のテンションに比例するかのように。

稲尾の熱さと違って弥生はなぜか車体内部がしんとしているように感じ、全く緊張感も上がらないし、高揚感もない。認識としては任務、という感覚だった。

「稲尾さん、後ろの車体が並びに来ます!」

「おー、スピードは上げてるはずなんだがー」

謎の車体が真横に付けてくる。幅寄せしてきてぶつかる。

ガッ、ガグブン。

「うおー、ちきしょうー、全然スピードで差がつけれれない、ない。」

弥生は稲尾に

「後部座席に移動して、相手の車体に打ち込みます!」

と告げ、助手席の座席を倒し、移動、すぐさま銃を相手車体の動力部、後方に打ち込んだ。

カヒューン。あたるが車体は止まらない。

また前方情報から立方体が降ってくる。稲尾はギリギリまでよけない。相手車体が幅寄せしてきた瞬間、ブレーキをかけた。

「きゃー!」弥生が稲尾の座席にぶつかる。同時に相手車体の上に立方体が落ち、車体がスクラップになる。稲尾はハンドルを切ってスクラップをよけて再び加速した。

アヤリから通信で

「さすがレーサーですね!」

稲尾は

「おー、こうやっていけばいいんだな、だな。分かってきたぜ。」

弥生は

「いつぅー。拳銃じゃあ、車体は無理みたいね。危ないから助手席に戻ります。」

「おー、とにかくミチカゲに急いで到達するぜー」



パウネラの車体に通信しているアヤリに、パウネラが声をかける。

「最後の設備は制御室の近くよね?」

「はい、そうです。それが何か…?」

「制御室には私の部下がいるの。こんな大事な仕事を地下からの使者にだけ託すのは何か違うわよ。」

「それはそうですね…分かりました。制御室にも施設からのデータを流入させてサポートしてもらいましょう。」

パウネラはヤマバに連絡を入れる。

「ヤマバ、今から制御室に仮想空間からのデータを注入するわ。今、ハッカーからの攻撃を止めるために私の車体にレーサー稲尾さんと地下からのボディガードさんがデータ空間に入り込んでる。その人たちをサポートして。」

ヤマバは一瞬引っかかった。レーサー稲尾、それは確かに地下のあの有名レーサーだろう。空中都市でも賭けの対象だから誰でも知っている。ボディガード?

「はい、分かりました。ただ何かの時のためにサバラナのジィさんだけは残していいですか?」

「もちろん構わないわ。ジィさんが仮想空間に入っても、何が何だかわからないでしょうしね。」

ヤマバはアケタチに

「頼む、一緒に来て援護してくれ。」

「オッケーっす!いつもより楽しそうっすよー。」

ヤマバと後輩アケタチは制御室の座席に座り、仮想空間へ没入していく。

ヤマバはアケタチに

「えーと、機体は何で行く?」

「そうっすね。どうせなら普段乗らないヘリポーでお願いしやっす!」

「え、お、おー、分かった。じゃあ、AIに操作聞きながら操作するか。」

「お、オッケーっす!ちょっと大丈夫っすかって思いますけど、AIあれば行けるっしょ。」

「オーケー、フライト開始。」

Bata, Bata, Bata, Bata, Bata, Bata, Bata, Bata, (Reapet)

その横でサバラナのジィさんは午後の居眠りに入っていた。



イワラリの防衛部隊のセンサーが地下からのミサイルを探知する。

レーダー監視員から報告が入る。

「警告!地下都市からミサイル5発がこちらに向かってきます!」

イワラリは

「こちらってどこだ?正確に場所を報告しろ!」

「すべて制御室周辺に向かっています!」

イワラリが「隊長。迎撃開始ミサイル準備」

迎撃部隊から「いつでも打てますよ」

「じゃあ、さっさと発射しろ!」

こんな適当な命令での発射も実に数百年ぶりの事態と思えば仕方ないのかもしれないが、空中都市のミサイル発射口から5発のミサイルが発射された。

イワラリは

「命中時間まであとどれぐらいだ!」

「約5分後です!」

「分かった!ミサイル制御を継続。全部打ち落とすぞ!」

イワラリは手の中で広がった汗に今、気が付いた。

トゥビーコンティニュー……

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