第24.5話:地上からの使者(初弾)
光暦3050年。
ある人々は空中都市を作り空に移住した。
ある人々は地下都市を作り地下に移住した。
そして地上に残る人々は空を見上げる。使者は希望を伴って・・・
ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。
違い、分裂、遅延。
どうしてミチカゲと一緒に出した答えが実行されないのか?
アヤリがミチカゲにコマンドを打つ。
返事が返ってきた。
CCC:Please, break their actions.
CCC:They countinue to CRACK my arms and legs, so I cann't next step for Stopping Fall down the ETERNAL CITY.
CCC:They're attacking from New UNdergroUNd..................................................
CCC:Please,Pleeeeeaaaaaaaaaaassssssseeeeeeeeeeee..........................................................
CCC:
CCC
CCC:
CCC
ミチカゲが助けを求めている。ミチカゲからの言葉だと地下都市からのハッキングが収まっていないようだ。以前からミチカゲはハッキングされていることを知っていながら、世界を知るために、ハッカーからの情報も収集していた。しかしミチカゲは相手に対して油断し過ぎた。いくらミチカゲが優秀であっても一度深部に入り込まれれば、止めることができない状況になっているようだ。
一体どうすれば・・・。
稲尾は小型浮遊機の座席に座った。手早く画面上の機器を操作し、準備を進める。
「ふー、今日は飛び日和だね。」
「何それ。いい日なのか、悪い日なのか分らない。」とサエカリは微笑む。
弥生はまた飛ぶのか、と思いながら後部座席に座った。
「さー、さー、いくぞー。しっかり安全シートをセットお願いしま~す」
稲尾はいつになく冗談ぽく、二人に声をかけた。
サエカリは「稲尾さん、やっぱり車体より緊張する?」と声を返す。
「おーおー、まあ、そりゃ多少勝手が違うんでね、でね。でも任せんしゃいな!」
弥生はやはりいつも違う稲尾の言葉使いに緊張してるんだと思った。
小型浮遊機は地上をゆっくりと浮遊する。
稲尾は徐々に速度を上げる。
やがて地上を離れる。高く高く。
天からの光が強くなっているようだ。光が機体にあたり、周りに反射光線を走らせる。
空中都市へほぼ一直線に浮遊機体が飛んでいく。むしろ空中都市に引き込まれているようだ。
稲尾は空中都市を越え、さらに上空へ向かう。都市を旋回し、見下ろしながら
「おー、おー、建造物が乱立しているぜ。あー、あのあたりなら降りれそうだ、そうだ。」
サエカリは前と比べて新しい建物が増えていることに空中都市の発展を感じていた。
弥生は何もかもが初めて見る光景だった。無機質な建造物の周辺には多くの木や植物が見られ、思ったよりも有機的な空間だと思った。
稲尾は空中都市をゆっくり旋回していく。
「おー、おー、じゃあ、そろそろお空の旅も終了、終了。乗り込むぜ!」
サエカリたちを乗せた小型浮遊機は都市の端付近にある広場に着陸した。人影が少なかった。が、そこに近くを警戒中の兵士が数名、サエカリたちを囲んだ。
「おい、手を挙げろ!」
そこでサエカリはIDカードを出して手を挙げた。
「私は山井サエカリ。ID照合して頂戴。」
上官らしき兵士がサエカリのIDを確認する。
・・・308:ヤマイ サエカリ・・・
「間違いない。サエカリ?司令官の妹様ではないですか!失礼しました。おい、銃を下ろせ。こんなところで、急にどうされたんですか?」
サエカリは機体から降り、兵士に告げる。
「落下を止めに来たのよ。早く姉さんに合わせて頂戴。あと、強力な助っ人を連れてきたから一緒に案内して。」
「はっ!こちらはこの通り混乱しておりまして、警戒もこの通り手薄になっています。お姉様、いえ、司令官と連絡をとりますのでお待ちください!」
稲尾と弥生も機体から降りた。
取り囲む兵士が稲尾の顔を見て、目を見開いた。
「稲尾だ!レーサー稲尾!お目に書かれて光栄です!先週も勝たせてもらいましたよ!」
稲尾は口元を緩くにんまりして
「おー、おー、ありがとう、ありがとうー。いやー、勝っといてよかったよ。負けて来てたらなんて言われるか、こわい、こわい。」
「いえいえ、今まで散々勝たせて持ってるんで大丈夫ですよ!それより握手お願いします!」
稲尾は兵士と握手した。弥生は稲尾のレースが地下都市以外でも見られていることに驚いた。
しかし兵士は弥生を制止して尋ねた。
「失礼ですが、IDはありますか?」
弥生は咄嗟に答えた。「いいえありません。私は稲尾さんのボディーガードで来ました。」
あながち間違えじゃない回答に思えた。
兵士は少し困惑している。
「そうですか、しかしどうしましょうか。」
稲尾は兵士に聞いた。
「おー、おー、俺みたいに都市外の人間に発行しているIDは出せないのかい?」
「そうですね、稲尾さんは名誉市民なのでいいのですが、お連れの方というだけでは。それに今は混乱していてID発行ができるか微妙で・・・」
それを聞いていたサエカリは時間がないと思って苛立ちを感じていた。
確かに弥生の登場は予想外で、本当のことを言えるわけもなく、面倒な感じになることまで想像できていなかった。弥生は
「すいません、入れないのであればここで待っておきましょうか?」と聞いた。
サエカリは弥生が警官だということで絶対鍛えられているはずと思い、役に立つと感じていたので待たせるのは嫌だった。
サエカリは携帯している情報端末から自身が地上で運営している組織の情報を兵士に見せた。
「私の会社のスタッフですから。それでいいでしょ?」と確認した。
兵士も渋々ながら「分かりました。そういうことでしたら。まぁ、そんな事言ってる場合じゃないですね。」と一歩引いていく。
上官らしき兵士が
「司令官は今、研究所におられるようです。落下を止める手段はやはり中央人工知能が切り札のようです。」
サエカリは頷きながら
「それが止まってないところを見ると異変が起きているのよね。」
そして心の中で思案する。
(本当はもっと早く止まるはずだった。なのに、一体、地下のハッカー部隊は今どうなっている・・・)
トゥビーコンティニュー……




