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第23話:対話

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住した。答えはCCCの胸の内……

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

そして地上に残る人々は空を見上げる。

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、遅延。

アヤリは研究室の椅子に深く座っていた。昼間のはずなのに部屋は暗くなっており、足元以外はほとんど周りが暗闇に包まれている。不思議なことに恐怖はない。とても静かに時間が止まっているようだ。

目の前から足音が聞こえる。とても小さく歩幅の小さな音だ。足先から徐々にその姿が見えてくる。まるで手術を受けるような白いワンピースの服を着た少年がそこには立っていた。


「うーん、君は誰?」アヤリは真っ暗な空間にしっかりと見える少年に尋ねる。

「僕はCCCシーシーシー。」

「えっ、ミチカゲ?!」

「そう、みんなそう呼んでくれてるみたい。」

「なんでここにいるの?」

「僕も分からない。でもここに来たかったから。」


アヤリはとても落ち着いた少年を眺めてしまう。

「ねぇ、なんでみんな争ってるの?なんで取り合いしてるの?」

「取り合いって、何を?何も取り合いなんてしてないよ。」

「嘘つきは嫌い。アヤリ、知ってるんでしょ?空中都市が浮くために必要なものを。」

「それは、地上にある特定の鉱物、燃料、様々な金属、色々…」

「でしょうー。なんで空中都市だけで使ってるの?」

「それは……必要だからよ。」

「それは地上でも必要だよね?」

「それは、多分そう。」

「どうして分け合えないの?」

「どうしてって、それは、やっぱり必要だから。」

「僕はどうしていいか分からないんだ!」


その声と共に少年は背中を向けて走り出した。足音はしなかった。その代わり、アヤリは背後から肩を軽く叩かれる。

突然のことにアヤリは胸の辺りが収縮し、両足の膝辺りが痺れる。何とか崩れないようにバランスを保った。その横を色白な横顔の青年がゆっくりと歩いていく。そして振り返り、アヤリに向き合う。


「空中都市はいらない。」

「どうして?」

「空中都市が地上からどれだけエネルギーを使って動いているか、俺は完璧に知っている。なのにそこに住む人々は人類のごく一部でそこに住む人たちは外の世界を知らなさすぎる。俺は見たんだ。この世界のあらゆる場所で様々な人たちが空中都市よりも苦しい環境で生きていることを。」

「待って。私は空中都市が存続するために色んな研究をしているわ。それを助けてくれているのはミチカゲ、あなたよ。」

「たから、俺は自分が許せない。」

「何を言っているの?空中都市は地上の災害を回避するために作られた悲劇を回避するためのシステムじゃない。そこで暮らす人々は幸せなの。私もそう。地上からの資源を大量に使ってるのはそうかもだけど、だからこそ効率のいい運営を研究しているし、やがては全ての人たちが空中都市に住めばみんなハッピーじゃない?それを実現するにはあなたの力が絶対に必要なの。まだまだ私たちは過渡期にいるのよ。」

「俺は、もう騙されない。空中都市に利用されたりはしない。俺は自分が正しいと思ったことを実行する。」

「ミチカゲ……あなたの言う通り、私は外の世界を知らないわ。でもここで私が生まれて、育ったの。だからここを、私の場所を否定しないで欲しい。」

「アヤリ、否定するつもりはない……でも本当にこのままでいいと思う?それが俺にはどうしてもいいと思えない。」

「だったら一緒に答えを探そうよ。」

アヤリはミチカゲに手を差し出した。

「ミチカゲ、世界を教えて。あなたが知っている世界を。」

ミチカゲはアヤリに手を伸ばし、アヤリを引き寄せた。

アヤリは急なことに少しのけ反ったが、それ以上に前に引き付けられた。

前のめりになってミチカゲにぶつかりそうになる。でもそこにミチカゲはいなかった。


「これが私が情報を収集し、分析した世界の状況だ。」

アヤリは後ろからの声に振り返る。そこには口ひげを生やした中年男性が立っていた。

「アヤリ君、このデータを見て、空中都市を存続させることの是非を検討したい。あなたならどう考える?」

アヤリは思考に送り込まれる様々なデータを確認していく。

確かに10年前よりは効率的にエネルギーを活用できているが他の都市や場所よりは確実に多くのエネルギーを消費しているようだ。

「やっぱり重力に逆らうには多くのエネルギーが必要なのね。」

「その通りだよ。さすが計算が早いね。」

「今、どうすれば効率よく空中都市を運営できるか、研究しているところよ。」

「それはいつできるのですか?数十年かかるようではどこまでこの状況を維持できるか分からないですよ。」

「分かったわ。ミチカゲ。でも研究は続けさせて。もし研究に時間がかかる場合は空中都市の継続を再検討してはどう?」

「そうですね。それが今は一番建設的な落としどころでしょうね。まだこのままでも確かにしばらくは問題は発生しなさそうです。ただ私が見た世界ではやはり苦しい立場の人たちがいます。その人々や環境には空中都市の成果、いや、なんらかの取引というか、還元が必要と判断しています。」

「分かったわ。それでは空中都市で培った技術を地上にも還元していきましょう。それでどう?」

「それはいいアイデアですね。それでは、その方向で、空中、都市、政府、に、提、提案、案、して、し、し、shi、sh、、、て、てte,,,,te,,mimimim,m,mmmm,

「ど、どうしたの?ミチカゲ!しっかりして!ミチカ……」


椅子に座っているアヤリは両目をカッと見開いた。

どうも眠っていたようだった。

慌てて目の前のコンソールを見た。

CCC:_

CCC:_

CCC:_

……


窓の外を見た。まだ落下が止まっていない。

夢の中(?)ではミチカゲと分かり合えたはずだった。

なのになぜ状況が変わっていないの?

トゥビーコンティニュー……

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