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第22話:チェイス-追跡-(1/2)

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住した。

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

そして地上に残る人々は空を見上げる。

境界線を越えてゆけ。

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、遅延。

稲尾と弥生の車体は長い地下都市から地上への道路を猛スピードで走る。

元々地上付近の板金屋からはそんなに時間がかからずに地上へ抜け出してゆく。


弥生は目の前に広がる地上の風景に右、左、後ろと頻繁に頭を動かし、周囲をまるで獲物を探すように見ている。


稲尾は前を見つめたまま、そんな弥生に声をかける。

「そんなに地上が珍しいのかい?おー。おー。」

「初めて見るんです。地上の風景。あと一応周囲を警戒してます。稲尾さんは初めてではないんですか?」


「おー、おー、昔からあの板金屋で車体を受け取ったら試し走りよ。だから、気づいたら地上に出たりする訳。だってスピード出しちゃうから、気付いたら地下都市からあっという間に地上へGOよー!」


稲尾は満面の笑みでアクセルを踏み続けている。

「おー、おー、懐かしい。懐かしい!息苦しい地下都市なんかより、見てよ。この広い地上!最高じゃねーよー!」


弥生は広く、先の見えない山々や、どこまでも続く空を見ていた。弥生は自分的に稚拙な言葉しか浮かばず、思わず、「無限ですね……」と呟いた。


「おー、おー、どこまでも繋がってる、そして繋がって無いと思わせるような孤独も感じさせる風景よね、地上は。相変わらず変わってないぜー!」


弥生はさっきまで気づいてなかったが、空を改めて見たときに視線の斜め上に浮かんでいる空中都市に気付いた。その浮かんだ大地には無数のビルや建造物が立ち並んでいるようで、またその都市の中にはレールが走り、レール伝いに乗り物が走っている。明らかに進んだ文明が展開されている都市だった。


「あれが空中都市ですか……。」

空中都市から視線が離せなくなった弥生は稲尾に言うような独り言のような言い方で聞く。


「おー、おー、そうよ、あれが空中都市ねー。あんなものが浮かんでるなんてやっぱり信じられない。サイコー、サイコー。いつ見てもどうなってるのか気になる、なる。」


空中都市はゆっくりと動いている。ハッカー部隊が言っていた通り、少しずつ落下しているようだ。

空中都市の周辺にはだらんと垂れ下がったコンクリートと鉄筋の構造物がぶら下がっている。よく見ると道路のようだ。おそらく地上との連絡路だったんだろうが空中都市が動いた事で壊れたらしい。


「空中都市の道路が壊れてますよ。どうやって行けばいいんですかね……」

「おー、のー、直接は無理だろうねー。まぁ、それは前のあいつらも一緒のはずだが、あいつら、空中都市の人間なんだろ?」

「はい、スパイ、ですね……。」

「お、おー。まじかい。そんな相手とは知らなかったぜ。ならば何か方法はあるのかもな。」


稲尾は真面目な横顔で言う。

「おー、この車体、他にも機能があるので知ってるかい?」

「え、何ですか?」

「車体だよ、車体。これ、もっと浮くんだよ。この車体は。」


稲尾は運転席の一部のカバーを外して、そこにあるレバーを解除する。

「え?」

その瞬間、車体が地面に向けて推進力を上げて車体が持ち上がっていく。

「え。えーーー!こんな機能もあったのーーー!?」

「おー、おー、これが車体の真の実力さ!はっひょー!」


高く上がったせいで遠くまで視界が広がった。前方にまだ小さいが警察車両が走っている。ついに見つけた。ヤマバが乗っている車両だ。


「おー、おー、いたいた。あいつら、もうすぐ着いちまうな。」


スピードスターは車体を地上付近に戻し、その瞬間、アクセルを踏み込む。さすがレーサー、リミッターを解除した警察車両はかなり前を走っていたヤマバの乗る警察車両にぐんぐん近づいていく。ついに射程距離に詰め寄ってきた。


弥生は車体のスピーカーから叫ぶ。

「止まりなさいよ!

止まらないと打つわよ。」

もちろん止まる気配はない。

弥生はピストルを放つ。

警察車体に発砲するなんて、2度とないだろうと思いながら。

流石に猛スピードの車体からは正確には射撃できない。

稲尾は

「ふーっ、いいねー。

警察車体に警察が発砲、サイコー!」


稲尾の言葉に弥生は口元に苦笑いを浮かべる。

なんでこんな事になってしまったのか…。

気になる人が乗っている味方の車体に、よりにもよって拳銃をぶっ放すなんて、レディーのする事じゃない、と脳内を流れる液体と電気信号が奏でる思考という海の中で笑いながら思う。


ヤマバは後部座席からイワラリに知らせる。

「一台追ってきてるぞ。逃げ切れるのか?」

イワラリは早口で

「そんなもん、構ってられるか!とにかく前に向かって早く空中都市に向かうだけだ!」

まぁ、そうか、とヤマバも思う。ただあの警告の声に聞き覚えがある。まさか…。

トゥビーコンティニュー……

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