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★第19話:逃走 Ⅲ★

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住し、

逃げる、追いかけられる、チカトシを背後に……

そして地上に残る人々。

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、遅延。

空中都市のスパイであるヤマバは

この状況に慌てて空中都市に戻ったんだろう。


弥生は板金先輩に聞いた。

「怪我はない?」

「大丈夫だやー。知らない男に

ナイフ突きつけられて

腰が抜けたわやー。」


「あらまぁー。

ほら、とにかく中まで肩かすわ。」

「すまねえーなわ。」

板金先輩を椅子に座らせて

弥生はさらに尋ねた。


「で、どんな車体で行っちゃったの?」

「あんたらのとこから預かった警察車両だや。

整備後のテストしようとしたら奪われたがー。」

「あー、預けてたやつね。

またそんな目立つような車体で。』


板金先輩はとにかく放心状態で佇んでいる。

仕方なく弥生は板金屋を出た。



地上付近の板金屋周辺は元々人も少なく

いつもと変わりない状況だった。

あれから本部からの指示もない。


まだそんなに時間は経ってそうじゃない。

弥生は迷いながらも以前もらった名刺を探し、

携帯端末を開いた。

「あ、もしもし、稲尾さんですか?

ご無沙汰してます、先日ご自宅に伺った

警察の浅兼です。」


電話口のスピードスターは口調も軽快。

「おー、おー、あの美人さん?

おー、おー、おー、久しぶりじゃない〜。

どうしたのー?今、警察、大変でしょー?」


「そうなんですぅ。なのでもし可能なら

助けて頂こうかなと思って電話しましたー。」


「おー、おー、ついに来た?

スピードスターの出番!

任せてよ。もうこんなんじゃ、

レースなんてない、ない。」


「実は今、警察車両を奪っで逃げた

犯人がいるんです。

それを追いかけたいんです。」


弥生は話しながら自分がこの後、

今まで出た事がない地下都市を出る事を

半分意識していた。

そして半分は任務という理由を言い聞かせて、

あまり考えないようにした。

考えると不安で一杯になりそうだ。


「おー、おー、それで、どこに行けばいい?」

「あ、すいません、地上近くの

雑機楽戸通り(ざっきらーととおり)の

板金屋なんですが……」


「おー、おー、もしかしてあの腕のいい

板金屋さんがいるところ?」

「多分、そうです。警察車両も

いつもお世話になってるんです。」


「おー、おー、懐かしいねぇ。

10代の頃、世話になった、なった。」

「10代ですか……さすが車体関係は

色々お付き合いがあるんですね。」

「うん、うん、とにかく美人さんからの依頼だ。

急いで行かせてもらう、もらう!」


弥生は通信端末を胸ポケットにしまう。

地下都市を離れる。

自分にとってはちょっとした冒険だ。


そもそも空中都市のスパイと

知っていたからこそ、

この事態にヤマバがどうするか。


何気にこの板金屋に来た気がしているが

ヤマバが気になったのは嘘ではない。

トゥビーコンティニュー……

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