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★第15話:地上から見る空★

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住し、

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

そして地上に残る人々は空を見上げる。

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、遅延。

地上の人々はエターク周辺の影を昔から

ある者は羨望の眼差しで、

ある者は太陽を隠し続ける迷惑な存在として、

またある者はエターク警備隊の銃口が光る

危険な場所の合図として見ていた。


その空の一部が近付いている。

しかし幸か不幸か、

地上はすでに多くの人がいなくなり、

どこに落ちるのかさえわかれば

逃げ場はある程度、あちこちにあった。


地上では多くの人が太古の昔から営んでいる

食物を育てる事を続けていた。

そうする事で生きていけるし、

それ以外に何をすればいいのか、

思いも付かなかった。


地上の多くの場所は人がいなくなり、

ほぼ手付かずの自然になっている。

地上は自然の脅威に振り回されるが

それを受け入れた上で暮らすことを

よしとする人々の考えがある。


それを空中と地下は無理矢理

回避していると考える。

自然の摂理を受け入れてないと。

しかし人の歴史はそういった

理不尽さを回避、コントロールするために

発展してきた経緯がある。


空中都市や地下都市から見れば

地上の人間がやっている事を無駄だと思う。

空中も地下も

食物は自動で育てられ、

出産は妊娠または試験管を選択できる。


新しい生命に極端な話、恋愛は不要だ。

ただ集団で生活するには何かしらの理由が

必要で(人って面倒ね)そのためには

感情がその役割を担っている。

感情無しに(いや、無いことも無いんだろうけど)

世界が続いている空中都市と地下都市に

私は行くつもりはない。


地上の食物栽培地帯の側に建っている

この辺りでは珍しく高度なシステムを備えた

ビルのベランダから山井サエカリは

遠くに浮かぶ空中都市を眺めていた。


そんな考え事をしながら、

地上楽園化計画(全くふざけた名前。

いかにも夢みがちな父がつけた名前だわ、ったく)

のリーダーとして、父から一応受け継いだ格好で

集団を率いている。


「地上楽園化計画」の目標は空中都市の落下と

地下都市の廃止を掲げて地上の復権だ。


ただ、私はちょっと父とは違うのよね。

父は母と姉が行ってしまった空中都市に

恨みがあったんだろうけど

私は別に勝手にすればって感じ。


あーあ、空中都市が近付いてるわ。

焦ってんだろうなー。

ちょっとは自分だけが正しいとか

思ってる奴らが反省すればいいんだ。


そのためにこれもやらなきゃならない

セレモニーみたいなもんね。

なんせ、それを求める地上のメンバーが

いる限り仕方ないのよね。


その時、サエカリの携帯通信機が鳴る。

「はい、こちら『跳ねた山猫』。」

「こちら『深夜の小作人』。

報告があります。

現在エタークのCCCハッキングが進行しており、

空中都市が落下の態勢に入りました。」

「了解。それで、ちゃんと被害が出ないように

制御できてるのよね?」

「はっ、今の所、順調です。」

「オッケー、ではそのまま継続よろしく。」

「了解しました。」


通話を切ったサエカリはとりあえず今回の計画が

問題ない事を聞き、ゆっくり通信機を机に置いた。


地下都市のハッカー部隊はきっと優秀なんだろう。

そこに送り込んだスパイが今回の作戦を

影で主導している。


「さあ、始まった。

これから私たちの未来はどこに向かうのかしらね。

色々終わらして行くわ、父さん。」

トゥビーコンティニュー……

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