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★第10話:揺れない大地★

光暦3050年。

ある人々は空中都市を作り空に移住し、

ある人々は地下都市を作り地下に移住した。

空中都市、エターク。

地下都市、ニューグラ。

そして地上に残った人々は……

ディファレンス、ディビジョン、ディレイ。

違い、分裂、文書。

空中都市は浮かんでいる。

毎日太陽の日が注ぎ、

暖かいエネルギーに満ちている。


そこに暮らす人たちも災害の少ない都市として

安心して暮らしている。

というか能天気、

というか危機感ゼロ、

というか呑気、

というか……


そう、空中都市に暮らす人々は気付いていない。

お菓子についた虫が徐々に見えないところから、

その豊富な栄養を奪い取り、

やがて気付いた時には取り返しのつかない

事態になっていることを。


エターク。多くの人が憧れた空中都市。

そこに暮らす人たちは裕福で知恵もあり高貴だ。

いや、高貴だっだ……。

今はどうだろうか?

にわかスパイを送るほど何かに焦り、

何かに動かされている。


中央人工知能。CCC。ミチカゲ。

その存在は空中都市の心臓部。

それが止まればほぼなす術がない。

大体こんな大きな都市を

どんな技術で浮かばせている?


それはCCC、ミチカゲの力に他ならない。

太陽のエネルギーをふんだんに使い、

ミチカゲは途方もない計算を

とまることなく繰り返す。


風、温度、湿度、あらゆる外的要因を計算し、

それは空に浮かんでいる。

太陽を捨てた人々を嘲笑うように。

燦々と輝く光の恩恵に愛された大地。


それを実現した中央人工知能、CCC。

人々は完全にそのシステムの恩恵に身を委ねる。

まさにそれは揺れない大地、揺れない揺り籠だ。


人々はコンピュータによる助けにより

多くの複雑さを自分の中に持たずに外部に置いた。

空中都市では言葉も以前のように複雑でなくても事足りる。


空中都市は地上と様々なパイプと繋がっており、

そこから資源を得ている。

道路も整備されており、いつでも地上に降りることができる。

しかしながら外からの入場者には入口の警備で厳重に

取り締まりがされている。


かつて空中都市の裏側から(地上から見ると頭の上)

侵入しようとした人々がいたが、

空中都市の裏側には強力な防衛隊が常駐しており、

虫けらのように銃で落とされていった。



空中都市の浮遊装置管理制御室では

スパイ、に仕立て上げられたヤマバの後も

変わりのない日常が続いている。


ヤマバの後輩は今日も空中都市の浮遊数値を

監視している。

「先輩、元気にしてんすかね……。

案外、彼女とかできてたりして。」


ヤマバ去った後、新しく配属されたのは

長年空中都市で過ごしてきたシニア労働者だった。

「おい、そのヤマバとか言う奴は、

そりゃスパイらしく機敏で賢い奴なんじゃろ?」

「いや、ジィ、それがそうでも無いんすよ。

だからスパイなんて絶対似合ってないのになぁー。

なんで選ばれたんだろって思うんすよ。」


「ミチカゲ様の言うことじゃ。間違いないじゃろ。」

「ミチカゲ様って…なんすかそれ…」

老人の中央人工知能を仏のように言う様子に

後輩は苦笑いするしかなかった。



一方、地下都市の道路上ではカーチェイスは終わっていた。

「さあ、白状しなさいよ。

単なる越速犯じゃないことぐらい分かってんのよ。」

トゥビーコンティニュー……

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