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個毒幽戯  作者: 馬骨 牛久
第1章 東山小の丸鏡
6/6

6話 これから

・古来より鏡は真実を映し出す、嘘を見抜くなど映ったものに何らかの影響をもたらすと言われてきた。

どちらも視覚で見ることができないものを見ることに長けている特徴がある。

七不思議においてもそれは当てはまる。

辺りを見回すと見慣れた真っ赤な世界だった。

炎の揺らめきと反射した光、血によって真っ赤に染まった地面。その光景を見て俺は自分が夢の世界に来たことを自覚した。

力が入らず、ぼんやりと辺りを見回しながら夢に落ちる直前の事を思い返す。俺はさっきまで七不思議の調査のため廃校となった旧東山小学校に行って、七不思議が現れる時間になって、トランシーバーから変な音が聞こえた後にそれから…

そうだ、あの後校舎がおかしなことになって。先輩は。先輩は無事だろうか?というか俺はなんで今この夢見て…

もしかして眠ったのか?あの状況で?そんな馬鹿な。

とにかく早く目覚めないと。

どうにか目覚めようと体に力を入れたり、目を大きく開けたりしてみるが特に変化は訪れない。

ため息をつきながらふと目の前を見ると俺は思わず固まってしまう。




目の前に〈夢のアイツ〉がいたのだ。





『縺ゅ≠縺ゅ≠縺』





血まみれの地面に這い蹲るソレは、6本の腕をグネグネと動かしながら人とも獣とも言い難い不快な音を発しながら蠢いている。

俺は思わず息を飲む。

普段は空中に空いた穴から這い出てきていたソレが、既に俺の目の前にいた。

何年もこの夢を見続けてきたが、全てが同じ夢だった。血まみれの地面、燃え盛る炎、空中から現れるソレ。

だが今回は、今までと違いソレは『もう目の前にいたのだ。』


『驕ゅ↓蜃コ莨壹▲縺ヲ縺励∪縺」縺溘?縺ァ縺吶?』


今までの夢と違うのは状況だけではない。ソレの動きもまた前回とは違う。

ソレは今までの夢では空から現れては俺に近づいて来ていた。しかし、俺に近づくことなく不快な声を発し続けている。


『縺ゥ縺?°縲√←縺?°縲ゆケ励j雜翫∴縺ヲ縺上□縺輔>縲』


少し時間が経った後にだんだん視界が暗転していく。目覚めが近いのだろうか?夢から覚める時もチャンネルを切り替えたように突然終わっていた筈なのに。


泥沼に沈むように、世界の色が変わっていく。


『縺阪▲縺ィ縲ゅ≠縺ェ縺溘↑繧峨%縺ョ蜻ェ縺?r』


世界が塗りつぶされていく間際に見た血溜まりにいるソレは、




どこか『悲しそうに泣いているよう

』に見えた。





~~~


「うぅ…」


響くような頭痛に襲われながら目を開いていく。どうやら気を失っていたようだ。辺りを見回すとあんなに鳴り響いていた雨と風は無くなっており、校舎は不気味なほどの静寂に包まれていた。



()()はまだハッキリしない頭で気を失う直前に何が起こったのか思い返す。


あの時、七不思議の時間になって、トランシーバーからすっごいノイズがして。窓から特別棟を見たら屋上から…



「あーやん…そうだ!亜弥は!?」



廊下にしゃがみ込んでいたが飛び跳ねるように立ち上がり、廊下の窓から特別棟を見ようとしたのだが、



「え…?」



『覗いた窓の先には何も無かった。』



いや、何も無いというよりは『真っ黒』なのだ。窓の向こう側が。

まるで黒いインクがたくさん入ったバケツをひっくり返したかのような、向こう側が何も見えない暗黒が広がっていた。

さらにそれだけではなく、


「なにこれ…?よく見ると校舎も…」


再度辺りを見渡すと校舎の異常さに今になって気付いた。外は真っ暗で月の光などの光源が無いにも関わらず、校舎の中はある程度の薄暗さはあるものの視界には廊下の風景が映っていた。

しかも、床に飛び散っていたガラス片や砂利、老朽化によって一部が所々剥がれ落ちていた教室や廊下の壁などは、最初からそんなものは無かったかのように跡形もなく綺麗になっており、この場所が廃校だったとは思えないほど綺麗な廊下や教室を映し出していた。

今まで体験した事の無い明らかな異常事態に私の心臓は早鐘を打ち、自然と呼吸が荒くなっていった。


「みんなは…他のみんなは…」


呆然とした頭の中で自分と同じように学校に来た仲間達を思い出す。そしてこの廃校で出会った2人の高校生達のことも。

近くに落ちていた自分のトランシーバーを拾いなおして、通信を行うためにボタンを押す。


「誰か聞こえる!?聞こえたら返事して!何が起こってるの!?」


現在も続く怪奇現象と1人という状況からうちの声は震えて上擦り、必要以上の大きな声でトランシーバーに話しかけていた。

うちのいる本棟にはあの高校生2人とデスヘブンがいた。私がこんな状況にある以上、みんなも同じ状況になっている筈。それに、飛び降りた亜弥がいた特別棟には秀明もいたはず。もしかしたら何が知っているかもしれない。

そうしてトランシーバーの返答を待っていると少しの静寂のあとにトランシーバーから声が聞こえてきた。


《こ、こちらデスヘブンだZE…お前ら無事か…?外見たか?なんだよコレ…!一体どうなってんだYO!?》

《あ、あの!花村です!こっちもたぶん同じような状況です!外が真っ暗で…!》


トランシーバーから交互に男性と女性の声が聞こえた。喋り方から察するに健太と花村ちゃんだ。

どうやら2人は無事だったようだが窓について動揺しているので自分と同じような状況になっているのだろう。

しかし、古澤くんと秀明の声はトランシーバーから聞こえない。


「ひであ…カッシー!?聞こえる!?聞こえたらすぐに返事して!」

《彰人くん!?彰人くん大丈夫!?ねぇ…!》


うちとトランシーバーから聞こえる花村ちゃんの悲痛な声が廃校となった校舎に響く。感情的なうちらとは裏腹に校舎は不気味な程に静まり返っている。

しかし、呼ばれた2人からは返事が無い。


《あの…!本棟の私達だけでも集合しませんか!?少なくとも今は普通の状態じゃないですし、一旦みんな合流しましょう!》


花村ちゃんが呼びかける。この異変が起こる前にうちと健太と花村ちゃん、それに返事が無かった古澤くんも本棟組だ。集合するのは可能だろう。

今は他に案が無い上に、このままバラバラでいると何が起こるか分からない。一旦集合するという案には賛成だった。


《分かった。なら一旦本棟のうちらだけでも集合しようか。集合場所は返事が無い古澤くんのいた3階の西階段にしよう。》

《分かりました!》

《りょ、了解…》


そうしてトランシーバーからみんなの声が消える。

うちは顔を上げて廊下の奥を懐中電灯で照らして歩き出す。薄暗い廊下は静まり帰っており、自分から発せられる靴の音がいつもより大きく感じられる。

周りを観察し、恐る恐る進みながらこの異常な光景に息を飲む。この活動を何年かしているがこんな事は初めてだ。もしかしたら怪奇現象を体験することがあるかもとはうっすら思っていたが、いざ実際に体験するとどうしようも無いほど不安に襲われる。


「はは…」


自然と乾いた笑いが出た。

いつもそうなんだ。口では偉そうな事を言うくせにいざその時が訪れると恐怖で体が動かなくなる。若い頃、自分は何にでもなれると本気で信じていた。根拠の無い自信があって、周りの失敗に目を向けずに夢ばかり追い続けた。

自分は当たり前のように幸せな人生を歩むと思っていた。でも現実はそんなに甘くなかった。

友達の真似をして、有名になるという浅い理想を持って上京した。けど、自分の代わりなんてたくさんいて、それ以上に自分以上の人間がたくさんいた。恐怖で口は開かず、何かをするでもなく誰にも知られず消えていった有象無象の1人だ。

もしかしたらうちの人生もここで消えるのだろうか。


「…」


首を振る。ネガティブな思考を無理やり振り落とすように。今はそんなこと言っている場合では無い。あの時、現状を何とかしようと動いたのは自分より歳が下の女の子だった。うちはもう大人だ。例え無駄な人生を送ったとしても今は頼れる大人としてしっかりしないと。

そうこう考えているうちに階段に着いた。階段を降りて3階に向かう。



~~~



「………!………!」



誰かの声がする。近くの筈なのに遠くにいるかのようだ。そして自分の体が揺さぶられている感覚がある。揺さぶられる度に朧気な意識が鮮明になっていく。


「う…」

「…!起きた!良かった!彰人くん大丈夫!?しっかりして!」


目を開けると今にも泣きだそうな顔をしている花村先輩が視界に映る。

俺がゆっくり起き上がると安心したのかホッと一息を吐く。


「良かった…トランシーバーから全然返事が無いし、ここに来たら彰人くん倒れてるから死んじゃったかと思って…」

「そうか…俺気絶して…心配をおかけしてすみません。」


そうして起き上がって辺りを見回すとさっきまでいた学校とは雰囲気が変化していた。脳が一瞬フリーズし、遅れて目の前の現実を処理し始める。

しかし、出てきた感情は疑問と困惑だけだった。


「え、なにこれ?」

「そう!そうなの!今大変なことになってるんだよ!それでみんなバラバラだったからとりあえず彰人くんの所にみんな集合してるんだ!」

「そうなんですね。てことは皆さん無事だったんですね。」

「うん…けどあーやんさんとカッシーさんは返事が無かったよ…」

「…」


花村先輩の発言に俺は押し黙る。まだはっきりとしたわけではないが、あーやんさんに関しては少なくとも普通の状態では無いとは思う。

気絶する前に見た飛び降りるあーやんさんが夢や幻覚の類なら話は変わるが、この様子だとあの光景を見たのは自分だけでは無いようだ。


「とりあえず本棟にいた2人が来るのを待ちましょう。」

「そうだね。そうしようか。」


そうして残りの2人が来るのを待っていたが5分もしないうちにデスヘブンさんが現れ、間もなくポンチョさんが現れた。



~~~



そうして集合した俺達は現状の状況を把握するために空いた教室の中で情報を共有し始めた。

ホコリだらけだった荒廃した教室は、少し古臭さを感じるものの綺麗な状態になっている。

神妙な顔をしながら俺達は向かい合い、話し合いを始める。


「情報を共有した感じ、『異変が起こった2時22分の段階だとみんな同じ状況だったみたいですね。』トランシーバーからノイズがして、外に出た様な音がしたので特別棟を見ると、飛び降りるあーやんさんがいて、チャイムが鳴ったのが聞こえたら気を失ったと。」

「ああ、そうだZE。しかもなんでかスマホで助けを呼ぼうにも圏外になっててどうにもできねぇしYO…まるでホラー映画だZE。」


全員のスマホを確認したが全て『圏外』になっていた。異変が起こる前は問題なく使えていたにも関わらずこの有り様だ。急に多数のスマホの電波が無くなることなどあるのだろうか?

デスヘブンさんの言うように完全にホラー映画のように閉じ込められているようだ。


「でもなんだか学校が少し綺麗になってますよね。廊下に落ちてたガラスも無くなってたりしましたし。」

「あ、それうちも思った。なんか全体的に綺麗になっているよね。」


花村先輩の問いかけにポンチョさんが同意し辺りを見回す。全員がそれに釣られるように辺りを見回す。綺麗になっただけでなく、壁には来た時には無かった授業で書いたのであろう書道の半紙がかかっている。さらに黒板は10年前に廃校になったはずなのに傷1つついておらず、完全に新品というほどではないもののある程度綺麗に保たれている。

つい先程まで見るも無惨な廃墟になっていたのに、人がいた時のような綺麗な状態になった。

これはまるで、


「綺麗になったというより、『綺麗な時に戻った』みたいですよね。」


そうして全員が固唾を呑む。全員がうっすらと考えていたのだろう。沈黙が辺りを包む。

視線が先程の傷がついていない黒板に向く。その右下にはこのクラスの当番の氏名と共に日付が記入されている。


「この年って、ちょうど『10年前』ですよね。」

「おいおい…!つぅーこtoはYO…!俺たちは過去の…『10年前の東山小学校』に来ちまってるって…ことぉ!?」

「そんな…!」


あまりにも非現実的な状況なのだが、こうしてありえない状況に置かれている以上そう考えるのが妥当だろう。

全員が緊張と焦りを隠せない中、デスヘブンさんがおずおずと切り出す。


「けどYO…ここが10年前の東山小学校だとして、これからどうすりゃ良いんだYO…助けは呼べねぇし、外に出ようにも窓はなぜか開かねぇSI…というか窓の先は全然見えねぇしYO…」


デスヘブンさんが言うように窓はなぜか開くことができなかった。教室の椅子を投げて割ろうとしても傷1つつかなかった。さらに窓の先は真っ黒な空間になっており、仮に窓を開けられたとしてもその先がちゃんと自分達の知っている世界に繋がっていることは確信が持てなかった。

完全に閉じ込められている状況にある。


「これが七不思議の影響なら、私たちこれからどうなっちゃうんでしょうか…」


花村先輩が消え入るような声で呟く。膝の上で組まれた両手は微かに震えているように見える。


「そういえばカッシーさんからはあれから連絡は無いんですか?」


ふと気になったことを聞く。俺達と違って特別棟にいたもう1人の人物であるカッシーさんという人からはまだ連絡は戻ってきていないようだ。

もしかしたらあーやんさんがおかしな行動を取った時、何が起こっていたか聞けるかもしれない。


「ダメだね。まったく連絡がないよ。あれから何回か呼びかけてはいるんだけどね。」

「そうですか…」


そうして俺は少し考える。本棟にいる俺達は問題なくトランシーバーを使うことができたが特別棟にいたカッシーさんからは返事が無いということは。


「『もう既に何かに巻き込まれたか』、『特別棟はこの状況になっておらず元の現実にいるままか』、『特別棟と本棟は通信ができないのどれかですかね?』」


こんな状況では正解なんて分からないのだが候補として考えられるのはこの辺りだろうか。


「とりあえず今は定期的にトランシーバーで呼びかけ続けてみようかな。」

「分かりました。それで、この状況を省みるに七不思議が関係しているのは確定だと思っていいと思います。」

「そうだNA…あ!もしかしてあーやんが飛び降りちまったのってYO…!」


デスヘブンさんが少し考えると閃いたように手を打つ。

少し遅れて同じ考えにたどり着いたのか、花村先輩もハッとした顔をする。


「丸鏡を見てしまって、質問に答えられなかったから…?」


東山小の丸鏡。『質問に答えられなかった者を屋上から飛び降りさせる』という七不思議。

それならあーやんさんが飛び降りたのも納得できる。


「でも七不思議にはこんな異界に連れ去るとかいう情報はありませんでしたよね?」


俺の発言にポンチョさんが思い出すように顎に手をやる。


「そうだね。うちも聞いた事無いかも。」


俺達の疑問に少し考える素振りを見せた花村先輩は腕を組みながら答える。


「うーん、七不思議に関わらず、『伝承とか言い伝えって時代によって変わるものだし』、もしかしたら『本来の七不思議』がこういう形なのかもしれません。」


七不思議を実際に体験した人間がいない以上、どうしても噂というものは変質して尾ひれが着いてゆくものだろう。

花村先輩の意見に同意する。


「そうですね。俺もそんな気がしてきました。」

「じゃ、じゃあどうすることもできないのKA…?七不思議は変化して間違っている可能性があるなら打つ手は無いってことかYO…?」


デスヘブンさんが魂が抜けたように近くの椅子に座り込んで俯いてしまう。

ポンチョさんは口をキュッと結んで何か考えている。

花村先輩も何か解決の糸口が無いか思い返そうとウンウンと唸り声を上げている。

現状、今は情報が少ないのでどうにもすることができない。まずは手がかりを探してみよう。


「今は情報が必要ですね。この状況が七不思議が起こしたものなのだとしたら、きっと俺達があーやんさんのようにならずに閉じ込められているのには何か意味がある筈です。」

「そうですよ!きっとなにか手がかりが…」


そこまで言って花村先輩はピタッと止まる。


「そういえばデスヘブンさん。『各階の階段前にスマホを置いてある』って言ってましたよね?」

「え?あぁ…そうだけDO?」

「あ!そうか!」


花村先輩の質問に遅れてポンチョさんがハッとした声を上げる。


「そうですよ!スマホ!あれたしかデスヘブンさんは見れるって言ってましたよね?異変が起こった時のあーやんさんの所のスマホの記録を見ればなにか分かるかも!」


『各階の踊り場には七不思議の記録用にスマホが置かれ、動画を回していた。』もしかしたら何か手がかりが残っているかもしれない。一筋の希望が見えてきたのでキラキラと目を輝かせている花村先輩とは対照的にデスヘブンさんは浮かない顔をしている。


「悪ぃけどYO…あれは後で編集しようと思っていたやつだから今ここでその記録を見ることはできねぇんDA…」

「あ、そうなんですね…」


しかしデスヘブンさんによって花村先輩はまた落ち込んでしまう。

しかし、花村先輩の発言によって生まれた希望の光はまだ消えていない。


「いえ、先輩。ナイス気づきですよそれ。スマホの情報は重要です。」

「え?いやでも、見ることはできないって…」

「それは今ここで見ることはできないってことですよね?それなら直接見ればいいんですよ。」


俺の発言にポンチョさんが真意に気付いたようで焦り顔を浮かべ、反論する。


「ちょっと待って!それって『特別棟にいってスマホを回収する』ってこと!?それは危ないんじゃない!?」

「大丈夫です。何も全員で行くことはありませんよ。回収しに行くのは1人で充分だと思います。あ、その回収しに行く人はもちろん言い出しっぺですし、俺が行きます。」


ポンチョさんの発言によって内容を理解した花村先輩は続く俺の発言に顔を青ざめて割って入るように声を上げる。


「ダメだよ!特別棟は間違いなく何かが起こった場所なんだよ!?何が起こるか分からないし1人なんて絶対危ないよ!彰人くんが行くなら私も…!」

「いえ、何が起こるか分からない以上リスクは最小限に抑えるべきです。先輩はここでポンチョさん達と一緒にいてください。」

「でもだからって彰人くんが行くことは…!」


花村先輩の発言に視界の隅でデスヘブンさんがビクリと反応し、ソワソワし始める。


「いえ、先輩。これは俺が行くべきです。このメンバーの中で1番七不思議に詳しくないのは俺です。この先何かあった時、俺が残っても生き残る可能性はほぼ0です。ここは俺が行くべきなんです。」

「彰人くん…!」


それでも尚食い下がろうとする花村先輩を見てポンチョさんが割って入る。


「うちも反対だよ古澤くん。大人として君の発言は認める訳には行かない。けど、」


ポンチョさんは苦しげな顔を浮かべた後、真っ直ぐこちらを見つめて言う。


「君の意見が最善策なのも分かったよ。だからこうしない?」


そう言ってポンチョさんは自身を指差し、


「うちもついて行くよ。」

「HA!?」

「えっ!?」


ポンチョさんの発言にデスヘブンさんと花村先輩が驚きの声を上げる。


「お、おい!なんでポンチョまで行くことになってんだYO!」

「そ、そうですよ!それに行くなら私が!」

「当たり前だよ。子供が頑張ってるのに大人のうちが黙って待ってるだけなんて絶対間違ってるよ。それにゆーてうちもデスヘブンや花村ちゃんみたいに七不思議とかすごく詳しい訳じゃ無いよ。精々古澤くんより少し知ってるくらいだから大差ないと思う。」


リスクを減らすという意味なら俺1人が理想だったのだがポンチョさんがついて行く流れになりそうだ。

しかし、


「ッ~~~…!」


視界の端でデスヘブンさんがうんうんと悩んでいる。顔を見ると額には汗が浮かび、かなり葛藤しているように見える。その後、何かを決意したようにカッと目を見開いた。


「待てYO!なら俺がいくZE!」

「え?」


デスヘブンさんが唐突に軍人のような綺麗な挙手で立ち上がる。俺達はデスヘブンさんに向き直る。


「ポンチョが危険な役になる必要ねぇと思うしYO…代わりに俺がいくZE!特別棟に何か異変が起きてるなら七不思議に少し詳しいやつがいた方がいいだRO!?それに大人がどうこうって言うなら俺もそうだZE!こういうのは男の仕事DA!」

「デスヘブンさん…」

「健太…」


花村先輩とポンチョさんが驚きの声を上げる。ポンチョさんにいたっては恐らく本名まで言ってしまっている。

デスヘブンさんは俺の手を唐突に掴んで教室の扉に向かってズカズカと歩き始める。

握られている手からは汗ばんだ感触がしており、デスヘブンさんの緊張を伝えてくる。


「そんな感じで夜露死苦☆!お前らは大人しくそこで待ってろYO!いいNA!?」

「あ、ポンチョさん。特別棟に行く直前にある『渡り廊下で1回連絡入れます』。なるべく早く戻るようにしますが1時間以上経過して俺達が戻ってこなかったら申し訳ないですけど他の脱出方法を考えてください。」

「わ、分かったよ。」


ポンチョさんは苦虫を噛み潰したような表情を一瞬浮かべたがすぐに決意に満ちた顔を浮かべる。

俺はデスヘブンさんについていくように前を向く。


「あ!彰人くん!」


デスヘブンさんが扉に手をかけると同時に花村先輩がこちらに声をかける。

振り向くと震えながら祈るように胸の前で両手を握りしめる花村先輩が見える。


「無事に…帰ってきてね…」

「…」


ここから先は何があるか分からない。無事に帰れる保証なんて無い。

しかし、こう言わなければならないような気がして。

俺はハッキリと言葉にして花村先輩に伝える。


「絶対に戻ります。」


俺とデスヘブンさんは扉を閉めて、特別棟と本棟を繋ぐ渡り廊下に向かって歩き出した。










・デスヘブン=菊池きくち 健太けんた


性別 男


身長 175cm


年齢 23歳


運動能力 A


知能 E


コミュニケーション能力 D


運 A


??? なし




メモ


・茶髪のドレッドヘアが特徴の成人男性。心霊スポット探索系配信グループ「BAD SAMURAI」のリーダー。派手な見た目をしているが暴力にはめっぽう弱い。騙されやすい性格をしており中学時代の先輩から万引きや窃盗などの犯罪をさせられていた。本人は当時事の重大さを理解していなかったが後に麻薬関係の事件に巻き込まれかけたため以来先輩との関係は絶っており真面目に働いている。趣味はプラモデル制作。好きな食べ物はラーメン。知能は小学生4年生くらい。普段はアルバイトを掛け持ちして暮らしている。ドレッドヘアを維持するために美容室に通っているが値段が高く、支払いの際にワンテンポ間がある。おみくじは中吉か大吉しか当たらない。怖がりのためホラー映画はネタバレを少し見てから挑むが結局怖がる。

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