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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
頑張れ! 石川 能登!!
これ以上の被害がでませんように。
すると、話しかける機会を窺っていた貴族たちが二人のそばに近づいてきた。
その中にはマリーもいた。マリーは誰よりも素早く前に出てくると、ジョゼフィーヌを突き飛ばしサミュエルの横に立った。
同時に二人とも他の令嬢や令息に一気に囲まれた。ジョゼフィーヌはそれを見届けると、そっとそばを離れた。
サミュエルもアレルもジョゼフィーヌを気にしていたが、挨拶をする貴族に阻まれ追いかけることができないようだった。
それを見てジョゼフィーヌは胸を撫で下ろす。
あれだけ騒がしくされてしまえば、サミュエルの思惑通りこのままスケープゴートにされ断罪されかねない。
ジョゼフィーヌは、このあとお茶会で二人から遠ざかり徹底的に接触しないように過ごすと、さっさと屋敷へ戻ることにした。
こっそり会場を抜け出そうとしたその時、目の前にマリーが立ちふさがった。
「ちょっと、ジョゼフィーヌ貴女どういうつもり?」
「なんですの?」
「とぼけないで、私たちの邪魔をしているでしょう? 目障りですの」
ジョゼフィーヌはさっした。マリー自身がサミュエルとジョゼフィーヌの仲を誤解しているようだと。
「オドラン男爵令嬢、誤解ですわ。王太子殿下はオドラン男爵令嬢との仲を周囲に知られないよう私をカモフラージュに使っているだけですわ」
すると、マリーは少し考えてからニヤリと笑った。
「そっか、そうよねだって貴女ってば全然誰にも相手にされない設定ですものね」
設定? もしかしてマリーも転生者なのだろうか?
そんなことを考えているジョゼフィーヌを余所に、マリーは続ける。
「それにしても、カモフラージュ?! いくらなんでも可哀想~。まぁ、仕方ないわよね誰にも愛されない設定の悪役令嬢ですもの。私のためにせいぜい頑張ってその役を全うしてちょうだい」
それだけ言うと、ようやくジョゼフィーヌを解放した。
ジョゼフィーヌは内心思う、冗談じゃない。マリーの言う役を全うしろとは、断罪されろということだろう。
そうなってたまるものですか!
そう思いながら屋敷にもどると断罪される材料を与えないためにも、その後は一切社交界に顔を出さないことにした。
その後はとにかく体調が悪く、病気で外にも出られないと触れ込み毎日来るサミュエルからの誘いも、アレルからの誘いもすべて断った。
屋敷から一歩も出られなくなったが、それも仕方のないことだと諦めた。
父親には社交界で変な噂を立てられているからほとぼりが冷めるまでは屋敷から出たくないと伝えると、あっさり許しを出したのでなにか知っているのかも知れないと思った。
ゲーム内では婚約発表があるのは、最初の舞踏会から半年後となっていた。この時点であと三ヶ月ほどだったので、それまでの我慢だと思うことにした。
そんなある日、とうとう我慢できずに屋敷の周囲を少しだけ散歩しに外へ出た。
「外の空気はやっぱりいいわね」
思い切り深呼吸をすると、付き添ってくれているサニアにそう言って微笑みかけた。と、その時、通りを豪奢な馬車か通るのが見えた。馬車の側面にはサミュエルの紋章が入っている。
ジョゼフィーヌは慌てて建物の陰に隠れて、その馬車が通りすぎるのを見つめていると、馬車にサミュエルとマリーが乗っているのが見えた。
あの二人うまくいっているのね。
ジョゼフィーヌは少しだけ胸の奥が痛んだが、そんな気持ちを振り払い屋敷に向かって歩き始めた。
そうして二週間ほど経ったころ、突然来月にサミュエルの婚約者発表があると王宮からお達しがあった。
二人の仲が深まって婚約発表が早くなったのだろう。とりあえず、これさえ無事に乗り切れば外に出られるので、早まるのはジョゼフィーヌにとってはありがたかった。
だが急な話で社交界では大騒ぎとなり、発表に合わせて王宮で舞踏会が開かれることになったのでその準備に追われた。
ゲーム内通り、婚約者にも知らされずその場で発表となるらしい。
ジョゼフィーヌはゲーム内の断罪シーンを思い出す。
サミュエルを攻略すると、マリーが婚約者として選ばれたことに納得のいかないジョゼフィーヌがその場でマリーに対し罵詈雑言を浴びせる。
それを見かねたサミュエルによって、今までの悪行を咎められ断罪される。
そんな流れだったはずだ。確かジョゼフィーヌのその後は国外追放だったと記憶している。
画面の向こう側でゲームを楽しんでいた頃は、なんとも思わなかったが、侯爵令嬢が嫌がらせ程度で国内から追放されるなんてあり得ないと今は思う。
特にアルシェ侯爵家はそれなりに権力も財力もあり、国の政に口を出せる立場にある。なので、流石にそう簡単に追放とまではいかないだろうとジョゼフィーヌは自分を落ち着かせた。
そうして暗い気持ちで舞踏会へ向けて準備を始めた。
ドレスを新調するつもりでいたが、サミュエルとアレル両者からこのドレスを着て欲しいと新たなドレスと宝飾品のプレゼントがあった。
今回ばかりは婚約者発表の場ということもあり、サミュエルの顔を立てるつもりでサミュエルからプレゼントされたドレスを着ることにした。
舞踏会当日、王宮へ向かう馬車の中でやはり自分が断罪されてしまうのではないかという不安に押し潰されそうになりながら窓の外を眺めていた。
とにかく断罪されそうになったら、気を失ったふりをしよう。ジョゼフィーヌはそこまで考えていた。
会場へ着くと、俯きいつものように誰にも気づかれないように壁際に立った。ホール内を盗み見ると、婚約者候補の令嬢たちが楽しそうにホールの中心に集まりおしゃべりをしている。
ジョゼフィーヌはそれを羨望の眼差しで見つめていた。彼女たちはここでサミュエルに選ばれなかったとしても、いずれは誰かと婚姻し幸せになれる未来が待っている。
それだけでも羨ましいと思った。彼女たちの表情は輝いていた。
すると、静かな音楽を奏でていた楽団が突然厳かな音楽に曲を変えた。その場にいる者すべてがサミュエルの会場入りを予想し扉を見つめる中、サミュエルが会場入りした。
令嬢たちは羨望の眼差しでサミュエルを見つめている。
そんな中でサミュエルの挨拶が始まった。ジョゼフィーヌはゲームの再現を見ているようだと思いながらそれを聞いていた。
「今日は急な話にも関わらずこうして集まってくれたことをとても嬉しく思う。私も成人を迎えもうそろそろ父のあとを継ぐべく、身を固めなければならない時期に入っている。継承問題は国の将来に関する重要事項でもあることだ。だからこうしてみんなに発表する場をもうけるのは大切なことだと私も十分理解しているし、この発表と共に婚約をみんなにも祝ってもらいたいとも思っている」
そこまで話すと一息つく。
「さて、なんだかんだ言ったが面倒臭い挨拶は適当にここまでとしよう。みんなも本音ではこんな退屈な挨拶は聞きたくもないだろう」
その台詞に会場からはどっと笑いが沸く。それが収まるのを待つとサミュエルは続ける。
「私の御託なんかよりも、もっと聞きたいことがみんなにはあるだろう。まず、これに決着をつけたいと思う。言わずもがな、私の婚約者のことだ」
そう言うと、サミュエルは微笑みゆっくり話し出す。
「その女性は、明るく、素直で、けっして自分を飾ることなく私を導いてくれた」
誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。