002マルガレーテとの出会い
自ら望んで転生した僕、不破明日斗だったが目が覚めるとゴブリンの群れに囲まれていた。
さあどうしたものか、でも僕には焦りはなかった。
体の内側から力が漲って来るのが解る、取り込んだメフィストフェレスの力が。
「そこな少年!うつ伏せになって頭を低くしろ!」
急に声がした僕にだと思われる呼び掛けに、反射的に体が動いた。
「旋風槍!」
うつ伏せになった僕の上を、物凄い衝撃波が駆け抜けて行ったのが解った。
「少年、もう頭を上げていいぞ」
頭を上げた僕が目にした光景は、あれだけ居たゴブリンが全て体を胴体から断ち切られて、上半身と下半身がサヨウナラしていた。
あの時僕が頭を低くしなかったとしたら……いやっ多分今の僕ならそれでも平気ではあっただろうが。
「無事なようだな少年、名は?」
声の方をむくと、長い槍を持ち軽鎧を着た女性騎士が居た、美人さんだ、それに強い、ホレた、一目惚れだ。
「助けて貰ったようでありがとうございます、僕の名前は不破明日斗貴女は?」
「ファーストか2ndやら3rdも居たりするのか?私はグレートヒェン、いやっ本名はマルガレーテでマーガレットとも呼ばれたりするが、まあ好きに呼んでくれ」
「真珠の意味を持つ花の名前ですね、素敵な名前だ。ではリタと呼ばせてもらいますね」
「うっそれは私の子供の頃の愛称、何故君がそれを知っているのだ」
「くすくす本で読みましたからマーガレットの愛称はリタだってね」
少し恥ずかしそうにしているリタを眺める、それにしても美しい女性だ。
元の世界で言うアーリア人に当たるのだろうか、金髪碧眼で透き通るような肌、スラリと延びた手足。
家では病気のためなかなか外にも出れず、日本人の女の子さえ滅多に目にする事はなかったが、こんな妖精のような、もしかしたらエルフとはこんな女性なのかとも思える女の子が居るとは。
この子はヒューマンのようだが。
華奢な体躯から想像するに、長い槍はパワー不足を補って遠心力で敵を倒す為の物なのであろう、いやっゴブリンたちを真っ二つにした事を思えば充分パワーはあるように思うのだけれど。
「リタ!僕は今まで狭い閉じられた世界で生きてきました、僕は広い世界が見たい出来ればその……リタと一緒に!」
「困っている人を助けるのも騎士の仕事だ、私は君の手助けをする事を誓おう、今まで君がどんな世界で生きてきたのかは知らんが兎に角私は王都へ戻る、そこが君にとっても広い世界であるだろう……私と一緒にってのは安全だからかな?」
「Please marry me.」
「いっイキナリだなキミ、わ、悪い気はしないが、返事は後だ兎に角王都へ向かうぞ!」
これが僕とリタと出会いであった。