後編
「知らない天井だ」
目を覚ますと、俺は知らない部屋の中にいた。
ここはどこなのだろうと辺りを見回す。
どうやらここは和室の中らしい。
そんなことを考えていると、急にふすまが開く。
「む、目を覚ましたのじゃな」
「君は……」
入ってきたのは、意識を失う前に見た狐耳の少女であった。
「儂の名前はマナ。
この神社の主みたいなものじゃ」
「マナ……さん。
アナタが私を助けてくれたのですか?」
「ああ、無理に敬語を使う必要はないぞ。
堅苦しいのは苦手じゃからの」
「分かったよ、マナ。
それで俺のことを助けてくれたのって……」
「ああ、儂じゃ。
ウチの神社の前で行き倒れていたからの。
あのままにしても置けなかったしウチに連れてきたんじゃ」
「ありがとう、マナ。
助かったよ」
「よいよい。困ったときはお互い様じゃしの」
そう言いながら、照れ臭そうにそっぽを向く彼女。
そのしっぽは嬉しそうに揺れていた。
「しかし、幸男よ。お主はなんであんなところで行き倒れていたんじゃ?」
「ああ、実は……」
って、あれ?
俺、名前を教えたっけ。
疑問を覚えながら、俺は彼女に自分が行き倒れた経緯を話すのであった。
「なるほど。それは辛かったのう」
そう言いながら、彼女は俺のことを急に抱きしめてきた。
「マナさん!?」
「よい、今は何も考えるな。
儂の胸ならいくらでも貸してやる。
だから、辛い気持ちは全部ここで吐き出してしまうのじゃ」
そう言って、彼女は俺の心を癒すようにゆっくりと頭をなでるのであった。
俺は、そんな彼女の胸の中で胸に詰まったものを吐き出したのであった。
彼女は俺を抱きしめながら、慈しむように頭をなで続けるのであった。
「おや、泣き疲れて眠ってしまったようじゃの。
よい、今はここでゆっくり眠るのじゃ。
大丈夫、もうお主を苦しませることは絶対に起きん。
安心して眠るのじゃ、幸男よ……。
そう、僕の愛しい愛しい兄さん……」