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別路

作者: あ。


「なぁ、俺たちさぁ…!」

バイクの後ろで私は彼の大きくてあったかい温もりを感じていた。彼の声は冬の海風にさらわれていく。

「なに?きこえないの!」

少し曇っている空に向かって叫ぶように上を向いて話す。彼が一瞬振り向いて何か言った気がしたけれど、ヘルメットが邪魔でよく見えなかった。

彼は少しするとバイクを自動販売機の前に止め、ヘルメットをとった。コーヒーを二つ買い、私に一本を差し出して

「お前、さっき俺の声きこえてなかっただろ?」

と悪戯をする子供のように無邪気に笑いかけ、革の手袋をつけたままポンっと私の頭にコーヒーをのせる。

「っおとと、ありがと…なにいってたの?」

頭上のコーヒーを受けとる。

「んー?んや、いいや」

ヘヘッと笑いコーヒーを一気に流し込み彼はまたバイクにまたがった。

「さっさと飲めよ、おいてくぞ?」

そう言ってヘルメットを私へと差し出す。私は飲めないコーヒーを半ば無理矢理胃に流し込んだ。


それから4年経った今日。

「俺たち…別れようか」

彼はほそい坂道の途中に私へと告げた。少し震えた消えいりそうな声は私の脳内で何度も再生される。

「そっか。うん…わかったよ。ありがとう」

精一杯彼を見つめて答える。涙が溢れてしまう前に交差点で私たちは別れた。私とは反対の方向と進んでいった彼を背中にゆっくりと歩く。もし、交差点へと走って戻ったら彼はいつもみたいに抱き寄せてくれるだろうか。そんな叶いもしないことを考えながら私は一人涙を拭いながらあるいた。

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