希望の光
私の光は誰にも気付かれない。ずっとそう思って生きてきた。全てのことが平均の私だから。得意なことも何もない。自信も持てない。特徴のない、個性のない私がいる。顔が可愛いとか、性格がいいとか言われてる子が羨ましかった。でも、そのためにした努力は何も発揮されなかった。毎日をただ、過ごしていた。
今日も重い足を動かして、街を歩く。特に理由もないけど自分を着飾って。そんな中、1人の男が目に付いた。ミニスカートを履いて、ロングのウィッグをつけて、ピンヒールを履きこなす。そんな彼が一際輝いて見えた。周りの目線は冷たかった。私だけが、彼の世界に引き込まれた。ここで声を書けなかったら終わる。そう感じたが、声をかけるという1歩が進まない。だって、こんな私だ。貫く自分が居ない。自分を身にまとった彼は、私にとっては羨ましい存在だ。私は目を逸らした。そして、歩き始めた。
「あのっ……。」
近くから声が聞こえてきた。
「はっはいっ!」
振り向くとさっきの彼がいた。
「ねぇ、その服どこで買ってるの?」
私の袖をそっと引っ張った。私は、ロリィタ服が好き。自分の顔に1番合っていると思うから。
「これは、手作りです。母が服を作っているので。」
「お母様が作ってるの?僕に紹介してくれない。一目惚れしちゃった。」
「あの、母はシンプルなデザインしか作らないんです。これは、私が作ってます。」
今日来ているワンピースは、1番綺麗に出来た服だ。やっと作りなれてきて、やっと出かけられるような服が出来た。
「きっ君が?あの、僕の服を作ってください。」
両手を握られ、ドキッとする。唯一私ができる服を作ること。それを褒められてしまっては、私はどうすることも出来なかった。
「分かりました。連絡先を頂いてもいいですか?」
そう言ってLINEを交換した。
ただ、嬉しかった。自分の作った服を褒められただけではなく、着たいと言われたことが。この人に作りたい。その一心であんなに踏み出せなかった1歩が簡単に動いてしまった。私にもできることがあるということを知ってしまった。自己満足で作っていたものがこんなにも評価されるなんて思いもしなかった。
その後も彼とは連絡を取り合った。服のことだけでなく、たわいもない話をした。私自身と触れ合ってくれてるようで嬉しかった。彼との繋がりは、服しかないのか。その不安が大きくなるだけだった。
彼のために私は時間を割いた。その時間が生きてる心地がしてとても楽しかった。初めて自分に光が刺した。私がしたいこと。私ができること。それがあることだけが幸せだった。でも彼とのつながりは、服だけ。そう思うと辛かった。彼の人生の中で私がいることはただの一時なのかもしれない。でも、その一瞬が私にとって大きなものとなる。そう思った。
彼が私に注いだ光は大きかった。彼にとっては娯楽の1部かもしれない。でも、それでいい。私が選んだ道だから。彼は私の恩人だ。私の特技は、服を作ること。私の性格は、好きなことに対して夢中で取り組めること。私の個性は、ファッションで自分を作ること。それが私の強み。
これで希望は見えた。私の人生は開き始めた。あなたが私の光。
君に答えを聞いてから。前に進もうかな。私の人生にあなたが必要なことは確かだから。
やりたいことがあるのに踏み出せないってモヤモヤだよね。