表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が欲しかった言葉は  作者: 侵略する兎
6/6

Do you need me?

手の感覚はないのに、ちゃんとペンが持てるって、変なの。

《早乙女銀河の日記》


梅月9日 雨


今日は骸の誕生日だってのに、お天道さまは味方してくれない。

これだから神は当てにならないんだよ

骸は、雨も好きだと言っていたが、少しポジティブすぎやしないか?

クレイは来なかった。やっぱりそんな奴か。


* * *


まずは触覚を失くすお薬。

薄いピンクの錠剤を口に入れて、水で押し込む。

初めは嫌でしかたなかったけれど、作業をするみたいに、振る舞う。


梅月も終わりの頃にメアリーに提案をされた。

薬で命を終えないかって。

いつか使うかもしれないからって薬は受け取ったけど、断った。

薬に頼るくらいなら、最後まで精一杯生きた方がずっと誇りに思える。


そう、思っていた。


クレイが、女の人を連れてきたの。

もう、私は、要らないんだって。

足手纏いなんだって。

わがままだから、嫌いだって。

その女の人はずっと綺麗で、ちゃんとしていて、仕方ないのかなって、そう思った。




「……もう、ここに来なくていいから」


かろうじて聞き取れたその言葉に、少し、ホッとする。

正直、泣き出すんじゃないかと思っていた。

じゃあ、と席を立って、隣の女の手を取る。

行きましょう、と女は相槌を打って、振り返ることもなく、部屋を出た。


「……本当に、良いのですか?あんな風で。」


静かに、その(アリア)は言った。


「良かったのですか?あんな、骸さんを、傷付けるような別れ方で。」

「…帰ってくれ。俺らは別に、本当に婚約してるわけじゃないだろう?」

「確かに、協力するとは言いましたが…こんなやり方、間違ってると思います!」


訴える様に潤む目はとても澄んでいて美しかったが、その言葉が響くことは、なかった。




骸が珍しく泣いていた。

理由を聞くと、途切れ途切れになりながら、


「私は、もう、要らないんだって」


精一杯のフォローをしたが、ダメだった。

ダメ元で、


「骸、今日は何が食べたい?今日は特別に、好きなモン作ってやるよ」


そう聞いては見たが


「…クレイが作った、オムライスが食べたい」


その一点張りだった。



《過咲骸の×××》


わがままで、ごめんね、クレイ

貴女のいない夜は、静かだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ