その、大きい背中が好き!
《過咲 骸の日記》
枯月6日 晴
今日は熱が出ちゃった。
最近はどうもおかしい。
心配させちゃうから、言わないけど、
変な感じがする。
頭の中はもやもやしていて、スッキリしないの。
ゆっくり寝たら、治るかなぁ。
* * *
「骸、おはよう。具合はどうだ?まだ辛い?」
いつも通りの、優しい声。
「まだちょっとダメ、かなぁ〜…」
昨日に比べたらずっと楽だけど。
今日は、結局クレイが休みを取ってしまったので、一緒にゆっくりしたい。
「そうか…」
「もうちょっと寝るからさ、手握っててよ」
手をクレイの方に差し出す。
握られた手を引っ張ってクレイを崩すと、
危なっ、と声を出してから、
「甘えん坊だな、いつもに増して」
わしゃわしゃと髪を撫でた。
「そうだよ〜、甘えんぼさんなの!」
ぎゅぅっと抱きしめる。
その体温は、あったかくて、でもひんやりしていて。
「好きだなぁ」
思わず声に出てしまった。
「俺も好きだよ、愛してる、骸」
そう言ったクレイの顔は見えなかったけど、
きっと、誰よりも素敵な顔をしてるんだろうな。
次の日には熱もすっかり下がって、
昨日よりだいぶ調子が良くなった。
クレイのおかげだと、思う。
「今日、買い物に行ってきちゃうね、クレイは午後から仕事でしょ?」
足りないもののメモを取りながら、言う。
「あんま無理すんなよ?元気なのは嬉しいが…」
「大丈夫だって、お薬飲んだし、熱も下がっちゃったもん〜」
今日は、澄んで冷たい空気が気持ちいい、冬にしてはあったかい日。
体調は良好だった。
るんるん気分で道を歩いていると、渡ろうとした信号はちかちか点滅を始めた。
あちゃー、と小さく言ってから、間に合うだろうと駆け出す。
半分くらい渡った時、大きなクラクションの音が聞こえた。
「?え…?」
赤を示している筈の道路から、トラックが突っ込んでくる。
いつもなら、こんなの、軽々と避けてしまうのに、
今日はなぜか身体が全く動かなかった。
「危ないっ…!!」
少し大きい影が覆い被さって、倒れた。
「わっ、あ、」
覆い被さってきたその身体の持ち主を、私は知っている。
「クレイ…?」
「ちッ、あの運転手も信号見ろよ…赤だろうが…」
あからさまに機嫌が悪そうだ。
「ちかちかしてたのに渡っちゃった私も悪いよ、クレイ。落ち着いて」
「とりあえず、骸が無事でよかった。」
ぱんぱん、とジーンズの埃を叩いて、私に手を差し伸べてくれた。
「ありがとう、クレイ」
ん、と言う返事に重なって、
舌打ちが聞こえた。
そちらの方へ目を向けた時、その人の顔は見られなかったけど、嫌な予感がした。
《クレイ・コラソンのメモ》
流石に隠すのには無理があるだろう。
そのうちバレそうだ。
けど、骸には、幸せでいて欲しい。
何とかしていい方法を見つけないと。