表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が欲しかった言葉は  作者: 侵略する兎
2/6

その、大きい背中が好き!

過咲(すぎさき) (むくろ)の日記》


枯月6日 晴


今日は熱が出ちゃった。

最近はどうもおかしい。

心配させちゃうから、言わないけど、

変な感じがする。

頭の中はもやもやしていて、スッキリしないの。

ゆっくり寝たら、治るかなぁ。



* * *


「骸、おはよう。具合はどうだ?まだ辛い?」


いつも通りの、優しい声。


「まだちょっとダメ、かなぁ〜…」


昨日に比べたらずっと楽だけど。

今日は、結局クレイが休みを取ってしまったので、一緒にゆっくりしたい。


「そうか…」

「もうちょっと寝るからさ、手握っててよ」


手をクレイの方に差し出す。

握られた手を引っ張ってクレイを崩すと、

危なっ、と声を出してから、


「甘えん坊だな、いつもに増して」


わしゃわしゃと髪を撫でた。


「そうだよ〜、甘えんぼさんなの!」


ぎゅぅっと抱きしめる。

その体温は、あったかくて、でもひんやりしていて。


「好きだなぁ」


思わず声に出てしまった。


「俺も好きだよ、愛してる、骸」


そう言ったクレイの顔は見えなかったけど、

きっと、誰よりも素敵な顔をしてるんだろうな。


次の日には熱もすっかり下がって、

昨日よりだいぶ調子が良くなった。

クレイのおかげだと、思う。


「今日、買い物に行ってきちゃうね、クレイは午後から仕事でしょ?」


足りないもののメモを取りながら、言う。


「あんま無理すんなよ?元気なのは嬉しいが…」

「大丈夫だって、お薬飲んだし、熱も下がっちゃったもん〜」


今日は、澄んで冷たい空気が気持ちいい、冬にしてはあったかい日。

体調は良好だった。


るんるん気分で道を歩いていると、渡ろうとした信号はちかちか点滅を始めた。

あちゃー、と小さく言ってから、間に合うだろうと駆け出す。

半分くらい渡った時、大きなクラクションの音が聞こえた。


「?え…?」


赤を示している筈の道路から、トラックが突っ込んでくる。

いつもなら、こんなの、軽々と避けてしまうのに、

今日はなぜか身体が全く動かなかった。


「危ないっ…!!」


少し大きい影が覆い被さって、倒れた。


「わっ、あ、」


覆い被さってきたその身体の持ち主を、私は知っている。


「クレイ…?」

「ちッ、あの運転手も信号見ろよ…赤だろうが…」


あからさまに機嫌が悪そうだ。


「ちかちかしてたのに渡っちゃった私も悪いよ、クレイ。落ち着いて」

「とりあえず、骸が無事でよかった。」


ぱんぱん、とジーンズの埃を叩いて、私に手を差し伸べてくれた。


「ありがとう、クレイ」


ん、と言う返事に重なって、

舌打ちが聞こえた。

そちらの方へ目を向けた時、その人の顔は見られなかったけど、嫌な予感がした。


《クレイ・コラソンのメモ》


流石に隠すのには無理があるだろう。

そのうちバレそうだ。

けど、骸には、幸せでいて欲しい。

何とかしていい方法を見つけないと。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ