夜の月光
月は遠く遠く輝いている。
雲より高く見えないところで。
秋の風は、もう寒い。
離れたところから虫の声。
私の辛さなど、月に届かぬ。
月は知らない。夜が暗く冷たいことを。
月は知らない。あの花の本当の色を。
いつからか、どこからか。
空が高く高くつかめないこと、
月はもっともっと大きいこと、
月は自ら輝いていないこと。
そんなつまらないことを知ったのは。
夢や希望しかなかった。あの朝は、どこへ行ってしまったのか。
きっともう行くことのできぬ場所。
努力してもお金があっても行くことのできぬ場所。
あの輝かしい光に照らされたあの頃を。僕は戻ることを許されていない。
まだ光を待つこの世界。夜の時間はこれからなのに。