第1節 始まりの赤(2)
「あたしはいいのー。体もちっちゃいからバランス取れてるしー」
「そうだね。シャルはなんだか……他人から見たらスレンダー過ぎて近づきにくいっていうか」
「うぅ……お前ら、よってたかりやがって!」
ともあれ、この少し涙目なぺったんこはシャルリエル=ローティスという。
17歳の私、ルベウス=ジークフリードの一番付き合いの長い友達だ。
生まれた時から母親の居なかった私を育ててくれた『先生』の家のお隣の娘にあたる。
近所で歳の近い子だったため、仲良くなるのは早かった。
「……まぁ、それはいい」
弁明をあきらめたらしい。後を引く様子がない開き直り様は、さすがシャルだ。
「聞いたぞルベウス。本物の騎士団の騎士相手に完封勝利をかましたんだって? おてんば娘もここまでくれば最強だな」
「うんうん! 最強だなー!」
その横で笑い飛ばす勢いの相槌を打つのは、ミスト=クレスタという。
もともとはシャルの友達で、一緒に遊ぶうちにいつの間にか仲良くなってしまい、いつの間にか十数年来の付き合いとなってしまった。
口調の茶目っ気がそのまま表れたかのようなブラウンの髪をポニーテールでまとめている。
私とシャルに比べれば、ちょっとだけ見劣りする体格である。肩幅の狭さがうかがえるし、背も私たちより頭一つ分は低い。
長い付き合いになるのにも関わらず、いまひとつ掴めない性格の持ち主だ。
春先の木漏れ日のようにほんわりとした言動が多いが、勉強がからっきしダメな私とシャルに比べると、頭の出来が桁違いによろしい。
実質、私とシャルが騎士団の一次試験である筆記試験を合格できたのは、彼女の教えによるところが大きい。勉強上手は教え上手でもあるのだ。