表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/79

第2節 零の白(1)

わずかの期間ながら師であり、騎士団に拾い上げた恩師であるはずのレイリィの突然の裏切りから一週間。

昏迷の淵を歩むルベウスが選ぶ道とは?

 〝元〟聖騎士団団長、レイリィ=シアンの裏切りから一週間が経とうとしていた。

 そのまま教会の入り口で失神していたところを発見され、翌日の夜に目を覚まし、放心したまま過ごしていたら、いつの間にか騎士団の医務室のベッドの上で一週間を過ごしていた。


 その間に色々なことがあったらしい。

 秘宝指定された『ルナンの黒十字』を強奪された教会は、レイリィを『異端者』と定めた。

 無類の英雄は一夜にして裏切りの賞金首に、剣聖は剣鬼へと成り下がったのだ。


 約五年間続いた英傑えいけつの物語は、凄惨な形で幕を落とすこととなる。

 現在、騎士団では代理となる人間を選別中とのことだ。

 ようやく頭にかかったもやが晴れてきた昨夜に、一旦、家へと帰っている。


 騎士達は、一部を除いて、今は暇を与えられている状態だ。

 といっても、それは団長を失った指揮系統の麻痺という形なのだから、どちらかといえば凍結という言葉が相応しいか。


「おぅ。もう起きてたか」


 スッと、薄緑色のふすまが敷居をなぞってすべる。

 布団の上であぐらをかきつつ、六畳一間の真ん中で自分の剣をじっと見つめていた私は顔を上げた。


「先生? 早いね」


「ゆっくりお前の寝顔でも拝もうかと思ってたんだけどなーっ。うはっはっはは!」


 まだ時間としては、陽も上がっていない暗がりのはずだ。

 行燈あんどんに照らされるだけの暗闇が巣食う部屋の中。

 昼過ぎまで惰眠をむさぼることが多い先生がこんなに時間に起きているなど、奇跡か徹夜かのどちらかだろう。多分、後者だろうけれど。


「私の寝顔を見て何しようっていうのよ」


「んー? えろいこと!」


 馬鹿なのかな?


「……十七歳に本気で手を出す気なの? しかも自分の子供同然でしょ、私って」


「いやいや。そんな補正が気にならんほどお前は成長したよ。このまま行けば良い嫁さんになるわな。貰っちゃってもいっかな?」


「まさか、そのために私を拾ったとかじゃないよね?」


「おお、名案だなソレ! そういうことにしとこう!」


「そこは意地でも否定してくださいっ!」


「恩を着せといて強要か! かっかっか! 我ながらナイスなタクティクスだ!」


「人間として最低なんですけど!!」


「へへへ、安心しなよって。嘘だよ嘘。八割は嘘だ」


「のっ、残りの二割は?」


「割とマジ」


「マジかよッ!」


 いつもの馬鹿過ぎるやりとりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ