表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/79

第1節 始まりの赤(11)

 金属のれる音が手を通して私の体に響き、危うい輝きの刀身があかりをはじいて身を躍らせる。

 意図しない体の行動。感情の乗っていない両手。思考からいっしたそれら。

 まるで私は突き動かされているようだ。

 手は震えている。なのに、体の芯は焼け焦げるほどの熱を放っている。


「震えが止まらないようだな」


「…………。」


「その剣は飾りか?」


 その一言で、私は悟った。

 ああ、そうか。今、この手を動かしているのは。

 生まれて一度たりとも経験したことのなかった〝殺意〟だ。

 この胸をいているのは殺意だ。

 可笑しいね。

 騎士長も分かっていないや。私を分かっていない。


 安い挑発なんて意味がないのに。

 そんなもの浴びせられる前から、私はとっくに怒り狂っていたのだから――

 それを自覚した瞬間、私は必死に体を駆けさせようとする内側の感情への抵抗をやめた。

 大きな河の流れに堕ちるように、殺意に身を委ねた。

 どこかから、痛いほどの熱がきしみ上がった。


「ぅぅああああああああああぁぁああぁぁぁぁぁあああッ!」


 一歩……二歩――三歩、四歩五歩と感覚のない足が床を跳ね上げるようにたたく。

 一刻も早くこの人を斬る。


 同じ目に合わせてやる。

 死ねばいい。


 あらんかぎりの猟奇でころし尽くしてやる。

 今ならできる。

 相手は完全に無防備だ。

 首でも、胸でも、腕でも足でも思うままにこの大剣たいけんを叩き込んで圧殺できる。

 不気味なまでの粟立ちに支配された斬撃は、駆け出した勢いそのままにレイリィの頸筋くびすじにーー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ