第1節 始まりの赤(11)
金属の擦れる音が手を通して私の体に響き、危うい輝きの刀身が灯りを弾いて身を躍らせる。
意図しない体の行動。感情の乗っていない両手。思考から逸したそれら。
まるで私は突き動かされているようだ。
手は震えている。なのに、体の芯は焼け焦げるほどの熱を放っている。
「震えが止まらないようだな」
「…………。」
「その剣は飾りか?」
その一言で、私は悟った。
ああ、そうか。今、この手を動かしているのは。
生まれて一度たりとも経験したことのなかった〝殺意〟だ。
この胸を灼いているのは殺意だ。
可笑しいね。
騎士長も分かっていないや。私を分かっていない。
安い挑発なんて意味がないのに。
そんなもの浴びせられる前から、私はとっくに怒り狂っていたのだから――
それを自覚した瞬間、私は必死に体を駆けさせようとする内側の感情への抵抗をやめた。
大きな河の流れに堕ちるように、殺意に身を委ねた。
どこかから、痛いほどの熱が軋み上がった。
「ぅぅああああああああああぁぁああぁぁぁぁぁあああッ!」
一歩……二歩――三歩、四歩五歩と感覚のない足が床を跳ね上げるようにたたく。
一刻も早くこの人を斬る。
同じ目に合わせてやる。
死ねばいい。
あらんかぎりの猟奇で犯し尽くしてやる。
今ならできる。
相手は完全に無防備だ。
首でも、胸でも、腕でも足でも思うままにこの大剣を叩き込んで圧殺できる。
不気味なまでの粟立ちに支配された斬撃は、駆け出した勢いそのままにレイリィの頸筋にーー