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掌編小説集5 (201話~250話)

撃退商品

作者: 蹴沢缶九郎

久しぶりの休日、自宅でのんびりとくつろいでいた田中の許にセールスマンが訪れ言った。


「どうもこんにちは、本日伺いましたのは、あなた様のような方にぴったりな商品を紹介したく…」


「何を売り付けようというのか知らないが、間に合っているよ」


田中の言葉にも、セールスの男は構わず続けた。


「とりあえず、私の話を聞いてみて、それから判断されてもよろしいかと思います…。今日お持ちしたのは、私のようなセールスマンを撃退する商品でして…」


「セールスマンを撃退する商品だって!?」


男の紹介した意外な商品に、興味をもった田中は身を乗り出す。


「左様でございます。その商品とは、弊社が開発したインターフォンとドアノブです。例えばインターフォン、物を売り付けようとする人物がインターフォンを押した場合、インターフォンがその人物の脳波を感知し、特殊な不快電波を照射してセールスマンを追い返します。ドアノブも握った人物がセールスマンであれば効果は同様です。この二つさえあれば、今日のような大切な休日も、セールスマンに邪魔される事なく、有意義に過ごす事が出来るのです。私はセールスマンですが、そこらのセールスマンと違い、日頃お疲れの皆様方に、ゆったりとした自分の時間を過ごして頂きたいと考えているのです」


男の話を黙って聞いていた田中は、静かに口を開いた。


「なるほどなあ、セールスマンがセールスマンを撃退する商品を売るとは一体…と思ったが、そういう事か…。君の熱意はよくわかった。しかしどうも解せない点がある。君は今こうして、僕の大切な休日の時間を邪魔しているわけだ。その矛盾だよ。だが君の熱意と商品に興味をもったのも事実だ…。そこで提案なんだが…」


「なんでございましょう…」


尋ねるセールスの男に田中が言った。


「そのインターフォンとドアノブを一週間ほど貸して貰えないだろうか? 試用期間ってやつだ。気に入れば必ず買うよ、約束する。君が私の大切な休日を邪魔した事を、それで無しにしようというのだ。な、いいだろ? まあ無理にとは言わないが…」


「ううん…、わかりました。確かにお客様の仰る通りでございます。お気に召した上で購入して頂けるのであれば…」


「ああ、約束するよ」


男は田中の提案を了承し、さっそく、セールスマンを撃退するというインターフォンとドアノブが取り付けられた。


セールスの男は、


「それでは、一週間後に…」


と言い残し帰っていった。


それから一週間後、田中の許にセールスの男からの電話があり、男は聞いた。


「その後、セールスマンを撃退するインターフォンとドアノブの調子はいかがですか」


「ああ、ぱったりとセールスの人間は訪ねて来なくなったよ」


「それは良かったです。では、お約束通り購入して頂けるという事で…」


「約束だからな…」


「どうもありがとうございます。ところでお客様、最近弊社でセールスマンからの電話を繋げなくする電話を開発しまして…」


田中は相手の方がやはり上手だったなと思いながら、男の勧める商品の購入を決めた。


田中との電話を終えた男は、今度はどこか別の相手に電話をし、電話口の相手に言う。


「その後、インターフォンやドアノブのセールスマン撃退効果を無効にする手袋の調子はいかがですか…」

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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ…セールスマンさすが…すごい(笑) 他にもどこかで色んな商品を売っていそうですね…(笑)( ̄~ ̄;) とても面白かったです!
[一言] 星先生を彷彿とさせますね。思わずニヤリとしました。 この装置、欲しいわぁ(笑)
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