ロッカーから出られたとかあんまり信じたくない。
下校時間はとうに過ぎた教室のロッカーに、僕と彼女は2人っきりで隠れていた。
僕たちは遊んで、話して、そして笑った。
彼女と過ごしたこの時間は、僕は多分一生忘れないんだろうな〜。とも思った。
それでも、僕は気付かなかった。
それは、ロッカーの中が暗くて彼女のタブレットの弱い明かり一つだったせいだろう。
それは、僕が信じたくなかったからでもあるだろう。
それは、絶対にありえないことだと脳が拒絶していたせいかもしれない。
彼女は夜7時頃になってもロッカーのドアを開けようとしなかったし、僕ももう帰りたい気持ちは綺麗さっぱり消え失せていたから、彼女に「開けて」とせがむこともしなかった。
夕方ごろから僕らはタブレット会話を一旦中断して、僕はポケットにたまたま入れっぱなしになっていた iPod nano とイヤホンで音楽を聴きながらウトウトし、彼女はタブレットでまた別のことをやりだした。
『ちょっとお小遣い稼ぎするから。』って言ってたことから推測すると、多分お小遣いサイトをやっているのだろう。
しかし気になることが一つ。
彼女のタブレットの充電だ。
彼女は僕がロッカーに入ってくる前からタブレットを使っていたはずだし、あれだけ一日中使っていたらかなり充電を喰うはずだ。よし、聞いてみるか。
ちなみにもう声を出してもいいことになっている。ささやき声だけだが。
「ねえ、タブレットの充電どうしてるの?」
「そこからコードを接続してるの。だれにもわからないように工夫したから大丈夫。」
「ふーん。。」
それから少し間を開けて彼女が言った言葉は、僕を仰天させた。
「ねえ、少し出てみない?」
「え、いいの!? 僕はもうここから一生出られないのかと。。」
「大袈裟だよw いつもと違う時間に、いつもと違う視点で同じものを見るって素敵なことでしょ?私にとって、ロッカーが『いつもの世界』だから、いつもと違う世界に出て見ることも大事なの。」
「とっても素敵な考えだと思うよ。」
そして彼女は内側についてるドアノブからヘアピンを抜き、針金を取り、そして鍵を開けて、ドアを押した。
月明かりが僕らを照らし、包み込む。
その時僕は凍りついた。
隣にいるはずの彼女の顔は、薄暗い教室とロッカーの中でははっきりと判別できなかった彼女の顔は。。。。。。僕自身だったんだ。
同じ顔、同じ表情。
ただし彼女は僕と違って (当たり前だが) スカートを履いてたから、完全に僕自身ではありえないはずだ。
生き別れた兄妹。。。とかありえない。。。よね?
動けない目と目。
動けない体と体。
動けないお互い。
誰に何をどうしろと言うんだろう。
遅れてすみません!
次回最終話です!
ロッカーから出て初めてお互いの顔を認識した『僕』と『彼女』。
どうなるのでしょうか。。。
最終話、ご期待ください。