もう下校時間になるとか信じたくない。
キーン コーン カーン コーン。
まったく、時間ってのは、容赦がないなぁw
そう、今のは下校のチャイムである。
みんなが教室から出て行っても、僕はロッカーから出てこなかった。いや、出られなかったんだ。前にも言った通り、このロッカーにはなぜか内側に取っ手があり、そこに針金とヘアピンでこれでもかというぐらい厳重にロックがされている。
誰も開けられないが、誰も出られない。ということだ。
もちろん、全部彼女がやったことである。。。
さすがにこれはヤバいと思い始めた僕は、彼女を説得し始めた。
もちろん、手段はタブレット会話でしかありえない。
ここからしばらくは、僕と彼女のタブレット会話が続く。
『あのさ、悪いんだけど… もう下校時間だから僕帰らないといけないんだ。。』
『え?… ああそっか。さっきのチャイムは下校時間のチャイムだったんだね。』
『うん。だから僕もう帰らなくちゃ。ドア、開けてくれる?』
『どうして?』
『?どうしてって、どういうことだよ?』
『どうして出て行かなきゃ行けないの?ここにずっといればいいじゃん。』
その文字列を見た瞬間、僕の背筋が凍りついた。
さらに説得を続ける。
『いやムリだろ!?そもそも水と食料とトイレとシャワー無しで生きていけないよ?』
『でも人が大事だって言うものの90%はどうでもいいものなんだよ。』
『その哲学はどこから来たw しかも僕は絶対に大事なものしか言ってないよね?』
『…でも、君帰りたくないんでしょ?』
あ、そういえばそうだった。でもどうして帰りたくないことを彼女が知ってるんだろう。
『… 僕そんなこと言ったっけ?っていうか、なんで僕帰りたくないんだっけ…。』
『さっき君が話してたよ。今日は最低の朝、だったんでしょ?君の記憶だいじょうぶ?』
そうだった。
最低の朝だったから、帰りたくなかったんだっけ。
家に帰りたくないんだったっけ。
じゃあ、ここにいようかな。
っていうか、ここにいた方が他の何よりも楽しいしw
適度なスリル感、緊張感をはらんだ空気、かくれんぼ感いっぱいの気分、狭くてアドベンチャー感いっぱいのロッカー、可愛い女の子と2人っきり。
思えば良いことだらけだなw
そこからしばらく遊んだり会話したりして、ぐったりして気がついた。
もう午後4時だ。今は冬、夕方から暗くなって気温が下がるから分かる。
夜になる。