未来へ繋ぐ
刺された箇所から血が噴き出す。
それとともに体から力が抜けていく感じがした。
でも不思議と気分は悪くない。
私は自分の仕事をやり遂げることができたんだ。
近い将来、この国は変わる。
腐りきった貴族連中を始末して、民が安心ゆ暮らせる良い国へと変貌していくことだろう。
他の誰でもない、ミハイル様の手によって。
私の死はただそのためだけに。幸福な未来への礎になる。
「ミハイル様、無事? 刺客はすべて片付けたよ。だから安心してね」
もうどうせ助からないし、砕けた口調で話すことにした。もし不敬罪に問われても、死んでれば罰せられないしね。
「お前は大丈夫じゃなさそうだな。 今すぐ医者を呼んでくるから、待っていてくれ」
なんだかんだ言っても、やっぱりミハイル様は優しい。
人を思いやることが出来るというのは大切なこと。
自分が一番のバカとは大違いだ。
「ふふ、その必要はないよ。私はもう助からない、というより助かるつもりはないからね」
「なぜだ? どうして死のうとする!」
「まあまあ、落ち着いて。えーっと、死にゆく者の最期の願いを聞いてくれないかな?」
聞いてくれなきゃ困るんだけど。さすがに無駄死にはゴメンだ。
「わかった、聞いてやる。お前は地味に頑固なやつだからな。何を言っても、従うつもりはないのだろう?」
「よくお分かりで。それじゃ、遠慮なく。ミハイル様、あなたには王になってもらいたいの。第2王子とはいえ、あのバカよりもあなたのほうが王に相応しい。みんなそう思ってるんだ。そのために、今回の襲撃の主犯を調べてほしい。それがどうしてかは、いずれ分かるよ」
「ああ、必ず成し遂げてみせる」
さてと、後は消えていくだけだね。
ミハイル様と過ごした時間はとても楽しかった。
子供なのに大人びていたから、周りに馴染めなかった少年。
私にとっては、少し生意気な弟のような存在。
不敬かもしれないけど、私は家族のように思ってた。
「それと、この言葉を忘れないで。『王は国のために、貴族は民のために』、決してこれを違えてはいけない」
「わかった……わかったからっ! もうしゃべるな‼」
「はは、それはできないなぁ。っと、そろそろ……かな。さよなら……だね、ミハイル様。そ、ら…から……みまも……て」
「エリスっ‼」
私の意識は深い闇へと沈んでいった




