本気出します
展開めちゃくちゃかも……
「ここが私の住んでいる村です。家はもう少し奥のほうにあります」
なんていうかこの村には活気を待ったく感じない。住民の表情も暗く、どこか悲壮な雰囲気が漂っているように思う。それに若い男性が見当たらない。いるのは女性・子供・老人だけだ。恐らく彼女の父親と同じように戦争に連れていかれたんだろう。
「お母さん、帰ったよ」
「おじゃましまーす」
「ああ………お帰り、マイナ。そちらの方は?」
彼女の名前ってマイナっていうのね。
「私は冒険所のアルです。娘さんが山賊に襲われていたので助けに入りました」
見た感じ母親は相当衰弱している。あまり言いたくはないけど、そう長く持たないだろう。
「娘を助けていただき本当にありがとうございます。私はこのような身で何もできませんが、せめてゆっくりしていってください」
「はい、お言葉に甘えさせてもらいますね」
部屋は2つしかないので、マイナと同じ部屋になった。せっかくだし彼女とお話しでもしよう。
「ねえ、あなたのことマイナって呼んでいいかな?私のこともアルって呼んでくれると嬉しい」
「うん、いいよ! よろしくね、アル!!」
ふふ、妹ができた気分だね。
「マイナはさ……今の生活どう思ってる? 辛くない?」
「う~ん、確かに辛いけどお母さんのことがあるからね。お父さんに言われたんだ、母さんのことを頼むって」
う~~、健気すぎて泣けてきちゃう…。でもちょっと荷が重すぎると思う。このままだとマイナは壊れてしまうかもしれない。
「そっか、でも無理しちゃだめだよ。マイナ自身が倒れたら意味ないんだからね」
「ふふ、心配してくれてありがとね、アル。私なら大丈夫だよ」
そうは言ってもやっぱり心配なんだよね。あとでこっそり様子を見に来ようかな。
「約束だよ? とりあえずもう遅いし寝ようか。おやすみ、マイナ」
「おやすみ、アル」
翌朝、私は早めに村を出発することにした。
「お別れだね、マイナ。ぜ~ったいに無理しちゃダメだよ」
「わかってる。まったく、アルは心配性なんだから」
「マイナは私にとって可愛い妹なんだから当然でしょ」
「ありがとっ。じゃあまた会いに来てね」
もちろん、と言って私は村を出た。この後私は早めに出発したことを後悔する。
私はいつも通り森の中を歩いていた。だけど何かがおかしい。生物の気配がまったくしないのだ。実はこういう状況に心当たりがある。
魔物は時に軍勢を作る。それは小規模だったり大規模だったりと様々だ。過去には国一つを滅ぼしたという話もある。魔物が軍勢を作るとき、生物たちは危険を感じて姿を消す。まさしく今のように。
不安を感じた私は、村のほうへ戻ってみることにした。
村に近づくにつれ魔物の気配が強まってくる。これは本格的にまずいかもしれない。
急いで戻った私が見たのは、村を襲う大量の魔物たちだった。生存者の気配はない。
私は大急ぎでマイナの元へ向かった。
「マイナっ! 無事なの!!」
「あ………アル?」
何とか間に合った。傷は負っているけど大丈夫そうだ。でも母親のほうは……
「お母さんは………お母さんは無事なの?」
私が首を横に振ると、マイナは気を失ってしまった。母親を失ったショックが大きいんだと思う。
幸いなことに魔物はこの家に入ってこなかったようだ。ただ魔物の攻撃の余波で家は崩壊寸前だった。母親はその衝撃からマイナを庇ったのだろう。
マイナを結界の中に入れて、私は魔物の軍勢へと向かった。
数はおおよそ200くらいだろう。今の私はいつになく本気で怒っている。手加減なんてするつもりはない。
『黒化』
これは私のオリジナル魔法。使用時は髪と目の色が黒く変わり、闇属性の魔法しか使えなくなる。その代わりに、身体能力と魔法の威力が桁違いに上がるんだ。今回は魔法しか使わないけど。
「塵一つ残さない。消えろ!『大災厄』」
周囲を恐ろしいほどの魔力が包む。この魔法は文字通り大災厄。使用すれば周囲にとてつもないほどの被害をもたらす。でも今はそんなことどうでもいい。
ズドォォォォォォン!!!!!!!
すさまじい爆音とともに魔物の群れは消滅した。周囲を見ると、地形が大きく変わっている。
怒りにまかせてとはいえ、さすがにこれはやり過ぎたかな………
そんなことよりマイナのところへ早く戻ろう。
~そのころ王都にて~
ズドォォォォォォン!!!!!
凄まじい爆発音が突如王都を襲った。
「陛下っ、大変です! 東の森が何者かの魔法により消滅しました!!」
森が消滅だと?いったいどんな魔法を使えばそんなことができるというのだ。そんなこと魔族でなければできないだろうに。
「落ち着け、まずは状況を報告しろ」
「はっ、申し訳ありません。使用された魔法は恐らく『大災厄≪ディザスター≫』だと思われます」
「なんと! それは真か!!」
「はい、魔術師長さまがそうおっしゃっておりました」
「そうか、報告ご苦労であった」
まさか『大災厄』というふざけた魔法を使えるものがいたとはな。あれ一発で一国の軍隊を滅ぼせるレベルだというのに。
そやつは要注意人物だな。どうやら本格的に調査せねばなるまい。
我が国の敵でなければいいがな……




